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【毎週ショートショートnote(カフェ4分33秒)】[ 音楽が消える世界で ]

↑↑コチラの表のお題【カフェ4分33秒】に参加してみました。
もう、趣味に突っ走った、字数無視のお話になっちゃいました😆


画像:ユッカリトン/illustAC


[ 音楽が消える世界で ]

「ここは『4分33秒』だけが流れるカフェだ」

 ”カフェ4分33秒”の名前の由来を語る彼。
 彼とはもう4年も付き合っている。
 お前が好きそうだからと、このカフェに誘われた。

「さっきから、なにも聞こえないけど」

 どうしても囁くように話してしまう。
 とても静かな店内。
 お店の真ん中には、グランドピアノ。
 その周りに、客のテーブルが配置されている。

「弾いてるのさ『4分33秒』を」
 彼は、ピアノの前に座っている男性を指差しながら、「静けさの中で聴こえる音を楽しむ曲だ」

 確かに男性は、時折、楽譜をめくって弾いている感をだしている。
 へ〜、とは思うけど、だから何、とも思う。

「あ、その顔は、どこが私好みのカフェなんだ、と言いたそうだね」

 付き合いが長いと、これだから困る。
 そして私には、しめしめ、と彼が思っていることが分かる。

「このカフェは『4分33秒』しか流さないんだけど、一曲だけリクエストできる曲があるんだ」

 ほう、なになに興味あるよー、と分かりやすい表情を作る。
 彼はニヤけた表情で、ピアノの男性に声をかけた。

「アンコールを」

 男性は軽く頷き、静かにピアノを奏でる。

 店内に静かに流れたのは、YOASOBIの「アンコール」。
 私の大好きな曲だ。

「ご存知の通り、この曲は、世界が終わる前日の物語だ」

 そう、明日が来ない日の男女の物語。
 彼は続ける。

「この曲は、ピアノが重要な役割を持っている。ピアノ好きな店長のお気に入りで、この曲に限ってリクエストできるんだ」

 へー、と思うけど、ピアノの曲なんて他にもありそうだ、と思っていると、
「それだけじゃない、この曲は4分31秒の曲だ」

 惜しい、と、私が思うことも彼は織り込み済みだろう。

「『4分33秒』との差は2秒。このカフェでは『アンコール』が終わった後、2秒後に『4分33秒』の演奏が始まる。つまり、『アンコール』が終わった後、2秒間だけは、このカフェから音楽が消えるんだ」

 ま、もともと静かだけどね、と心の中で突っ込んでいる私をほったらかして、彼は続ける。

「2秒なんて、あっという間だ。でも、ちゃんと準備していれば、2秒あればいろんなことができる」

 確かに2秒でも侮れないね。

「そして僕は、2秒あれば、君の世界を変えることができるんだ」

 え、私の?

 曲は進み、やがて終わりに近づく。
 彼は何も話さず、私を無言で見ている。

 明日、世界が終わる。
 明日の来ない日。

 もうすぐ2秒が、やってくる。
 曲が終わり、音楽が無くなったときに──、

 私の世界が変わる、の?

 そして、ピアノは最後の音を奏で、店内には、余韻が広がっていく。

「結婚しよう」

 ────。

 突然の告白に、少し呆然とする。

「えー、と……そうね………」

 と、なんとか呟いた私。

 普通なら、続く言葉が思いつかなそうな状況だけど、私には、返す言葉がすぐに見つかった。

「そうね──、世界が終わらず、明日がやってきたら、ね」

 アンコールよりセリフを拝借。
 キョトン、とした表情の彼。
 してやったりの私。

 そして、2秒後─、ふたりで笑った。
 店内には、相変わらず4分33秒が流れていた。


おしまい。

#毎週ショートショートnote


↓↓お話に出て来た曲たちはコチラからどうぞ↓↓

↓↓ピアノバージョンも是非↓↓

↓↓アンコールの原作はコチラからどうぞ↓↓

↓↓今週の裏のお題はコチラからどうぞ↓↓

↓↓先週の表のお題はコチラからどうぞ↓↓

ナント!!!😆
福島太郎さんが紹介してくださいました
幸せです〜

福島太郎さん、ありがとうこざいました😊♪


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