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今日はおにぎりの日

登場モノ

おにぎり子:鮭おにぎりの妖精

サンドイッチ男:サンドイッチの妖精

その他妖精

コンビニのおにぎり子ちゃんは生ごみ箱に捨てられ泣いているところを

後から来たサンドイッチ男の慰めで笑顔を取り戻した。

しかし彼女は爪に垢がいっぱい溜まった黒いずんぐりした手によってゴミ箱から連れ去られた。

サンドイッチ男がそのまま放置されたのは彼の透明な服の何処かから水が浸入し、

彼はその水によって、ブヨブヨにふやけていたからだった。

サンドイッチ男はこんな事態でも

アッチャ~、私の体はひとまわり大きくなった気がしますよ、体がダラ~ンとして

それでなくっとも柔らかいのに柔軟性がグッと増しました。

アハアハ、悪くないですと他の得体の知れない生ごみたちに語り、彼等をうんざりさせた。

おにぎり子ちゃんは自転車のオンボロカゴに放り込まれ、川沿いのでこぼこ道を

自転車で走ったのでゴロゴロ転がされ目が回り、気が付いたのは垢でベトベトする布団の上だった。

彼女は連れ去られたのにどうぞ神様、見つかりませんようにと祈り、身を小さくした。

彼女をゴミ箱から拾った爪垢の毛玉婆は卓上ガスコンロで湯を沸かし、

これまた拾ったカップみそ汁とともにおにぎり子ちゃんを食べようと思った。

そこに一人の少年が入ってきた。

河原生活のルールはモノ同士がお互いの事情を聴かない事だったけれど、

子供には通用せず、彼が親のDVに遭い施設に預けられそこでもいじめられて

この河原に逃げてきた話はこの辺に暮らすモノたちに知れ渡っていた。

彼等もそうしていることは子供に良くはないだろうと思っていたけれど

これと言って解決策もなく、少年はテント暮らしの人々のテントを転々とする毎日を送っていた。

毛玉婆はチェッ、と思いながらも少年におにぎり子を放り投げた。

彼は少し躊躇して毛玉婆の顔を見たけれど腹が減っていたので

おにぎり子ちゃんのスケスケな服を夢中で剥がしておにぎり子ちゃんの体を真っ二つに引き裂いた。

おにぎり子ちゃんの体の中からは

彼女が誰にでも愛されるサーモンピンクの、愛らしい心臓が身を固くして姿を現した。

彼はこれも半分に割ろうとしたけれど上手くいかず、もう、見る影もなくグズグズになった

おにぎり子の半分を毛玉婆に差し出した。彼女は首を一回横に振って受け取らなかった。

おにぎり子ちゃんは、自分が少年の小さな白い手によって引き裂かれたことにホッとした。

毛玉婆の贅肉の一部にはなりたくないと思った。

彼女はこの少年に食べられるのは定めだと感じて心が安らいだ。

そして誰にでも愛される自分のサーモンピンクのフォースが少年の身になることを願った。

モノが結ばれるべくして結ばれる時、そのフォースは解放され、とてつもない力を発揮する。

おにぎり子ちゃんの体と心は少年によって咀嚼されその一部分は少年の細胞と結びついて

おにぎり子ちゃんの愛されフォースはMaxとなった。

おにぎり子ちゃんのその他の部分は少年の中にある小町、大町に送られ

やがては直町の激流に飲まれて大地の一部へと還っていった。

翌日、少年は役人に見つけ出されその後少年が河原に姿を現すことは二度となかった。


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