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【読書記録】10分で名著

おすすめ度 ★★★★☆

あらすじ至上主義ぎらい

あらすじ物が嫌いだ。
「1分でわかる」「3分で読める」とAIが書いたような紋切り型のまとめ方。
それを読んで、全部読むよりコスパ良いよね〜なんて、そんなことがあるもんか。
そんな形で理解できる本なんて、そもそも読む価値ある?と思うし、読む価値のある名作なら余計に、あらすじだけで理解しようなんてちゃんちゃらおかしいわ!ってなる。

はぁはぁ。
つい語気を荒げてしまうくらいには、最近のあらすじ至上主義が嫌いである。
これは私の、文章のリズムや表現力へのこだわり、そして、ちゃんと読むことが作者へ敬意を表すことだと思っていることに起因する。

はぁはぁ。暑苦しいな。

10分で名著は、あらすじじゃない

前置きが長すぎたけど、10分で名著、面白かった。
言い訳すると、これは10分で「わかる」でも「読める」でもない。

名著と呼ばれる作品だけど、いきなり原著を読むにはハードルが高い作品、たとえば「源氏物語」「相対性理論」「ツァラトゥストラ」などなど…
これらの面白さを、それぞれの作品のプロ(=超オタク)に存分に語ってもらうという対談作品だ。

名前は知っているし、教科書で習ったけど、読んだことはない作品に、こういう形で触れられるのは、なんというか……とても……コスパがいいな!と思う。

前言撤回?

いや、そんなことはない。
例えば、プルーストの「失われた時を求めて」をChatGPTに要約させると、こうなる。

全然面白そうじゃないし、興味が湧かない。伝わってこない。
一方で、「10分で名著」の書き方はこうだ。

「失われた時を求めて」という作品は、こういう人が出てきて、こういう話です。と要約ができないんですよ。だから直接読んだほうがいいわけです。(中略)
ストーリーだけ追うと、多分すごく薄くなってしまうと思います。この小説を読む楽しさは、ストーリーの間に挟まっているんですね。読書論や芸術論が出てきたり、急にドストエフスキーやベートーヴェンの話になったりとか、いろんな話題に飛ぶんです。そうやって語り手の発想があちこちに飛んでいくのを自分で追っていくのが楽しい小説なので(後略)

なんだか、面白そう。
ストーリーの間に挟まっているものを知りたい!という気持ちにさせられる。
他にも、「美術館に行って絵を眺めるように読む」とか「途中で読めなくなっても『挫折』と思わない方がいい」とか、読んでみたくなる言葉が並んでいる。
全体の構成、作品が生まれた歴史的背景などの前提知識、第◯部が読みやすいなど、ポイントも押さえている。

難しい・長い・前提知識が必要、などのハードルを軽やかに超えて、原著を読んでみようかな、という気持ちにさせてくれる。
そして、ただ読むだけではわからないであろう裏話や深読みポイントまで教えてくれる。

そういう意味で、コスパがいいのだ。

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