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【シロクマ文芸部(文芸部から始まる)】[ 伝説の色紙 ]

↑↑こちらのお題【「文芸部」から始まる】参加しました。
影響を受けた小説はなんでしょう? 正解はお話の後で😁


画像:よっと/illustAC


[ 伝説の色紙 ]

 文芸部にしては珍しく賑やかな日だった。


「つまり、タイムマシンに乗って25年後の未来から、君は来たというのか」

「はい!」

 文芸部部長が訊ねた相手は、今さっき現れた25年後の未来から来たという同じ高校の制服を来た男子高生だ。

「そして、伝説になっている色紙が見たいというわけね」

 文芸部副部長が言う。

「そうです。文芸部には25年間代々受け継がれてきた何も入っていない額縁があります。その中には色紙が入っていたと言われています。そして25年前に行方不明になったと伝説になっています」

「ほう」

「なので僕はタイムマシンに乗って、空の額縁の中に入っていたとされる伝説の色紙を見に、この時代へ来たのです」

 部長は怪訝な顔をしながら言う、「その額縁とは、もしかして、それのことかな?」

 部長が示した先には、分厚いホコリに覆われた額縁が床に置かれ、後ろ向きに壁に立てかけられていた。

「え、えーとー」

 未来男子は額縁を取り上げ、近くにあった比較的キレイな雑巾で、ホコリをキレイに拭きとった。

    そして、額縁を両手で持ち、まじまじと見つめながら、

「はい、コレです、うわぁー、額縁はぜんぜん新しいけど、間違いなく文芸部の伝説の色紙の額縁です」

 と、部長と副部長には決して伝わらない感動の声を上げた。

「これです、これです、この色紙が見たかったんです! いやぁ、あいつらも見たいだろうなー」

 興奮しながら話す未来男子を見て、部長が言う、「欲しければ持って行ってもいいよ」

「本当ですかー、ありがとうございます!」

 未来男子は額縁の中から色紙を取り出し、「仲間が喜びます、本当に、ありがとうございます!」

 と深々と頭を下げてから、タイムマシンに乗って、あっという間に姿を消した。

 文芸部には、いつもの静けさが戻った。

 部長は、空になった額縁を触りながらボソリと呟いた。

「大スペクタル長編小説が書けそうだな」

 副部長は静かに答える。

「こんなの、ショートショートのネタにもなりませんよ」

 と副部長は言ってから、「ところで、あの色紙には、何が書いてあったのですか?」

「あー、あれかー」

 部長は興味なさげに言う。「創部メンバーが作った部訓が書かれているらしい」

「ほう、それは文芸部にとって由緒正しき代物ではなかったのですか?」

「75年も前の部訓だぜ、もう何十年も前から、床に置かれていたよ」

「なるほど」

「あんなもの、由緒正しき代物になるのは、きっと創部100周年とかになったときだろ」

「ほう、すると、我々は良いことをしましたね」

「だろー、大先輩たちの想いが100年後に花開く」

「ベタなショートショートが作れそうですね」

 副部長の言葉に、部長はニヤリと笑い、何も入っていない額縁を部室で一番目立つところに置いた。

 25年間、受け継がれるように。


#シロクマ文芸部

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↓↓今回のお話はコチラから影響を受けましたー
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