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終電の街の吐瀉物

もしもきみが神様だったら、一体何を願ったかな
願われるのはもうこりごりですって
そんなことを言ったのかな
その肩にのっかった
大きなまっくろいものを
きみは愛だと呼んだ
僕にはそうは見えないな
六畳一間の汚いアパートで
きみが首を吊る午前四時
もう少ししたら交代の時間だったよ
ねえ、そうでしょう?
叫ぶことなんて必要なくて
ぽたぽたと
だめになった水道が
音を立てるのを聞いている
明日が雨ならよかったな
善人でいることは難しくはないよ
そんなことを言ったきみは
もう何処にもいない
何処を探したって
記憶の中に人は生き続ける
なんて嘘だよ、本当に嘘だよ
きみの痕跡が一つひとつ
風化するように消えていく
風なんて吹かなければいいのに
これは比喩だよ、大馬鹿野郎
缶と瓶の日が変わってしまったから
きみに教えてあげないと
黄色のマークの日が燃えないゴミになったよ
もう永遠に交代してくれないきみよ
逃げないで
逃げないで
此処にいて
願われていてよ
すべてのひとが善人だと言い張るのなら
そんな夢物語で
僕を救った気になっているのなら
せめて

僕の前で本物になってみせてよ

そんなことを思う
どうしようもないことを
化石にもならない夢を
ねえ、きみ
聞いてみせてよ
此処はずっとずっとの昔
海だったんだってさ

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