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【読書記録】続 窓ぎわのトットちゃん

おすすめ度 ★★★★

子供のころ、窓ぎわのトットちゃんが大好きだった。トモエ学園を脳内で再現して、そこに通うことを夢見た。黒柳徹子さんのエッセイを読んだり、絵本を買ったりもした。

しかし、続編を買うのはどうしようか悩んでいた。
本編があまりに素敵な話だったから。そして続編が戦時中の話になることを知っていたから。美しくて素敵な思い出のままでいて欲しい、しんどいのは見たくない、でも気になる…をウロウロしていた。けど、結局買った。

やっぱり素敵だった。
42年たっても、トットちゃんはトットちゃんだった。
内容は戦時中、疎開先での出来事(このときのトットちゃんのママがとにかくパワフルですごい)、女学生時代からNHKの女優になって、今の黒柳徹子さんにつながっている。

徹子さんの文章を読んでいるといつも不思議に思うのが、「どうして子ども時代のことをこんなに覚えているのか?」ということだ。
ただの思い出話ではない。会話や表情、街の風景が、昨日のことを話すみたいに、みずみずしく鮮やかに描かれている。私なら昨日のことすらまともに思い出せないのに。

同じ疑問は誰でも持つらしくて、何かのエッセイで「よく質問される」と書いていた。徹子さんは自身に学習障害(LD)があったのだと思う、その分そういう記憶力に長けてるんじゃないか、とおっしゃっていた。
実際、本書に書いてあるエピソードのいくつかは、すでにエッセイで目にしたことがあった。けれど、どれも矛盾がなく、同じセリフ、同じ情景が書かれているのだ。本当に脚色なしの記憶なのだと思って、鳥肌が立った。
すごいなぁと思ったら、前にも同じようなことを書いていた。。。。

自分の記憶力のなさに凹むと同時に、やっぱりトットちゃんの物語の魅力はそこにあるのだと思う。
大人が単純に思い出話をしているのではなく、当時のトットちゃんの体験をそのままトットちゃんの目線で味わうことができる。
みずみずしく、鮮やかに、タイムスリップしたかのように、悲しくなったりワクワクしたりできる。それが、世代を超えて子どもにも大人にも読まれる理由だと思う。


私が物心ついたとき、すでに黒柳徹子さんは結構なおばあちゃんだったので、どうにもあのトットちゃんと結びつかなかった。女優時代も知らないし、音楽番組の司会も映像で見たことしかない。
トットちゃんの本も、エッセイも好きだったけど、徹子さん自体は好きでも嫌いでもない、というかよく知らない、という存在だった。

でも続編を読むと、トットちゃんがトットちゃんのまま成長し、大人になって、今の徹子さんになっていたんだと感じることができた。
ああ、やっぱり黒柳徹子さんはトットちゃんだったんだ、今でも変わらないんだ。と思うと、見る目が変わった。
何を今更、と言われるかもしれないけれど、それも続編を読んで良かったことのひとつだ。


最後に、大好きないわさきちひろさんの絵。
本のカバーを外すと、優しいピンク色の装丁に、銀色でちひろさんの絵が描かれている。素敵すぎて、キュッと心を掴まれた。この装丁だけでも、ハードカバーで購入してよかった!!と思えるので、迷っている方におすすめしたい。
(ヘッダー写真よりいい色です。撮影技術…!)

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