「神の島」久高島のイザイホー
勝手に親近感を感じる神事がある。
それは沖縄県久高島で行われている神事のイザイホーだ。久高島は沖縄本島南東部に位置する一周8kmの細長い島である。
沖縄創世の神であるアマミキヨというノロが神の世界から舞い降りたとされている。
ノロとは神に遣える女性のことだ。
今でも神の島と呼ばれ、沖縄本島の聖地として有名な斎場御嶽(せーふぁーうたき)は久高島へ祈りを捧げるために作られたとも言われている。
イザイホーは600年前以上の歴史を持ち、久高島で12年に一度、午年に行われる既婚女性が神職者になるための就任儀式である。
驚くべき事は1978年に行なわれて以降は中止が相次ぎ現在に至るまで行なわれていないということだ。私が生まれた年と一緒じゃないか、オギャーと生まれた私がこんな年齢になるまで中止続きを余儀なくされているイベントに勝手に縁を感じてしまった。
中止続きになる理由はその参加条件である。
神職者になるためには久高島出身の30歳から42歳の女性である事が条件だが、戦前までの条件はもっと厳しく、島から出たことがなく両親も夫も久高島出身であるのことという狭過ぎる難関だった。
少子化、核家族化、人類多様性、諸々時代は変わる。当たり前なことは十分に分かっているが沖縄好きの午年女としては、まるで他人事とは思えない非常事態なのだ。
斎場御嶽の森の小窓から久高島を見た時に、呼ばれている気になって急きょ予定を変更し久高島を目指したことがあった。
実際にイザイホーが行なわれる久高島殿と呼ばれる祭祀の場所や日常的に立ち入りが禁止されているフボー御嶽の出入口に立ち、せめてイザイホーの空気感だけでも味わいたいと必死に首を伸ばした。
かつて画家の岡本太郎は1966年に行われたイザイホーや御嶽を取材し、聖域に触れた前代未聞の大事件と物議を呼んだ。事実か、作りあげられた噂話か、もしくは誰かによって企てられた出来事か真相は深く詮索しない。
しかし、仮に久高島の存在に心引かれる何かがあったならば彼の気持ちが分かる気がする。
引き込まれたが最後、我を忘れるエネルギーが久高島にはある。
先日、夫にイザイホーに参加できるならしたいと突拍子もないこと打ち明けた。
すると夫は「良いと思うよ。手紙を書いてみれば。
3ヶ月間修行に来いって言われても、それは良い経験だよね。」
理解のある夫の了解も得たことだ。
600年続く神事をバカにしている訳では決してなく、至って真剣である。
一般公募があれば真っ先に手をあげる環境を整え、その時を今か今かと待っている。