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【映画レビュー(前編)】「ボクたちはみんな大人になれなかった」

ウェブサイトで連載中から話題となり、2017年に書籍化された、燃え殻さんの半自叙伝的小説『ボクたちはみんな大人になれなかった』が映画化。
出演は森山未來や伊藤沙莉、東出昌大、SUMIRE、篠原篤など。

※以下ネタバレ含む

ストーリーとしては、日々を漫然と過ごして行きている会社員の男が、ある日20歳のときに付き合っていた彼女がFacebookの「友達ですか?」に現れ、そこから記憶が蘇っていく・・・というもの。

いわゆる「遡る系」で(そんなジャンルがあるかは知らないが)、現代から過去に、最終的には主人公が20歳だった90年代中頃まで記憶が巡っていく。

この主人公がテレビのテロップやCGを制作している会社の社員という設定なのだが、その絶妙な立ち位置がリアルで良かった。
というのも、これがテレビ局のディレクターやプロデューサーだったら、いくら「俺、こんな大人になりたかったんだっけ」とやさぐれてみたところで、
いやいやお前ら全国に届く番組作る仕事できてるし、給料もめちゃくちゃいいだろ!と鋭いツッコミが頭に響き、その瞬間から観る気が失せるからだ。


それに対して、局からの下請けでテロップなんかを来る日も来る日も受注しては作り続ける会社は、まさに日の当たらない場所。
自分もこの業界にいるので、その大変さのわりに「感謝されない&ギャラも低い」という実態はわかっているつもりである。

テレビ業界は局を頂点として、ありとあらゆる会社がぶら下がっていて、下請け、孫請、ひ孫受けなんて当たり前の世界だ。
当然、下に行けば行くほど入る金は減っていく。待遇も悪くなるが、テレビ業界のタテの力関係は絶対なので、局に歯向かうことは基本できない。
よって、下に行けば行くほど、長時間労働と低賃金が常態化しているのだ(ここ10年くらいでだいぶマシにはなった気がするが)。

そりゃ森山未來だってやさぐれたくもなる。
サブカル女子と付き合えてたハタチを懐かしく思いたくもなる。

全体に流れるテーマについてはまた後述したいが、とにかくこういった業界の裏側を、しかも下請け企業目線で描く作品は少ないと思うので、
これからこの業界で働こうと考えている大学生あたりは観たほうがいいかもしれない(観ないほうがいいかもしれない)。

20代前半のウブな青年から、40代中盤の無精髭&やさぐれ飲んだくれ森山未來まで味わえるのは、ファンにはたまらないだろう。
演じ分けた森山未來はすごかった。

これが

こうなる

そんな演じ分けが必要なくらい、この業界は人を変えてしまう、
とも言えるかもしれない。

(レビューは後編に続く)

※劇場とNetflixで公開中


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