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hajimesak
2021年4月29日 09:46
■第十一場 テレビ放送の音。それを聞く人たち。 佐藤夫妻は、上手袖近くに立つ。同様に下手袖近くに手塚と小笹。下手中央寄りに衣川。上手中央寄りに富田夫妻。テレビを見ていた人は後方。キャスター 「今大変世間を騒がせております、琴吹町の連続通り魔事件、その容疑者ではないか、と思われる人物につきまして、当局が独占入手した情報をお送りします。被害者のMさんが、犯人を見たと。しかもそれは、近くに住むTと
2021年4月22日 09:31
■第十場 その翌日の土曜日。午前11時。基本セット。外は曇り空で無風。蒸されているような不快な空気。上手奥には自動車が止まっており、車内に大杉、鈴木、木村がいて、唐玄を監視している。 唐玄が玄関から出て、玄関扉の汚れを布でふきはじめる。監視員は、唐玄の登場に色めき立つ。木村はスマホで写真をとり、鈴木は大学ノートに唐玄の行動記録を書き込んでいる。唐玄はその様子をちらりと見る。慌てて視線をそらす監
2021年4月13日 12:16
■第九場 それから数日後。自由新聞社の応接室。中には手塚と、新聞記者の小笹、牧原。高価なソファ。壁に社内啓発ポスター。「自由・公正・謙譲 自由新聞社訓」と大書されている。 手塚は、町民が唐玄を監視している現状を新聞記者に訴えた。 小笹は小太り。さほど暑くもないのに、扇子をパタパタさせている。姿勢がだらしない。服装もラフ。地声はやや大きい。牧原は対照的にかっちりしたスーツ。背筋をピンと伸ばして
2021年4月8日 10:53
■第八場 前場の翌日。昼過ぎ、外は弱い雨。基本セット。 粟田家のテーブルには粟田夫妻と手塚。少し離れたところの椅子に吹美果。その隣に車椅子の哲修。家の外では、衣川が傘を差して立っている。 手塚は町内会でのいきさつを話した。吹美果と哲修の反応が気になって、時々見る。唐玄は深刻な顔で腕組み。絹代は夫を気遣いながら、不安な表情。哲修は呆然とした表情。吹美果はちらりちらりと父親を見ながら、哲修の様子
2021年4月5日 10:46
■第七場 愛実は空想している。大ホールの観客の万雷の拍手に迎えられる自分。観客の中に拍手する哲修がいる。愛実は観客に一礼しながら、にこりと哲修にほほえみかける。グランドピアノの前に座ると、きりりとした表情に一変。ラフマニノフ作のピアノ前奏曲 嬰ハ短調「鐘」を弾きはじめる(他のピアノ曲でも可だが、悲劇的な展開を感じさせるメロディーが望ましい)。 唐玄が登場。父の姿を見て笑顔の哲修。父も哲修を見て
2021年4月1日 09:37
■第六場 愛実が刺された日から6日後の日曜日。夕方。基本セット。倫幸、大杉、鈴木、唐玄、絹代、哲修が井上家の玄関前にいる。少し離れたところに彩未と静香。富田家の二人は興味本位で自宅の窓越しに彼らをのぞいている。その周りには警官が一人。新聞記者とカメラマンが2名。カメラマンはしきりに井上家の外観を撮っている。絶え間なく続くシャッター音が、倫幸の神経をとがらせる。倫幸 「異常者だ! これは精神を病