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【本】綾辻行人 「十角館の殺人」

職場の人とミステリの話になり、大昔に読んだきりで、犯人意外ほとんど内容も忘れていたので久々に読み直しましたが、面白かったです。

角島という島にある十角館に合宿に行くことになったK大学推理小説研究会の面々。十角館はこの島に以前住んでいた建築家が建てたもので、その建築家は1年前ぐらいに妻や使用人の夫婦などとともに丸焼けした本館から発見されました。当時出入りしていた庭師が、行方不明になっていることからその庭師が、お金目的で全員殺して逃亡したと警察は判断しました。
その十角館のある島で過ごすことになったわけですが、電話もなく、移動手段も漁師が1週間後に迎えに来てくれるまでないという状態。そんな中、メンバーの1人が殺され、第一の被害者という札が部屋の前に貼られます。内部犯なのか外部犯なのか、メンバー全員推理小説好きなだけに互いに探り合う状況になり、色々疑心暗鬼になりながら、共同生活を続けます。

一方、本土では研究会の飲み会で事故死したかつてのメンバーについて告発する怪文書が関係者たちに送られてきます。告発人は、焼死したはずの建築家の名前で、この建築家と亡くなったメンバーが親子だったことがわかります。
怪文書を受け取った好奇心旺盛な元メンバーの1人が、電話帳で探り出し亡くなった元会員の叔父に会いに行ったところ、その叔父の所にも怪文書が送られてきていたことが分かります。
俄然興味を抱く元メンバー。たまたまその叔父の所に遊びに来ていた島田潔と知り合い、2人ともミステリ好きなことから意気投合し、角島の殺人事件や事故死した元メンバーのことなど、色々と調査をしてみることになります。
そこに島には行かなかった切れ者の現会員も加わり、島田潔と元会員の調査報告を聞きながら3人で色々当時のことを推理していきます。その間も角島ではメンバーが亡くなっていき、一体誰が犯人なのかまったく分からないまま話が進んでいきます。

多少の前後はあるものの大体こんな感じで物語が進んでいきますが、出てくるメンバーがほとんど推理小説好きなので、ある意味犯人にも探偵にもなれるため、本当に誰が犯人か分かりません。また、人が死んで殺伐とした雰囲気になってくる角島編と、ミステリ好きの3人があれこれ推理していく本土のパートが交互に進んでいく展開で、緊迫感のある島組に対して、あくまでもゲーム感覚の3人と対比が良く、ハラハラしつつ謎解きのワクワク感も感じられて、どんどん読み進めてしまいます。

多少の強引さはあるものの、最初に出てくる犯人の心情を記した箇所で、「完璧には恐らく実行できない。枠組みを作ってあとは運次第」的な言葉があり、「これはよくバレなかったな」みたいな部分にも「運が良かったのか」と納得させてくれます。

どういう展開になるのか、誰が真の犯人であるかと同時に、島田潔以外にも探偵候補が複数いることから、誰が真の探偵役なのかも分からず、最後まで先が気になりながら読むことができました。次の水車館もその内読んでみたいです。

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