【読書記録】ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2
おすすめ度 ★★★★☆
前作「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」がとてもよかったので、2も読んだ。
2も、とてもよかった。
ポリティカルな話題多め
前作より薄いので、あっという間に読み切ってしまう。
ただ、イギリスのポリティカルな部分は深堀りされていて、考えさせられる。貧困や差別、政治的な話も、堅苦しい分析が少なく、「ぼく」の日常と絡めて語られているのでスッと入ってくる。社会問題に敏感な母と、それをたまに揶揄する父、その間で静かに微笑む(たまに悩む)息子という構図がいいのだと思う。
イギリスの教育かっこよ
前作でもそうだったけど、日本の授業との違いが大きすぎて驚く。イギリスでも地域や私立公立でカリキュラムは大きく違うらしいので、一概にイギリスはこう!といえないが、「ぼく」の中学で例をあげると
性教育の授業が進んでいる。FGMを授業で扱うこともある(FGMがわからない方はググってください)
「演劇」という科目がある
シティズンシップ・エデュケーションという科目もある
シティズンシップ・エデュケーションは日本語で「市民科」といわれ、日本でも一部の学校で導入されているらしい。イギリスでは必修。
この記事だと具体的に何してるかわからないんだけど、「ぼく」の学校では、例えば模擬選挙をやる。日本のようななんちゃって選挙ではなく、各政党のマニュフェストを読み、みんなで話し合って、実際の投票日に全校生徒が学校内に設けた投票所で投票を行うのだという。
家庭内でも選挙関連のニュースをみたり、親と議論することが増えるのだという。かっこよ。
演劇とは少し違うが、音楽のコースでは、コンサートを主催するスキルも学ぶ。プロモーターになった想定で会場の提案書を作り、プレゼンするというものだ。実在の会場を選んで、立地条件から収容人数、飲食スペースの情報を調べて、さらにステージのレンタル量や機材搬入のルールを実際にライブハウスに電話して聞くことまでやっていた。
いっておくが、中2である。かっこよすぎて、私も著者と同じように中学の音楽の授業を思い出した。合唱コンクールの微妙な選曲の、何度も何度も練習させられたあの日々。あぁイギリスの中学生になりたい!
ぼくの成長
同世代の息子を持つ親目線で見ると、本当にしんみりと「ぼく」の成長を噛み締めてしまう。前回も書いたが、この子ほんっとうにいい子なのです。
息子と同年代と思えない、というより私よりよっぽど達観していて、色んなことが見えている。それでいて多感で、悩んだり傷ついたりしている。近所のおばちゃん目線で、全力で飴ちゃんあげたくなるくらいにいい子なのだ。
友人とのトラブルや、社会問題への疑問など、前作では割と何でも母親(著者)に話して、母子で議論するシーンが多かった。こういう建設的な議論ができる親子関係っていいなぁと羨ましく思いながら読んでいたのだが、今作ではちょっと変わっている。
話をしているシーンは多いのだけど、「ぼく」がすべてを打ち明けてくれるわけではなくなっている。
友達とのトラブルで泣いたときは、母に話さず、父親と別室で話す。その後夫から経緯を聞いた後
本の最後には、著者がとある質問をした時に、著者が想定していなかった答えが返ってきて衝撃を受けるシーンがある。
あぁ、きっともうすぐ私もこうなるんだろうな、という予感がした。
息子が中学に入ったら、きっとこうなる。彼と色々議論するのは好きだからさみしいけれど、だけどそれでいい。
去られるためにここにいるのだから、母は心の準備をしておくよ。
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