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今日はランドセルの日

登場モノ

背嚢セル也:ランドセルの妖精

防犯ぶざ男:防犯ブザーの妖精

背嚢セル也(はいのうせるや)と防犯ぶざ男(ぼうはんぶざお)が居酒屋「押し入れ」で飲んでいる。

ぶざ男:ご苦労さん、ご苦労さん、すっかりヨレヨレになっちまって、6年間、よく頑張ったもんだね。

セル也:ホントにさぁ、しんどい6年間だったよ。最初のうちはチビで、ワ―ギャー泣いてばかしいたのに、だんだんとね、乱暴になってさ。

ぶさ男:酷いありさまだよなぁ、肩のとこなんか、ボロボロじゃないか。痛かっただろう?

セル也:あーあ、これね、なぜだか知らないけど、ここをつかんで、振り回す癖があったんだよ。もう、切れるな、お仕舞いだなって何度も覚悟したね。

ぶさ男:君は偉いよ、愚痴一つこぼさず真面目にお務めを果たしたんだから。
それに比べて、俺はどうよ。新人みたいな顔しているだろ。

セル也:うん、君は全然、疲れた感じしないね。フレッシュ、フレッシュ、羨ましいな。

ぶさ男:いや、情けない。モノに生まれて何の役にも立たずに生きているなんて、恥ずかしいよ。

セル也:エッ、でも君は役に立たないから平和な6年だったんだよ。

ぶさ男:慰めなんか要らないさ、俺はどうせ、極つぶしのまま死んでいくんだ。いいよな、君は、モノに生まれて、十分に生きているんだから。

セル也:そうかい?使われないモノがあるのって、普通のことだと思うよ。僕だって、こんなにボロボロにならなければさ、海外にだって行ってみたかったよ。寄付されて知らない国に行ってみたかった。

ぶさ男:ごめん、今日は君のサヨナラ会だったね。俺、自分のことばっかしで君の気持ちを一つも思わなかった。

セル也:気にしないでよ。精一杯、生きたと言えば生きたんだから、それもありさ。それぞれ、そうなれば一番って定めがあるんだもの仕方ないさ。君の定めは使われないこと、それはストレスの溜まる仕事だもんなぁ、君は次は何処かへ行けるの?

ぶさ男:うん、お陰様かな?メルカリに売られることになっているんだ。

セル也:そうかい、捨てられなくって良かったじゃないか。次は活躍できるかもだよ。もちろん、そうならないのが一番だけど。

ぶさ男:俺まだ、5回くらいしか使われていないけど、とっくに電池は切れているんだ。
だから取り換えてもらわないと本当は使いモノになるか分からない。

セル也:心配するなって、君が付いているだけでも悪い奴らは近寄るのをためらうんだからさ。

ぶさ男:慰め言ってくれてありがとうな、俺が君を慰めなけりゃあいけなかったのに、俺、毎日、ゆとりだらけでゆとりが持てなかったんだよ。使われないってのも生き方だよね。よし、長生きして、博物館でも行ったるか!!

セル也:その意気、その意気。

大変貧乏しております。よろしかったらいくらか下さい。新しい物語の主人公を購入します。最後まで美味しく頂きます!!