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持続可能なミュージアムのDXとは(第3回):実は充実してきたミュージアムの所蔵品DB

あまり誰も言わないのですが、ミュージアムの所蔵品検索機能は、ずいぶん充実してきました。5年ほど前から、都道府県立の美術館・博物館のウェブサイトで所蔵品検索ができるかどうかのチェックを続けています。もちろん都道府県立だけがミュージアムではありませんが、大まかな動向はうかがえるだろう、というつもりです。だいたいミュージアム情報関係の講演とか大学の講義がある機会に、準備を兼ねて各ミュージアムのサイトを確かめています。

今回はnoteの記事を書こうということで、ひとわたり見直してみた結果が、下記の一覧です。「検索機能」というのは、閲覧者が検索語を入力して結果が得られる、という意味で、たとえば公開件数がある程度多くても、作家一覧からリンクで飛んでゆくようなギャラリー風のページなどはのぞいています。リンクの後は、検索語を入れずに検索する「全件検索」で表示される数値です。検索ができても、検索件数が出ない、とか検索語を入力しないとエラーになる、という場合は記していませんが、もちろんDBにはかなりの数のレコードがおさまっています。
なお、私の気がついていないDBがあるかと思います。ご教示いただければ幸いです。

都道府県立ミュージアムの所蔵品検索ページ

北海道博物館 http://jmapps.ne.jp/hmcollection1/  10,788
[北海道立美術館](5館) https://artmuseum.pref.hokkaido.lg.jp/database/ 12,060
青森県立郷土館 https://www.kyodokan.com/goods_list/  9,692
岩手県立美術館 http://www.ima.or.jp/collection/search-shiryo/  3,433
東北歴史博物館 http://jmapps.ne.jp/thm2/  18,388
秋田県立近代美術館 http://da.apl.pref.akita.jp/moma/  2,090
秋田県立博物館 https://da.apl.pref.akita.jp/mus/  443
山形県立博物館 http://db.yamagata-museum.jp/muse/history/  8,820
福島県立美術館 https://art-museum.fcs.ed.jp/コレクション/収蔵作品検索   
福島県立博物館 http://jmapps.ne.jp/fukushima/  36,996
茨城県立歴史館 http://www2.rekishikan.museum.ibk.ed.jp/menu.php
茨城県立近代美術館 http://www.reserch.modernart.museum.ibk.ed.jp
茨城県自然博物館 http://jmapps.ne.jp/natibaraki/  259,708
群馬県立自然史博物館 http://www.gmnh.pref.gunma.jp/musetheque/top.do 
栃木県立博物館 http://www.muse.pref.tochigi.lg.jp/sdb/
[埼玉県立博物館施設](4館) https://jmapps.ne.jp/saitamarekimin/  130,523
埼玉県立近代美術館 http://jmapps.ne.jp/momas/index.html  3,866
[千葉の県立博物館] http://search.chiba-muse.or.jp/DB/  355,306
[東京都の博物館・美術館] https://museumcollection.tokyo  56,454
神奈川県立近代美術館 http://www.moma.pref.kanagawa.jp/webmuseum/  19,247
神奈川県立生命の星・地球博物館 https://nh.kanagawa-museum.jp/kpmnh-collections/  830,777
新潟県立歴史博物館 http://jmapps.ne.jp/ngrhk/  36,607
石川県立美術館 http://www.ishibi.pref.ishikawa.jp/collection/index.php  6,984
福井県立美術館 http://artsearch.pref.fukui.jp  3,715
山梨県立美術館 http://jmapps.ne.jp/yamanashimuse/index.html  10,349
山梨県立博物館 http://www.museum.pref.yamanashi.jp/2nd_syuzousiryo.html  85,244
岐阜県美術館 http://gifu-art.info/search.php  4,576
岐阜県博物館 https://jmapps.ne.jp/gifuhaku/  570
静岡県立美術館 http://spmoa.shizuoka.shizuoka.jp/collection_vote/index.php
愛知県美術館 https://jmapps.ne.jp/apmoa/  9,866
三重県立美術館 http://www.bunka.pref.mie.lg.jp/art-museum/da/  5,857
三重県総合博物館 http://www.bunka.pref.mie.lg.jp/MieMu/da/  143,304
滋賀県立近代美術館 http://www.shiga-kinbi.jp/?cat=12
滋賀県琵琶湖博物館(歴史民俗) https://jmapps.ne.jp/biwahaku_h/  25,067
滋賀県琵琶湖博物館(地学生物) https://jmapps.ne.jp/biwahaku_n/  344,081
京都府立京都学・歴彩館 http://www.archives.kyoto.jp/websearchpe/  386,563
兵庫県立美術館 http://jmapps.ne.jp/hpma/  10,391
兵庫県立人と自然の博物館 https://www.hitohaku.jp/musepub_col/Default.aspx
和歌山県立近代美術館 https://www.momaw.jp/collection/heritage/  10,295
鳥取県立博物館(とっとりデジタルコレクション内) https://digital-collection.pref.tottori.lg.jp 75,395
島根県立美術館 http://jmapps.ne.jp/shimane_art_museum/index.html  1,278
島根県立古代出雲博物館 https://www.izm.ed.jp/db/  946
岡山県立美術館 https://jmapps.ne.jp/okayamakenbi/  2,574
広島県立美術館 https://www.hpam.jp/museum/collection
徳島県立近代美術館 https://art.bunmori.tokushima.jp/srch/srch_art_sakuhin.php  22,468
徳島県立博物館 http://www.museum.tokushima-ec.ed.jp/database.htm
香川県立ミュージアム http://jmapps.ne.jp/kpm/  44,226
高知県立美術館 http://jmapps.ne.jp/moak/  8,321
福岡県立美術館 http://jmapps.ne.jp/fma/  9,929
長崎県美術館 http://www.nagasaki-museum.jp/collection/ 4,039
長崎歴史文化博物館 http://www.nmhc.jp/museumInet/prh/colArtAndHisIndex.do
熊本県立美術館 http://jmapps.ne.jp/kumabi/  832
大分県立美術館 http://www.opam.jp/page/collections_search.html  8,416
宮崎県立美術館・総合博物館 http://www.miyazaki-archive.jp/d-museum/  3,667
件数計: 3,024,151

公開件数にかなりばらつきはありますが、WEB経由で所蔵品情報を検索できるミュージアムが、これだけはあるわけで、全件検索の数値を集計してみると300万件を超えます。「ジャパンサーチ」で集約しているメタデータが2,340万件余り(2021年10月現在)、そのうち自然科学系のデータがある程度国立科学博物館経由ですでにとりまとめられて重複していることを考慮しても、かなりの数といってよいでしょう。ミュージアムからの情報公開が遅れている、と以前から指摘され、私自身もそのことは訴えてきましたが、問題意識を持った各館の地道な改善は、それなりの成果をあげてきたと言ってよいかと思います。

進展の要因はいくつか考えられます。ネットがあたりまえの時代になり、職員も世代交代が進んで、デジタル化に対する忌避や反発が薄れたというのもあるでしょう。DB構築の機会として、施設のリニューアルの時期をとらえた、というお話も聞きました。DBがクラウド環境で稼働するのが一般的になるとともに、ソフトウェアベンダーの努力により、ミュージアムでの利用に適したパッケージが普及して、導入のハードルが下がってきたのも、大きな変化です。少なくとも社会的な意識の変化と情報通信技術の発達にともなうコストの低下はプラスの材料でしょう。

もっとも設置者別に見てゆくと、それほど楽観できる話ではないのも事実です。歴史のある私立の美術館や小規模な自治体立の博物館が厳しい状況にあり、デジタル情報の蓄積や環境の整備に手が回らない、というのは無理からぬところがあり、ここは政策的なサポートが求められます。その一方で、政令指定都市や県庁所在地など、人的、財政的にある程度条件のよい自治体でDBの公開が意外と進んでいないのは、いささか不思議なところです。都道府県でも、以前私が指摘した来館者中心のウェブサイトから脱していない館も、まだ少なからず見られます。そのようなでこぼこはあるにしても、この10年ほどのコレクション情報公開の進展は、適切なデータとやる気があれば、ミュージアムにおけるデジタル情報の蓄積と公開が可能であることを示しています。

とは言え、ウェブで所蔵品情報の公開ができた、というのは一つのマイルストーンで、それ自体が目的ではありません。だいじなのは公開可能となった所蔵品情報を使ってミュージアムは何をするのか、という点です。次回以降、そのことを館業務との関わりの中で考えてゆきたいと思います。

ヘッダ画像:川瀬巴水「東京十二題 五月雨ふる山王」(東京国立博物館) 出典:ColBase  https://colbase.nich.go.jp/collection_items/tnm/A-9104

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