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Vol.75 「誤差」のおはなし 

                           (2023年4月)

金融ソリューションチームコラムの第75弾をお届けいたします。

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調査回答データを分析するときには「サンプリング(標本)誤差」というものを念頭に置く必要があります。

これは例えば、日本在住の18歳以上を対象とした調査で全員である約1億人が回答した結果と、そのうちの1000人が回答した結果を比べた時に起こりうる「誤差」のことです。
回答者が1000名だと「±3.2%」が誤差となります。

これは前回50%だった回答割合が今回53.2%より高くならないと「前回よりも上がった」と断言できないということです。

2回分のデータでは明言できない微妙な変動だとしても、数回実施した結果を見ることで、その傾向を掴むことは可能です。

自分の老後に“不安”を感じている割合
2019年10月 44% (1677名)
2020年10月 41% (1696名)
2021年11月 42% (1661名)
2022年10月 45% (1663名)
(日本経済新聞社「日経郵送世論」より。()は全回答者数)

毎年の変動幅はサンプリング誤差の範囲に収まるような変動幅です。
どの2年間を見ても「上昇した」「減少した」とはなかなか断言できません。
でも4年間の推移をみるとどうでしょうか。

2021年になるとコロナ禍が当たり前の生活となり、コロナよりも物価・給与・子育てといった別の問題が迫り、再び「老後の不安」が高まったと予想がつきます。

この身近な問題は悪化するばかり。ならば今後もこの「老後不安」の増加傾向は続くだろうとも予測が可能なのです。

コロナという短期間で人の意識・行動を変えてしまう事態が起きました。
元の生活に戻り、意識や行動は安定し大きく変わらなくなります。
変動が小さい分、兆しや転換期に気付け未来を予想できる力が必要になります。

短期間の流行を捉えたデータも有用ですが、兆しや転換期を掴むためにも長い期間かけて得たデータは貴重な財産になるのです。


■今週の執筆者■
瀬川 知波(ソリューション本部 アカウント第1部)

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日経リサーチ 金融ソリューションチーム finsol@nikkei-r.co.jp
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また、執筆者個人の主観、意見が含まれております、ご了承ください。

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