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2学期に読んだ本 (2022年度)

2学期は行事が多かったものの、割といいペースで読書できたかなと思います。児童書も長めのものが読めました。(児童書は4か月毎にまとめていて、後日投稿予定です。)
今回は、2学期に読んだ一般向け図書から10冊を選んで紹介します。

①『聞く技術  聞いてもらう技術』

(東畑開人・著 ちくま新書 2022)
本の帯に出ていた「小手先」の聞く技術について、まあよく言われることだよね…と少し冷めた気持ちで一度スルーしていたのですが、「居るのはつらいよ」で有名な東畑さんの本だし、やっぱり興味が勝って購入しました。
まえがきで書かれていた「聞く」と「聴く」とでは「聞く」の方が難しいという部分からもうすっかり本に引き込まれて一気読み。自分の身に置き換えて考えたくなる内容が満載でした。
年明けの読書会の課題図書にも選びました。この本について他の人たちと話すのも楽しみです。

②『道徳教育  いい人じゃなきゃダメですか?』

(髙橋秀実・著 ポプラ社 2022)
髙橋秀実さんの本やエッセイが昔から好きで、『弱くても勝てます』については先日感想をnoteに書きました。『弱くても勝てます』読了後、髙橋さんって最近どんな本出しているんだろうと思って調べたら出てきたのがこの本でした。
読んでみて、ここまで軽快に道徳教育のおかしさを論じていくのはさすがだなと思いました。私たち教員は、道徳教育はすべての教育活動とつながっているということを常々意識させられていますが、一歩引いて考えてみるとちょっと滑稽と言うか、おかしさがあるんですよね。それを見ないふりしていないと教師なんてやってられないわけですが、完全に信じ込むことの危険もあるような気がしています。教師が読んだときに、「ふざけている!」という怒りがわいてくるか、「そうだよね」と共感する気持ちがわいてくるか…ちょっと聞いてみたい気がします。この本を読むことは、いろんな視点から道徳教育を問い直すよいきっかけになるのではないでしょうか。

③『正しいコピペのすすめ 模倣、創造、著作権と私たち』

(宮武久佳・著 岩波ジュニア新書 2017)
GIGAであっという間に学校現場にICTが入り込んできて、パソコンやタブレットを使った授業がものすごい勢いで広がっています。そんな中で感じることが「教師の著作権への意識が低い」ということです。かく言う自分も、数年前まで、著作権に関する知識は断片的で怪しいものでした。
著作権に関する本はたくさんありますが、とにかく分かりやすいものだと他の人と共有しやすくていいなと思って手に取った岩波ジュニア新書。よく整理されていてとても分かりやすい!著作権については教員が理解して、さらに子どもたちにも分かるように伝えていかなくてはなりません。その第一歩としてこの本はきっと役立つはずです。(中高生なら、自分で読んで活用していってほしいですね。)

④『マーケット感覚を身につけよう』

(ちきりん・著 ダイヤモンド社 2015)
著者は、既存の価値観に疑問を投げかける社会派ブロガーのちきりん。鋭い学校批判に面食らうこともありますが、この人の考え方にはとても影響を受けました。こちらのダイヤモンド社のシリーズは4冊あり、これはその2冊目です。公立小学校教員に「マーケット感覚」なんてあんまり必要ないかな…と思って積読していましたが、読んだらやっぱりとてもおもしろくて読んでよかったなと思いました。
「マーケット感覚」という言葉の響きから、物を売るとか儲けるとかそういったイメージが浮かびますが、「「潜在的な価値に気づく能力」こそがマーケット感覚です。(p.143)」とあるように、もっと広い視野で捉える必要がありそうです。ちきりんは、社会を見る目に長けています。それは、私たち教員に足りない力でもあります。子どもたちがこれから生きていく社会について知ること、そして前向きに捉えて柔軟に発想すること。そのヒントを与えてくれる1冊です。

⑤『描いて場をつくる グラフィックレコーディング』

(有廣悠乃・編著 学芸出版社 2021)
私は、グラフィックレコーディングやグラフィックファシリテーションに関心があり、数年前から独学で学んできました。こじんまりとした仲間との読書会や学習会などで実践しながら試行錯誤を重ね、少しずつ経験値も上がってきました。(とはいえ、プロの方々には遠く及ばず、まだまだ初心者です。)
社会全体でICTが活用されるようになり、手書き文化は廃れていくのかと思いきや、手書きすることの価値は益々高まっているように感じます。グラフィックレコーディングの技術をもって場作りをすることの魅力はたくさんあり、やればやるほど楽しさや難しさを感じます。
この本は、グラレコに関する基本的な知識が学べるだけでなく、たくさんの実践例が載っていることが魅力です。グラレコは十人十色だし、決まった正解があるわけではありません。自分に合った学び方や描き方、活用の仕方を見つけていくためにきっと参考になると思います。

⑥『本へのとびら  ―岩波少年文庫を語る』

(宮崎駿・著 岩波新書 2011)
この本は前にも読んだのですが、岩波少年文庫の選書で迷って、久しぶりに開いたらついつい全部熟読してしまいました。宮崎駿さんが書いた読書論の本です。
「本はいっぱいは要らない、50冊じゃなくて1冊あればいいとも思っているんです。(p.140)」「本には効き目なんかないんです。(中略)だから、効き目があるから渡す、という発想はやめたほうがいいと思っています。(p.145)」「僕らは「この世は、生きるに値するんだ」という映画をつくってきました。(p.156)」などの言葉に、いちいちハッとさせられました。そして、それらのメッセージがじんわりと心に沁み込んできました。宮崎駿さん、今また映画を作っているようですね。この機会にこちらの本を読んでみてはいかがでしょうか。

⑦『老人と海』

(ヘミングウェイ・作 高見浩・訳 新潮文庫 2020)
恥ずかしながら、初めて読みました。若い頃に読んでいてもあんまり良さは感じていなかったかもしれませんが、今読んだことで自分の様々な経験を連想しながら物語を楽しめました。巨大カジキとの死闘もすごいのですが、物語後段が私には衝撃でした。でもそういうものかも…と思ったり。
小6の教科書に載っている立松和平の「海の命」を連想するのは私だけでしょうか。

⑧『クララとお日さま』

(カズオイシグロ 早川書房 2021)
人工知能搭載のロボット、クララの目線で描かれる物語。まず、ロボットの気持ちになって読むというのが不思議な体験でした。
何があっても主人に尽くすAIの健気な姿を軸に読んでいくことで、周囲の登場人物の人間らしさが際立ってきます。そして、題名にも出ている「お日さま」がお話のキーワードになっています。お日さまが照らし出す情景が頭の中に浮かんできましたし、クララがお日さまに対して抱く感情は、人がよりよく生きようとするための思考や努力と似通っているように感じました。
カズオイシグロの本を読んだのは、2冊目です。来年またカズオイシグロの本を読みたいなぁと思います。

⑨『推し、燃ゆ』

(宇佐見りん 河出書房新社 2020)
夫が図書館で予約していた本。(予約したとき40人待ちだったらしいです。) 芥川賞受賞で話題の本でしたよね。
生きづらさを抱えた若い女性の物語です。推しを理解し支えることに全てを注ぐ主人公あかり。推しを追いかけることでなんとか自分を保ち、生きていられる。
主人公に共感しながらのめり込んで読むというより、客観的に解釈しながら読み進めていく感じでした。何かにしがみついて必死で生きている人は現実にもたくさんいるし、誰にもそういう一面があるかもしれない。
とは言え、この主人公みたいになりそうな子どもに義務教育ではどう関わっていったらいいのか…みたいなことも考えてしまったなぁ。中高の先生が読んだらどんな感想をもつのかも聞いてみたい。

⑩『物語のカギ』

(渡辺祐真・著 笠間書院 2022)
最後はこちら。本屋さんで偶然見つけました。読書の授業の参考になるかなぁ?なんて思って読みましたが、読み方のヒントが羅列されているだけの本ではなく、物語の価値や意味についても書かれていて普通に読み物としておもしろかったです。(大学で文学部だった人とかには当たり前に知っている内容なのかもしれませんが、私は理数系の学部出身なので、基本的な文学の知識が足りないんです。。) この本には、本文で具体例として紹介されている本や参考文献がたくさん出ているので、この本を手がかりとして読書を広げていくのも楽しそうです。

終わりに

なかなか大人本の読書履歴をちゃんとまとめられなかったのが、今年の反省です。手帳にリスト化するだけでもいいからちゃんと読んだ本をメモしておきたいなぁ。授業がある学期中はなかなかブックレビューを書けないので、来年も期間を決めて読んだ本の紹介はしていきたいです。

本はおもしろい。このことを来年も多くの人と共有できたらいいなぁと思います。
みなさん、よいお年をお迎えください。