最強の脳腫瘍と本当に大切なもの
原発性(他のガンの転移ではない)脳腫瘍は数年に一回は目にしますが、
その中でも最強のものは、膠芽腫(gradeⅣ glioma )です。
膵癌に匹敵する超悪性の腫瘍です、実際の経験例と、ある患者(脳外科医)の手記を読んでの感想と考察です。
僕は45歳以上の原発性脳腫瘍は、ほぼ膠芽腫だと教えられました。
その進行は凄まじく、手術をして取っても、その脇からどんどん生えてくるという感じです。
症状としてはさまざまで、頭痛や吐き気、痙攣発作で生じる人もいます。
直近で僕が経験した例では、症状は片側の下肢の脱力だけでした。
ただ、かなり進行しており、皮質脊髄路という、手足の運動を動作させる神経の通り道は大きく圧迫されて、脳の形がかなり変形していました。
https://www.asahikawa-med.ac.jp/dept/mc/neuro/general/膠芽腫(glioblastoma-gbm)
この癌は、水が染み込むように周囲に広がると言われています。
増大速度が大きいので、周囲の脳組織が浮腫を起こしている像がよく見られます。
これは、経験則になりますが、
浮腫を起こしている脳組織と、正常の脳組織の境に複数の娘結節(元々のところから間接的にできた癌の病変)がある場合が見られます。
これが見られると、ほぼ膠芽腫と見て良いと僕は教わりました。
腫瘍の攻撃力を物語る像ですね。
この癌は主に脳神経外科で治療されますが、その脳神経外科医がかかってしまった闘病記が出版されています。
岩田助教授は昭和大学の脳神経外科医でしたが、頭痛を機に調べてみると、膠芽腫でした。
執刀したのは、確か知り合いの教授だったと記憶しています。
計3回も手術しており、3回目の後は筆も握れなくなっていました。
手記には周囲の応援と、教授の熱意が書かれていました。
そういう背景があったからでしょうか、通常より多い手術回数であり、
明らかなにやりすぎだと思います。
本人は自身が主催する学会のことに熱意を燃やしていたり、
教授になるために我慢してきたといった記述もありました。
人生はある日突然終わるかもしれないということを思い知らされました。
人生の最後に書くことが、学会のこと、教授や出世のことというのは正直ゾッとします。僕は病気よりもそっちの方が恐ろしいです。
頭痛がしてもしばらく様子を見ていたところをみると、仕事で自分を見失っていたのではないかと思う節もあります。
定期的に周囲の人間が誰も存在しないと仮定し、自分の頭で人生について何が大切で、何が大切でないのか、考えておかないといけないと思いました。