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歌三線、古典の粋

三線の師匠である山内昌也先生が三線には古典と民謡があるという事を教えてくれた。

古典はかつて琉球王国時代に首里城内で外交の手段のひとつとして要人をもてなすための音楽だった。したがってその時代に庶民が古典音楽を耳にすることはなかった。
対して民謡は庶民の生活に馴染むリズム感で発展した音楽である。
レッスンでは古典、民謡、ポップスと多種なジャンルの曲を弾くが、山内先生は古典の師範なので古典の成り立ちや教えていただく曲の歴史的背景を丁寧に説明してくださる。
だから、むつかしく取っ付きにくい印象になりがちな古典を身近な音楽に感じる事が出来た。
ゆったりとした音階を聴いていると人間の感情を美しく表現したり、沖縄の情景をさらりと三線に乗せる音の選択は世話しい時間を沈めてくれる。
古典を弾いていると琉球王国時代の三線奏者の思いに馳せてはロマンチックになったりもする。背筋が伸びて気持ちがキリッとなる。

一昨年、訪れた沖縄県本部町のフクギ並木近で駐車場の管理をしていたおじいさんと三線の話題になった時、おじいさんは「古典はモテない」と、はっきり断言していた。当時は私も同感だった。民謡は明るくウキウキとした気分で弾く事ができるし、弾いていて楽しい。
でも三線を始めて2年半が経ち、分かったのだ。
古典は歌えるようになると断然面白く、カッコいい。
今なら本部のおじいさんに反論ができる。

「古典は粋だぜ。」