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遠い約束

人と約束するとき最初から破ろうと思っている人はそんなにいないでしょう。

破る理由はいろいろあります。体調が悪くてならまだしも気持ちが下がって外に出るのもいやというだけですっぽかす。連絡手段はいくらでもあるはずなのに。

特に突拍子もない自分の気持ちに左右される約束がいちばんやっかい。

しかしその人の精神状態は計り知れません。

ただこちらの配慮も必要なのかもしれません。

子どもの時「約束は守りましょう」と教えられました。

おとなになって平気で破る。心が荒んでしまったのか⁈忙しくて…。というのも理由になるようです。

5年生の孫が幼稚園の時、シンガポールのナイトズーを一緒にテレビで観て大きくなったら一緒に行こうと気軽に約束しました。

いい加減な気持ちではなく本当に行きたいと思ったからです。

彼はまだ5歳でした。最近娘が「いつになったら連れてってくれるんかなあって言って楽しみにしてるみたいよ」と言いました。

え!!すっかり忘れていた。

その弟の孫は神戸動物大国。何気なく言っている約束も彼らはちゃんと覚えています。あのハシビロコウをまた見たい。2時間もじっとして動かないはずなのに。あちこちにいるし走ってるのもいた!と興奮気味。

図鑑と違うので驚いたようです。

そう言えば私も祖母が約束したこといつまでも覚えていました。

それは遠い昔の一コマですが、今でもはっきり覚えています。

須磨の水族館。正面玄関から真っすぐに行くと小ぶりのプール。のぞくと大きなマンタがうようよ。それが怖いような、海にこんなものが住んでいるんだと、何度も覗いたのを思い出しました。

次の誕生日に行こうね!と約束していましたがそれは叶いませんでした。

病に倒れた祖母は入院。子供の私はお見舞いにも連れて行ってもらえず、

やっと退院した時は誕生日の約束もすっかり忘れていました。

それから何年も経って、すでに祖母は逝って十三回忌。親せきがたくさん集まって久しぶりににぎやかな食事になりました。

その時、叔母たちが整理した和ダンスの中に外国土産の皮の表紙。diaryと金文字がうっすらと残っているノートを持ってきました。パラパラとめくると「紀子と水族館に行く約束」と走り書き。

物忘れがひどくなった祖母はすぐにメモしておいたのでしょう。

子どもの私の方が忘れていたのにちゃんと連れて行く気で書き留めていてくれた。子供心に温かいものが溢れました。

ちいさな約束はひょっこり顔を出してあの時に連れて行ってくれます。

今日は孫たちに手紙を書くことにします。「忘れてないよ!」と付け加えて。

今日もいい日にしましょう!







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