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描写の考え方〜小説のちょっとしたコツ

崖っぷち作家のニジマルカです。

小説のちょっとしたコツや小技をご紹介するシリーズ。

今回は「描写の考え方」です。


描写は情報提示

ごくまれに作家志望者の方の原稿を読ませてもらうときがありますが、たまにものすごく詳細な描写を見かけることがあります。

細かい描写がずっと続くのですね。

書き始めたころにはよくあることかもしれませんが、詳しく描写すると「小説を書いている感」を味わえたり、手軽に小説っぽくできるので、ついつい事細かに書いてしまうのだと思います。

特に最初から文章がうまい人はそうなりがちかもしれませんね。

悪いわけではないですが、詳しく書くことが目的になってしまうと本末転倒です。

きつい言い方をすれば、自分だけが楽しんでいて読者のことを忘れています。


詳しく描写するクセがある人は、描写を情報提示だと考えるといいです。

なにか読者に伝えたい情報があり、それを描写という手段で提供しているだけです。

描写することで読者に新しい情報を与えているだろうか、と考えてみるのもいいですね。

茶渋がつきっぱなしの湯呑やテーブルについた輪じみを描写することで新情報を提供できるなら書けばいいと思います。

描写は多すぎても冗長になりますし、少なすぎても情報が足りなくなります。

おすすめは、初稿は最小限の描写にとどめておいて、完成したら推敲しながら描写なり説明なりを追加することです。

最初はちょっと抑え気味に書いて、あとから足す方がバランスは取れると思います。


描写の順番

描写に決まった順番があるわけではありませんが、単純化して言うと、話をどう進めたいかによって2つに分けられると思います。

1.ゆっくり進めたい場合 → カメラが寄っていく
2.はやく進めたい場合  → カメラを引いていく


1は、カメラが遠→中→近と寄っていくイメージです。

最初に大きな舞台を描写し、次にシーン内の重要な要素(人、モノ、コト)を描写し、最後にシーンで起こる動作や焦点となる対象を描写する感じです。

大状況から、中、小と進むのでわかりやすく、自然で安定した読み味になると思います。

ただ、シーンの重要要素にフォーカスが合うのが最後になるので、やや退屈な印象を与えるかもしれません。

一方、2はカメラが近→中→遠と引いていくイメージです。

最初にアクションや対象の描写から始まり、カメラを引いていくことで大きな状況がわかってくる感じです。

突然、重要要素から始まるので驚きがあり、その驚きで読者を引っ張っていく書き方です。

ただ、最初はよくわからないアクションや誰かの会話から始まったりするので、そこで読者が混乱することもあるでしょう。


1は静的、2は動的と言えるかもしれません。

1は状況から、2はアクションからと考えてもいいですね。

どちらも一長一短ですが、意識して使い分けられるといいと思います。


自分は2で書きがちです。

たとえば誰かの会話から始まり、その人物が誰かを描写したり説明したりして、最後にその場所がどこか、どういう状況か、を描写する感じです。

これはアクションから先に書くのがクセになっているからだと思います。


ただ、アクションから書くと読者に負担を強いることにもなるので(最初は何が起きているかわからないため)、適宜、状況から書くなどして緩急をつけられるといいのでしょう。


自分がどちらから書きがちなのか確かめてみるのもいいですね。

自分のクセは気づきにくいものですが、気づくことができれば直すこともできます。


今回のまとめ

「描写の考え方」という話でした。

1.描写のための描写になっていないか
2.描写を情報提示だと考える(詳しく書きすぎてもノイズが増えるだけ)
3.初稿は最小限の情報提示にとどめ、後で追加する方がバランスが取れる
4.話の進め方によって描写の順番は異なる
5.自分がどちらで書きがちか確認してみる

書くことに慣れてくると、つい手癖で書いてしまいがちです。

たまにどう書いているのか確認してみるといろいろ発見があると思います。

それではまたくまー。



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