【読書記録】50歳からの性教育
おすすめ度 ★★★★★
子どもの性教育をちゃんとしたいと思って勉強し始めたのは、息子が小2だったころだ。5年以上前になる。
子ども向けの絵本、児童書を買って、親向けの本も何冊か読んだ。
たくさん本を読む中で、子どもに教える以前に自分の中の知識が足りていなくて、考え方も古いことを思い知らされた。
性教育が大事!というけれど、本当に学ばなきゃいけないのは大人なのでは?という疑問からこの本を読むことにした。
結論、めちゃ勉強になった。
「はじめに」だけでも良い
6名の専門家の共著だが、まとめているのは村瀬幸浩さんという方。81歳。
「はじめに」の穏やかで知的な語り口がまずとても良い。
性教育についてあまり考えてこなかった人は、ここだけでも読んでほしいと思う。
幅広い構成が良い
性教育というと、どうしても「生殖の性」をイメージする。刷り込みの強さを感じてしまう。
しかし、この本のテーマはとても幅広い。
第一章 更年期
第二章 セックス
第三章 パートナーシップ
第四章 性的指向と性自認
第五章 性暴力
第六章 ジェンダー
更年期に関しては、40代の私にとって気になるところだし、性暴力の章を描いている人は長年性暴力加害者の治療に関わった経験を持つ方が担当していてとても説得力があった。
性的指向やジェンダー問題は、社会の構造や差別問題に深く関わっているし、改めて「性教育は人権教育であり、人生教育でもある」と感じる内容だった。
加害者は「モンスター」ではない
全部の章で刺さったところはあるけれど、特に性暴力に関する章はかなり驚きと納得感があった。
多くの人は男女問わず、加害者を「自分とは全く違う人間」だと思っていると思う。私もそうだ。でも、著者は多くの臨床現場で加害経験者と接してきて「自分と彼らは同じだ」と感じるようになったという。
加害者の多くに加害意識がないことも指摘し、誰にでも加害性が秘められていること、だからこそ「加害者にならない」ための教育が重要だという。
社会全体の認知の歪み
加害者になる可能性を示唆すると、必ず上がるのが「男がみんな性犯罪者のような扱いをするな」という声だ。
自分が危険分子のように扱われたと憤慨し、むしろ傷ついているのは自分だ、被害者はこっちだと主張する。
ネットの世界でよく見るし、私の周りの男性もこういう反応をよくする。「痴漢は冤罪が怖い」「疑われたら大変だからいつも両手をあげてる」など。
気持ちはよくわかるし、私がもし男性ならきっとこう主張するだろうと思っていた。
だけど、この「ノット・オール・メン」は性被害を矮小化し、被害者の口を塞ぐ効果があるという。そして著者は、それぞれの加害行為は個別の加害者に責任があることを踏まえた上で、社会に男性という属性の人たちを加害に向かわせる何かがあるのではないかと深掘りする。
「男は性欲をコントロールできないから」
「露出度の高い服を着ている女性は自分を誘っている」
「触っても減るもんじゃない」
「逃げない女性は本当は喜んでいる」
こういう加害者の言い分はバリエーションがとても少なく、同じような回答に集約されるのだという。
つまり独自に生み出されたのではなく、社会によって作られた男性に都合のいい価値観から生まれるのではないだろうか。
男性だけでなく女性にも、私にもそういう認知の歪みがあるのではないかといわれると、確かに否定できなかった。
だって、小さい頃からそういうお笑いのネタや冗談をたくさん聞いてきたし、そういうもんなのかと思いながら大きくなってきたから。
その認識の中にある、加害性を自覚することが大事なんだと思う。
学びつづける姿勢
私は性教育に関する本を何冊も読んでいるし、知識としてはアップデートできていると思っている。でも、娘からダイレクトに質問をされると内心狼狽えるし、自分の中の恥の感情をどうしてもマイナスに捉えてしまう。
思春期を迎える我が子にどう接するかも悩ましいし、社会の風潮をしかたないと思っている部分もある。
自分にとっての正解はわからない。歳を重ねていくと考え方も変わっていくと思う。だからこそ、常に学び続けて考え続けなきゃいけないと思う。
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