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閉幕

小鳥は囀るもの
餌場、天気、番の居場所、
そして、敵のこと
小鳥は囀るもの
その囀りに罪はない
籠の中に入れられた小鳥が他に何が出来ましょう
そういうもの
そうやって生まれたもの
そうするしか
最早、ないもの

小鳥は囀るもの
それは生き方
貴方が恨むことも出来ぬ
ただの生命

「使嗾」

排水管の墓

口を噤まなければなりません
綺麗に彩って
それを崩さないように
食べてはいけません
喋ってはいけません
貴方はお人形
ただのお飾り
貴方が人間であることを
あの人はきっと許してはくれないわ

「抑える」

誰もいない、

何も見ないで
何も言わないで
その脚を丁寧に折りたたんで
誠実に着席していなさい
追いかけて来ないで
邪魔をしないで
狂って泣きたくなるほどに
この世界は優しすぎると
貴方はずっと
そう言い続けるから

「黄色のクロッカス」

赤い罪

まだやわらかな青いわたしたちよ
どうしようもないこの世界で
どうか
諦めることをしないでね

「フルード」

閉幕

山羊が言った
さよならはもうずっと前に済ませたと
山羊が言った
もう夜は明けていると

わたしは
こんな空で一人きり
壊れた街灯を抱えて
朝を待っている

この先には
廃線がひとつ
わたしはわたしの行き先を
未だ
知らないまま

「頓に」

夕雲

きらきら貴方のてのひらに
美しい模様が散らばって
脚だの手だの取り合って
美しい翅をもらいました

「吉丁虫」

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