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冬と雑踏

冷たい部屋でずっと蹲ってるのは誰の幸せも見たくないからだ。また何にこんな、お金を使ったの。それはただただ俺の悪いところのはなし、達成感も何もない世界で、ただ証明したいような、出来ることを増やしたいような、何者かになった気でいたいような、そういうやつで、どうしたってスタートはそこじゃないだろ、みたいなところにジャンプする。
そういうのが上手だった、憎まれながら愛される、みたいなの。蹴り出されないこの生命がいつ不必要になるかのチキンレース。そういうのが上手いわけじゃあないけれど、少なくともお前よりは上手くてごめんね。
愛してないとか愛してるとか、すべてが全部ただの言葉で、ト書きで科白で、つまり全部嘘ってことで。お前の人生を否定しているわけじゃあないんだよ。知ってます。お前のためを思って言ってるだよ。知ってます。でもそういうの全部余計なお世話って思うときってあるじゃん、ただ脳汁ドバドバ出していたいだけのとき、みたいな。
後遺症とかいう言葉が嫌いだからドラッグに手を出したくなくて、でもその辺に生えてる草には興味があって、結局人間関係が付随してくるやつが嫌なんだなってそんな夕方五時。いつまでも門限のある小学生、不機嫌な母親の台所の後ろ姿が、いつか遠くの国からやってきた舟に載せられて消えていくことを知っていた、ような気がした。
物語。
妄想。
そういう世界しか、分からなくなって、そういう世界しか、分かりたくなくて、お前が理解しているとでも言うように偉そうな顔をする度に殴ってしまいたくなる。知らないでしょう、そういうことをいつだって考えているよ、お前の背中を見つめながら、こいつは俺に殺されるかもしれないなんて、微塵も考えていないんだ、そういう価値もないんだって勝手に拗ねているよ。社会適合者のふりをして、優しいふりをして、お前を愛している、ふりをして。まったくもってお前の理解出来ない人間であることを、お前は見ないふりをしている。それでもいいよ、俺もお前のことが分からないから。お前の部屋が冷蔵庫みたいに、俺の部屋と同じようになって、かわいい観葉植物が全部死んでしまっても、お前に寄り添ったふりが出来るよ、そうだよ、ふりだよ。お前が求めているものは、俺にとっては全部、演技にしかならないんだよ。
お前が求めてくるときは、優しくして欲しいときなのに。
結局、お前は俺が優しくしてみて欲しいときには無視をするから。世界ってそういうもんだよね、煙草の空き箱を潰す。フィルムの音がうるさい。
誰かになりたいわけじゃあなかった、どうせ俺は俺のままで、それが美しいだとかそういうおためごかしで生きている。それでいいじゃん、いやよくねえよ。こんばんは完璧主義者。出来ることならこの時計の針が十二に行く前に、きれいにきれいに死んでくれ。

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