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オレンジ色の北極星


今週の私はとても疲れていた。

週の始めにかつてない大きなミスを仕事で引き起こし、
週半ばで持ち直すも、日々細々と凹むことが重なり、申し訳なさややるせなさで、
背中の筋肉は後ろめたさを表す猫背の形に強ばっていた。



そんな週の半ばの事。
私の目に飛び込んできたオレンジ色の光。

ロイヤルホスト。



フードエッセイスト平野紗季子さんが好きな私は、平野さんが幾度となく愛を語るロイヤルホストに憧れがあった。

そして3月、遂に東京神田にてロイヤルホストデビューを果たした。


それ以来のロイヤルホスト。


実は通勤路の途中にそのオレンジ色は常に光っていた。
しかし、職場の近くで保育園に通う家族がいるかもしれない場所には近づかないようにしていた。

実は密かに身近にあったロイヤルホスト。


心がベコベコに折られている私はロイヤルホストに行きたい。


平野さんの言う「コスモドリア」や「トロピカルアイスティー」、「オニオングラタンスープ」を食べてみたい。



よし、今週末はロイヤルホストに行こう。


そう決めてオレンジ色の光を北極星として散々な日を生き抜き、重たいガラス戸を開いた。



栗を乗せるという強気で迷いなきコスモドリア。
半強制的に南国に連れていかれるトロピカルアイスティー。
これは外せないオニオングラタンスープ。

(個人的に)噂に聞くメニュー3種類。





全身全霊集中して食べた。


そして食後、さっぱりしたものが食べたいと
メニューを開いて吟味するのはサラダとマンゴーパフェ。

サラダとパフェ。



相反するもののように見えるけれど
間違いなく私の口はこの2つで悩んでいる。

サラダの大きさが読めない。



店員さんを呼んで大きさをきくことにする。


スっと机に立つ佐藤さん(仮)。

「サラダはどれくらいの大きさですか?」

『結構大きいですね。先程頼まれたコスモドリアの下にあったお皿に盛ってあるくらいです』

「大きいですね。」

佐藤さん(仮)スっと膝をつく。(!)

『そうですね、でも葉物なのでそこまでお腹にはたまらないかと。簡単なミニサラダもございます。』

「(吟味)…いろいろ聞いておいてアレなんですが…こっちで。」

『あ!パフェですか!』

「あ、はい、すみません。」

『いえ、マンゴーパフェ、今週から始まったばかりなんです』

「そうなんですね、サラダとパフェで迷っていて。おいしそうです。」

『ありがとうございます。
  おいしく作ってきますね。』

「………!楽しみです!」

『伝票だけ、失礼します。』

佐藤さん(仮)厨房へ。


………なんて。なんて………!!

“おいしく作ってきますね”

“おいしく作ってきますね”

反芻したくなる。


どんどん満たされていく。
幸せな気持ちで満たされていく。
静かな店内と温かい店内照明の中、
満たされていく。


ふにゅふにゅになっていく心で考えた。

何で満たされているのか。


それはきっと「大事にされている感覚」だ。



スっと膝をついて目線を合わせられた時。
おいしそう。という口から漏れた言葉に、
おいしく作ってきます。と応えられた時。
受容と自信。にじむ責任感。



日々、保育士として子どもに目線を合わせるために膝をつき、
少しのつぶやきに応えている。
それは彼らを「大事にしたい」から。
「大事にされている」と感じて欲しいから。


その想いがあるからこそ、ミスをした時、
自分の姿勢に抜け穴があったのだと自分を責める。私も大事にされたい。

もちろん、家族、友人、私に関わってくれている人は私を大切にしてくれている。
そんなに!?という程、愛情を示してくれる。


ただ、
私が私であるから大切にされるのではなく、
私がどんな人であろうと、どんなミスを起こしていようと他の人と同じように大切にされる。

私が「イイコ」じゃなくても大切にされる。

それはとても許されるような気持ちだ。


とても大袈裟なようだけど、無条件にフラットに大切に扱われたことがとても嬉しかった。
許されたような気持ちになった。


仕事のことも忘れて、
私はただ、ただ、食事をした。

とても幸せな気持ちだった。
ディズニーランドにいる時の気持ちととても似ていた。

頑張らなくても大切にされる。
私のパーソナルなことなんて何一つ知らない人だからこそ、こちらも甘えられる。


そんな大感動を胸に
パフェを頂く。

ありがとう、佐藤さん(仮)。
ありがとう、ロイヤルホスト。
とてもおいしいです。


とても満たされた夜だった。



私は疲れたらまたきっとあのオレンジ色の光を北極星にして歩くんだと思う。

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