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22_RPG参考作品(体験編)

TRPGを遊ぶことに限らず、様々なジャンルのクリエイターやアーティストにとって身体性が大事と言われます。様々な体験すべてが、TRPGシナリオ創作の発想の助けになり、ロールプレイにおける表現の幅を広げてくれます。個人個人の趣味や嗜好はさまざまです。ここでは、私が個人的に体験したことの中から、前の記事に倣って、忍者ネタ中心に紹介します。

◆活劇体験

『忍者LARP』
TRPGと異なり、参加者がキャラクターになりきって体を動かす体験遊戯が LARP(Live Action Role-Playing)です。いわば、大人の「ごっこ遊び」です。うまく演じる必要はありません。楽しむことが目的です。「ごっこ遊び」と言っても、シナリオや判定ルールがあります。なんと、手裏剣を狙った的に命中できたかどうかで判定するそうです。他に必殺技に近い「忍術カード」も使用します。シナリオ作成をゲームデザイナー&小説家の友野詳先生が担当し、グループSNE協力のもと2018年12月、2019年5月, 11月に伊賀市で開催されました。その後、事情により中断しています。2022年2月にはテストプレイ実施したものの事情により中止。再開される日を期待したいところです。2022年2月(超・忍者月間)にルールブックが発売されました。国際忍者研究センターにて通販、サポートされています。なお、この文章はルールブックを読んだ感想であり、実際に体験したわけではありません。(2022年5月1日追記)

◆観光地

伊賀流忍者博物館(三重県伊賀市)
 忍者を知るのなら、身体感覚で実体験するのもひとつ。三重県伊賀市は関西の都市圏から地理的に近く、電車で2,3時間で行けます。それもそのはず、都に近くて山に囲まれた盆地だからこそ諜報術が発達したとも言えます。伊賀には「どんでん返し」「抜け道」「隠し戸」「刀隠し」などのからくり仕掛けを備えた忍者屋敷や博物館があります。平成の町村合併で伊賀市になってから「忍者」を観光資源に推しているようで、手裏剣投げ体験施設ができたり、忍者イベントが増えたりしています。2019年には忍者LARPも開催されたようです。また、毎年秋に開催される上野天神祭では役行者にゆかりのある「鬼行列」が行われます。その面や衣装は、だんじり会館に展示されています。

他の地方自治体と同様に、伊賀市にも観光大使のゆるキャラが存在します。個性的な風貌の「いが☆グリオ」くん。彼の活躍は、公式サイトを御覧になってください。

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https://igagurio.localinfo.jp/

デジタルミュージアム 秘蔵の国伊賀
https://trc-adeac.trc.co.jp/WJ11C0/WJJS02U/2421605100
伊賀市の資料一覧が掲載されています。特筆すべきは、忍書『万川集海』の一部を閲覧できること。忍者ファンは注目です。

甲賀の里 忍術村(滋賀県甲賀市)
忍者小説ではライバル関係にあると描写されることも多い伊賀と甲賀。実際には、隣接していることもあり、ある程度の協力関係にあったと言われます。今では伊賀市に隣接する甲賀市という地図上の関係になり、互いに忍者文化発展のために協力しています。甲賀市(旧・甲南町)にも観光地があります。忍術村には甲賀忍術博物館のほか、石垣登り、水蜘蛛、手裏剣投げなど一通りの体験が出来ます。年に1回「全日本忍者選手権大会」が開催されています。女優の高田夏帆が第31回大会に優勝したという大会です。私も20代の頃に試しで参加しましたが、身体能力が高くないので記念参加と言える程度。水上走りと水蜘蛛の競技で泥水に濡れるなど、大変でした。唯一、平均レベルの成績と言えたのが、手裏剣投げ。5投のうち2回命中したので、換算すると<投げ>技能40%でした。

東映太秦映画村(京都市)
オープンセットを利用して時代劇の世界観を再現した場所。時代劇などの衣装に扮装したり、忍者ショーを見たりできます。季節限定イベントも開催されています。屋敷や小屋や橋、仕掛け池など、いずれも撮影に使用されたことがあり、映像作品と比較するのも面白いでしょう。
基本的には映画村は観光用で、実際の撮影は隣接した敷地にある撮影所で行われます。大きな倉庫風の外観の建物に入ると、中には屋内セットが再現されています。

(追記)いわゆる朝ドラ、NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』では、ラジオ、英会話、時代劇が3大テーマとして描かれました。その第3部に登場した条映太秦映画村のモデルです。ドラマでは、1975年のオープンや、人気のお化け屋敷開設、大部屋俳優の真剣さが描かれていました。『ラストサムライ』を連想させるハリウッド映画撮影のシーンは感動。ベテラン俳優、伴虚無蔵(松重豊)の言葉「日々鍛錬し、いつ来るともわからぬ機会に備えよ」「そなたが鍛錬し培い、身につけたものはそなたのもの。一生の宝となるもの。されどその宝は、分かち与えるほどに、輝きが増すものと心得よ」は心に響く名言でした。(2022年5月1日)

◆ゲーム

ボードゲーム『超人ロック Locke the superman』(1984年、エポック社、復刻2018年、国際通信社)
 劇場アニメ『超人ロック 魔女の世紀』公開にあわせて制作されたゲーム。デザインは黒田幸弘先生。プレイヤーたちは正体を秘密にしたエスパー(非エスパーもいる)となって、Good、Evil、Specialの3陣営に分かれてそれぞれの勝利条件のためにプレイします。味方陣営で利害が対立することもあり得ます。前半の秘密を探り合う情報戦、後半の激しいバトル展開。様々なチャートとサイコロ2個で判定、特殊な勝利条件など、『シノビガミ』のデザインコンセプトに似た部分があります。冒険企画局の河嶋陶一朗先生は1990年代に京都の老舗ゲームサークルに所属していたらしいので、もしかしたら『超人ロック』を遊び込んで影響を受けたという推測もできます(真偽は不明)。私も学生時代にかなり遊びました(3年間に100回以上)。長らく絶版で入手困難であり、日本各地のゲームサークルで遊び継がれてきたり、同人版が作られたりしていました。ハウスルールがサークルの数だけ存在するとも言われます。正体隠匿系ゲームの先駆けとして、多くのゲームファンを熱中させました。単位を犠牲にした学生ゲーマーがいるという噂もあります。絶版となってから“伝説のボードゲーム”と言われていたそうですが、2018年12月に復刻されました。初見はとっつきにくいけれど、3,4回遊べばルールに慣れます。キャラクターに強さ格差があり、チーム戦でバランスを取っています。絶妙なキャラ格差が何度も遊びたくなる要因にもなっています。
私は大学TRPGサークルに参加して、説明会の後に初めて遊んだゲームがこの『超人ロック』でした(TRPGではなく)。中立属性のナガト(5レベルの強いキャラ)。倒されても復活チャートで蘇り、歴戦の先輩たちに不死と恐れられたことを覚えています。

RPG『ガープス・ルナル・カルシファード』
七つの月しろしめす大地、ルナルを舞台にしたファンタジーRPGです。友野詳先生が『ルナル・サーガ』小説シリーズを書かれています。小説24冊のうち9冊が日本をモデルにした青嵐の島カルシファードを舞台に書かれており、その熱意の入れようが分かります。日本をモデルにしているとは言え、ファンタジー世界設定の一部ですので、赤と青の八大神への信仰や緑や銀の月を信仰する異種族が和風アレンジされて登場します。いわゆるサムライをイメージする、武戦士。そして、他の大陸では傭兵や盗賊や暗殺者の三つの信仰形態をもたれる直感の神タマット信仰が、影タマットとして存在します。公式サポートは停止していますが、入手できれば遊ぶことは可能です。影タマットには外法使いという、原書でのルーン魔術を翻案したルールもあります。けれど、忍法帖のような異能力を持つには『ガープス・妖魔夜行』から制限付きで流用したほうが面白いかもしれません。

忍術バトルRPG『シノビガミ』
PvP確定の「対立型」、展開次第で陣営が変動する「特殊型」、PCたちが協力する(一般的なTRPGに近い)「協力型」という概念を生み出し、忍者の戦いをシステム的に、ドラマティックに自由演出できるようにした斬新なTRPGシステム。互いに【秘密】を探り合ったり、誰が敵か味方かわからない状況が起こり得たり、様々な忍者らしい物語をプレイできます。

ネットゲーム93『夜桜忍法帖』(遊演体)
「闇を切り裂いて、忍が走る」「行くぞ、夜桜忍法帖」という主題歌が作られたPBM(プレイ・バイ・メール)。ネットゲーム88、N90『蓬萊学園の冒険!』、N91『那由多の果てに』に続く第4弾。21世紀の今となっては信じられないかもしれませんが、1か月単位でプレイヤーが運営側と郵便を使ってやりとりし、1年間遊ぶゲームが存在しました。参加者規模は約千人(筆者の感覚)。運営とやり取りするのは1か月ごとでしたが、物語風にまとめられた行動結果用紙を受け取ってから行動宣言を提出するまでの約2週間に、仲間と情報交換し、作戦計画を相談するなど準備をいろいろ行うこともあります。仲間との連絡手段は郵便が主でしたが、電話やパソコン通信を活用するプレイヤーもいました。通信費が嵩んで「タカイワ ミカカ」というキャラ名を付けた人もいたようです。
その世界観は、現代社会の裏で「忍者」が活動している世界。PCたちは八大忍軍に分かれて情報取集し、抗争したり、忍務を行ったり、修行の旅に出たりしました。八大忍軍にそれぞれの仇敵が3忍軍設定されており、三つ巴ならぬ八つ巴とでも言う対立構造でした。第一部最後の本拠地壊滅作戦「悪魔作戦」を機に、第二部へと移行します。忍者因子に過剰適応した忍者が「魔忍」に覚醒(いわゆる闇落ち、『ダブルクロス』でいうジャーム化)して、理性を保った忍者と戦います。真偽は定かではありませんが、『シノビガミ』の六大流派は八大忍軍へのオマージュだと、私は思います。
一つ、伝統的な技術を受け継ぐ「枯葉忍軍」。頭領の枯葉微塵斎には「微塵粉」という高性能火薬が秘伝として伝えられる。二つ、自然を愛し、獣の力を使う「叫一族」。上忍クラスになると獣変化できる。三つ、騎士道精神を重んじる「シュヴァルリィ」(『シノビガミ』には無い?)。四番目は、国家機関「第2警察」。五つ、科学技術で忍法を研究する「歯車党」。悪魔作戦においては、叫一族の本拠地への人工衛星落としを敢行した。六つ、学園都市を拠点とする「光の風忍者倶楽部」。若さと臨機応変さが武器。尾道忍法「転校生」は別のPBMにも登場した。七番目は最強最悪の国際組織、長崎県の遊園地デジマーランドを拠点とする多国籍忍軍「HORRORS」。中忍以上は怪人に改造され、特撮番組の悪の秘密結社を連想させる。八つ、妖術を得意とする「卍宗」。多彩な宗教を許容する多様性ある集団。クトゥルフ神話の信者は美夜鬼を召喚して空間を移動できる。八大忍軍から抜けて、新たな組織を立ち上げることもできました。
参照不可能な作品ですが、例外的に紹介します。「NPO法人 日本PBMアーカイブス」が設立されたので、今後、これら1990年代に遊ばれたゲームの情報を得られるかもしれません。
https://jpbma.or.jp/
『レディ=スパイダー』『スクールガール=オペレーション』という小説(甲斐甲賀、富士見ファンタジア文庫)も書かれています。

 いろいろ紹介しましたが、ゲーム編は個人的趣味です。観光地は、現在の世間情勢が落ち着いたら、一度は訪れてもいいかもしれません。人の住む町は時代とともに変遷しますが、遥かに望む山並みや緑も深き場所は古い時代の面影を残していることもあります。特に田舎の風景は。戦国時代、忍者の生きた時代に想いを馳せながら観光地をブラブラするのもいいものです。

『ガープス・ルナル』より引用
戦の神、賭博と盗賊の神、犯罪者の神と三つの顔を持つタマット神。三つの顔をもつタマットもその影は一つ。その影は三つのすべてを併せ持つ存在です。