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Vol.64 満足度調査やNPS調査を施策に活かすために

                             2022年9月

顧客に満足いただけているか否かは、未来の売上に繋がる重要指標です。そのため、事業の健康診断として満足度や推奨度の調査をされている企業も多いと思います。
一方で、これらの調査が観測だけにとどまり、具体的な施策に繋がらないケースもよく聞きます。調査は施策の結果指標ではあるものの、次の施策に繋がるヒントが得られることも多くあります。
今回は、満足度、NPS(Net Promoter Score)※、継続意向といった調査における重要指標を上げていくためには、どのような施策を実施すべきか?-そのヒントを調査データから探る方法をご紹介します。

調査結果から施策のヒントが得られない原因には、「知りたい顧客が絞り込まれてないため、顧客の解像度が低い」場合が考えられます。

例えば、「推奨意向が9以上の推奨者が12%(前回比+1pt)」や「接客の満足者が67%(前回比▲2pt)」といった指標を観測して終わるケースです。

施策を考える上では、顧客の気持ちになり切ることが欠かせません。そのため、「自分がその顧客だったら、子供が生まれ、親は高齢で地方に一人暮らしの中、リスクが高く換金時期も制限される商品を薦められても確かに困る。」といった顧客になり切る「共感力」や背景をストーリー立てる「妄想力」が重要となります。

共感と妄想を働かせるには、知りたい顧客が「どんな人かは知らないけど、とても満足している人」では困難です。そのため、何かしらの属性やその人の置かれた状況で顧客を絞り込む必要があります。

属性や状況を絞り込むことで、「50代男性で20年以上お付き合いがある企業なのに、こういう対応をされたらそれは大事にされていないと思うのも無理はないか。自分がその立場だったとしても・・・。」という共感をもって顧客になり切ることができます。

では、これをデータ分析で行うにはどうしたらよいでしょうか?
具体的には以下の流れになります。

まず、変わってほしい顧客層を決めます。ここでは仮に「不満者を減らしたい」とします。
次に、「やけに不満者が多い属性(状況含む)」の探索をします。調査データから様々な属性別のクロス集計表を使い、不満者の割合が高い属性を見つけだします。なお、ここで見つけた属性はあとで施策を実施する際のターゲットにもなります。そのため、「その属性の人と言われたとき、共感・妄想ができそうか?」に加え「その人たちに接触する有効な手段や経路はありそうか」を念頭に属性を選びます。

「やけに不満者が多い属性」を見つけたあとは、「不満層がやけに多かった属性の不満者」が「不満理由」にあげた自由回答を読みこみます。その際、「この属性の人」を頭に思い浮かべながら、この不満理由を読んでいくことが重要です。この時、テキストマイニングなども活用することで、この属性の不満層に共通してあがる「キーワード」を見つけることができます。

これで、

[1]この属性の顧客にはなぜか不満者の割合が高い
[2]その人たちは、他の属性と違って、あるキーワードを不満の理由に挙げる人が多く、こういう体験を言っている人が目立つ

の「誰」と「何」の2要素が揃います。

この人たちに共感し妄想を膨らませることで初めて「では、この人たちを不満にさせないためには、どうしたら良かったのだろう?」という施策を考えることができます。

施策を立案し詳細設計が決まったら、以降は、
1. リスクが大きい場合は、インタビューでその属性の人をお呼びし、施策の評価を聞いてから実施の可否を判断する
2. オンラインの施策ならABテストで「施策を実施する人」と「しない人」に無作為に分けてから、オンラインや次回の定点調査の結果で効果を見る

といった流れになります。

このように、顧客満足度調査が健康診断だけでなく施策にも繋がることでPDCAサイクルをスムーズに回すことができます。

日経リサーチでは、今回のような「1.ターゲットとなる属性・状況発見」と、「2.その人の自由回答に含まれる特徴的なキーワード」を見つけ出せる、独自のテキスト&データマイニングツールKeyExplorer(キー・エクスプローラー)を活用して示唆を得ることが多いです。

顧客満足度調査の活用に課題をお持ちの方は、是非弊社にご相談ください。

※Net Promoter®およびNPS®は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です


■今週の執筆者■
チーフ・データサイエンティスト/KeyExplorer開発者
佐藤 邦弘(営業企画部 兼 デジタルマーケティング部)

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日経リサーチ 金融ソリューションチーム finsol@nikkei-r.co.jp
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