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Vol.33 買い物の決済は現金派ですか?~決済のキャッシュレス化の行方~

                             2021年6月

金融ソリューションコラムvol.33をお届けいたします。
今回長文になってしまいました。ご了承ください。

金融関係に勤務される皆様は、ご近所での買い物のお支払いは何がメインでしょうか。
今回はキャッシュレスが今後どうなっていくのか、現状も踏まえて少し考えてみました。

最近はテレワークになり、毎週末の食品や日用品の買い物が増えた気がします。商店街での買い物では、各店舗で支払いの時に、毎回「ポイントカードは?アプリは?」「お支払いは何にしますか?」と言われることが頻繁になり「キャッシュレス」がちょっとしたストレスになっています。

私のメインはスマホの「PayPay」。2019年、中小小売業のキャッシュレス決済推進のために自治体がポイント還元キャンペーンを行った時に、渋々入れたのがきっかけでした。
それまで、スマートフォンに決済アプリはSuicaだけ、銀行アプリは一切入れてはいませんでした。落とした時のリスク、決済を安心して任せられるのか、という不安があるからでした。この思いは今でも変わりません。

■近所の店舗レジでお支払いをされている来店客を観察してみました
先週末、時々行くドラッグストアで、怪しまれない程度に7人の来店客のレジでの行動を見てみました。実際業務でもこういった調査をするとがあります。「行動観察調査」(時にはエスノグラフィ調査、オブザベーション調査とも言われることがあります)
結果は7人中
現金が5人
Suicaのカードが1人
スマホでの支払い(何らかのPay)が1人
でした。
せいぜい高くても2000円程度までの支払いのようでした。ご近所はキャッシュレス道半ばと実感しました。

■国の政策はどう動いているのか
2018年4月に経済産業省商務・サービスグループ消費・流通政策課から「キャッシュレス・ビジョン」が発表されています。
以下のようなことが書かれていました。

「日本は治安が良く、紙幣も綺麗で偽札が少ない、レジの処理能力が高い、ATMの利便性が高いといった社会背景があるので、キャッシュレスが普及しにくい」(その通りかもしれません)しかしながら、「キャッシュレスにはメリットもあり、現金は移動、管理、集計などオペレーションコストが発生しているので、現金の扱いが減ることによるコスト削減が実現でき、生活者も事業者もメリットが相互にある」(確かに理解はできます)
さらには、2025年の大阪・関西万博に向けて「支払い方改革宣言」として「未来投資戦略2017」で「キャッシュレス決済比率40%」という高い目標を掲げており、最終的には世界最高水準の80%をめざすと示しています。
2018年7月には産学官からなる「キャッシュレス推進協議会」も発足されました。
また、金融庁は、個人の資金決済というリテール面だけでなく、企業間の大口決済等のホールセール面、決済インフラまでをも含んだ決済制度の見直しを「決済高度化」の名の下に進めています。

■海外と比較した日本のキャッシュレス
「キャッシュレス推進協議会」から2020年3月31日に出された「キャッシュレス・ロードマップ2020」に、2017年の海外キャッシュレス決済比率が比較されていましたので、ご紹介します。

「キャッシュレス比率=キャッシュレス支払手段による年間支払金額÷家計最終消費支出」で算出
※キャッシュレスの定義は「物理的な現金(紙幣・硬貨)を使用しなくても活動できる状態」

1位韓国97.7%
2位中国70.2%
3位カナダ62.1%

10位日本21.4%
11位ドイツ16.6%


となっています。(世界銀行資料2019年更新より協議会が作成、但し中国を除く)
トップの韓国とは80ポイント近くの差がありまだまだ低いようですが、ドイツが日本よりも遅れているのはちょっと意外でした。

■この先も現金はなくならない?
今年の4月には賃金の支払いについて厚生労働省田村大臣が「デジタル給与払い」の早期制度化について言及していたようですが、すんなりと実現はできなさそうに思います。Payなどの電子マネーで給与をもらっても現状、銀行は受け取ってくれないでしょうから。皆様はどうお考えでしょうか。

政府はコロナ禍の「特別定額給付金」の申請受付や支払いで自治体含め混乱を回避できなかった経験もあり、9月に発足のデジタル庁もキャッシュレスに関与するのは間違いないと想像できます。日本は、世界で最も高齢化が進んでいる先進国。デジタル弱者が多く、自然災害でキャッシュレス決済が止まるというリスクも抱えています。「誰一人取り残さない社会」を実現するために、すんなりとは決済のキャッシュレス化を進めることは難しいのかもしれません。2024年の4月以降に紙幣も20年ぶりに刷新される予定ですし、当面はなくならない、なくせない、のではないでしょうか。
よろしければ、皆様のご意見ぜひお伺いしたいです。

■今週の執筆者■
中谷 真由美(営業企画部)

【お気軽にご意見、ご要望などいただければ幸いです】
日経リサーチ 金融ソリューションチーム finsol@nikkei-r.co.jp
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また、執筆者個人の主観、意見が含まれております、ご了承ください。

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