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街でユニバーサルデザインのミニバン型タクシーを見かける事が多くなりましたが、年末にこんな記事がありました。

車は止まったが、乗客が工藤さんと知ると、「乗せ方が分からない」と二度断られた。三台目も当初は「電動は重量オーバーだ」と拒否されたが、「体重含めて規定の二百キロ以内です」と食い下がると、渋々乗車が認められた。
タクシーを探しはじめて一時間二十分がたっていた。「何のためのUDタクシーなのか」。工藤さんの声は震えていた。
十月三十日、障害者団体のDPI日本会議が乗車実験を試みた。全国のべ百二十人の車いす使用者が路上、停留所、電話予約などでUDタクシーに乗ろうとしたところ、三割弱が拒否にあった。「停留所でUDの順番が来るまで待っていたが、UDが先頭にきた途端に逃げられた」という事例も。

こうした乗車拒否が想像以上に多い事がわかります。

オリンピック・パラリンピックに向けてUD型タクシーが増えていると感じたのにはどうやら理由があったようです。一台約350万円するが、国と自治体から合計100万円程度が補助されるケースもあるようなので、買い替え時期に合わせてUD型にしたという所が多かったのかもしれません。

DPIの事務局には匿名の運転手から「時間がかかる分、稼げなくなる」と苦情もくるという。

買い替えの際に補助されるからとの理由でUD型にしたにも関わらず、そこに運転手のしっかりとした研修や障害への理解がついてこなければ全く意味がありません。設備や物を揃えただけでバリアフリーになった、共生社会が実現しましたとはならないのです。

車イスの方も乗車できるという事で補助がでるケースもある中で、稼げなくなるという理由で拒否されるというのがとても悲しいです。「障害者を乗せる載せるとなると時間と手間がかかってしまう。それならばそうではない人を多く乗せられる。その分稼げる」という考えが見えてきて、これで2020年になるのかと寒気がしました。

JRに関してもこんな記事が今月にありました。

国交省令では、車いすスペースがある席を新幹線に設置するよう義務づけており、1編成に1~2席ある。JR西日本と東海、九州では、窓口や電話で予約する必要があり、前日までは優先的に確保しているが、当日は一般客も予約できるという。JR東日本は、グリーン席は2日前までの予約が必要だが、普通席は出発まで優先的に確保しているという。

木村氏は「当日に車いすの方が購入したくても一般の方に買われてしまって、利用できないことが多い。そもそもたった2席しかスペースがないのだから、当日まで車いす利用者のみが買えるようにすべきだ」などと質問した。赤羽氏は「JRの対応は大変残念に思う」と応じ、「JRには抜本的に(対応を)見直すように、障害者の方々の声を直接聞くように強く求めたい」と述べた。

JRなどは設備や研修にお金をかけられる力がありそうですが、タクシーなど運転手個人の考えで決まってしまいそうなものはなかなか変えるのは大変そうです。

しかし一つひとつ言っていかなくては何も変わりません。向こうが気づいてくれる、変わってくれると待っているだけでは駄目なのかもしれません。「稼げなくなる」という言葉から日本の閉塞感、それによる人へ心を傾ける事ができないほど余裕がないのが感じられます。

車いすのまま乗れるユニバーサルデザイン(UD)タクシーで乗車拒否がなくならないとして、国土交通省は、正当な理由なく乗車拒否した場合は道路運送法にもとづいて「厳正に対処する」とする通達を業界団体に出した。通達は19日付で、悪質な事業者は行政処分する方針だ

道路運送法ではタクシー事業者に対して、正当な理由なしに乗車拒否してはならないとしているそうです。

障害者が言ってもなかなか変わらなかったバリアフリーやユニバーサルデザイン。パラリンピックを開催するとなり急ピッチで整備を進めてたしかに利用しやすくなった部分はあります。でもやはり人の心がそこに追いついてきていないという事が露呈した記事だったので紹介しました。

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