マガジンのカバー画像

持続可能なミュージアムのDXとは

9
ミュージアムの世界でもDX(デジタルトランスフォーメーション)ということばを耳にするようになってきました。ただ、使われ方を見ていると、ミュージアムと社会との接点、たとえば展示をデ…
運営しているクリエイター

2021年10月の記事一覧

持続可能なミュージアムのDXとは(第6回):所蔵品DBと展示企画の共有

「もの」の管理と公開が仕事であるミュージアムにとって、「もの」に関する情報のかたまりである所蔵品DBは、中核をなす道具と言えます。少し先回りして結論を出してしまうならば、ミュージアムのDXの第一歩とは「館内の組織的な内部業務に所蔵品DBを利用しながら、DBが長期的に維持される状態を実現する」ことです。どんなに個別の仕事のデジタル化が進んだとしても、個別の仕事で発生したデジタル情報が即時に活かされれず、DBは何年か後に大きな手間をかけて書き換える、というのでは話になりません。業

持続可能なミュージアムのDXとは(第5回):中の人が使えば所蔵品DBが育つ

出版物の目録やパソコンで管理しているExcelのデータを使えば、外部に公開できる所蔵品DBをそれなりの形で作ることができます。ともすれば、これでミュージアムの外向けのサービスはできた、と考えがちです。しかしこのような作り方は、たとえてみると切り花を花瓶に生けたようなもので、よほど気をつかって維持管理していないと、データは遅かれ早かれ古びてしまいます。 ミュージアムの所蔵品のデータはそんなに変化するものではないのでは、と思われる方もおられるでしょう。実はそうでもありません。ま

持続可能なミュージアムのDXとは(第4回):誰が所蔵品DBを使うのか

ウェブで検索可能なミュージアムの所蔵品DBについては、ここ1年ほどの間に、もう一つ大きな動きがありました。文化庁が2018年度から継続している「文化庁アートプラットフォーム事業」の一環として、日本の美術館が所蔵する近現代美術作品の情報をデータベース化した「全国美術館収蔵品サーチ「SHŪZŌ」」が公開されたことです。SHŪZŌは「収蔵」ですが、ちょっと人の名前っぽいというので愛称とされたそうです。2021年3月現在で、85館、作家数1,243名、69,889件の作品情報が収納さ

持続可能なミュージアムのDXとは(第3回):実は充実してきたミュージアムの所蔵品DB

あまり誰も言わないのですが、ミュージアムの所蔵品検索機能は、ずいぶん充実してきました。5年ほど前から、都道府県立の美術館・博物館のウェブサイトで所蔵品検索ができるかどうかのチェックを続けています。もちろん都道府県立だけがミュージアムではありませんが、大まかな動向はうかがえるだろう、というつもりです。だいたいミュージアム情報関係の講演とか大学の講義がある機会に、準備を兼ねて各ミュージアムのサイトを確かめています。 今回はnoteの記事を書こうということで、ひとわたり見直してみ