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"Googleのスプリント"をチームでトライして、爆速でユーザビリティテストまで行った話

株式会社スマートショッピングでデザイナーをしています、にーのです!

前回、「LEAN UXで行動変容が起きた話」を書きましたが、今回はチームでGoogleのスプリントをやってみたお話を書きます。
主にB向け、既存事業。ある程度やりたいことが決まっている状態で、スプリントにトライしました。

私たちのチームでは、施策〜プロトタイプまでの"スピードアップ"を目指して、5日間のGoogleスプリントを、約3日間(リモートの数時間は省略)に圧縮しました。
最終的に、スプリントは大成功で終わったのですが、そこまでに至った苦労や問題、成功要因をつらつらと。


デザインスプリントに関する所感

デザインスプリントは、新製品、サービス、または機能を市場に投入する際のリスクを減らすことを目的として、 デザイン思考をベースにした、時間制約のある5段階のプロセスである。

wiki

「Googleのスプリント」の話をする前に、いわゆる「デザインスプリント」について少し触れておきたい!
「デザインスプリント」は、私自身も本を読んだり、実際にデザインスプリントを体験するセミナーなどに参加してみたりしたんですが、「難易度が高いな〜」という感想を持っていました。

C向けをベースとしているものが多く、B向けに展開するのは難しそうだな〜とか、新規案件向けで、既存には使えないのかな?とか安易に思っていたりしました。(おそらくデザインスプリントのファシリの型がよくわからないので、設計が難しいなと感じていた。)

なかでも、ブレストのようにアイディアをたくさん出すのは、訓練を積まないと、良いアイディア自体を出せないという印象でした。最近は、ブレスト役立たない!みたいな話もありましたよね;

そんなおり、施策からプロトタイプまでのスピードを上げるため、デザインスプリントをやってみないかという提案がありました。
本家「Googleスプリント」の本が良いと聞き、読んでみたら目から鱗。なんて具体的に書いてあるんだ!!!と驚いたのを覚えています。本当に読んだらすぐ実践できるレベルで書かれています。

Googleスプリント

基本は5日かけて、目標、ターゲット、課題抽出、UXフローなど中間アウトプットをいくつかしながら、プロトタイプ作成・検証まで一直線!といった感じ。
弊社では、やりたいことが決まっていたこと、IoTの制約があるため、ところどころ端折ったり、圧縮したりしてもう少しだけ短くできました。

特徴的なのは、細かくタイムテーブルが決まっていることです。
ここではサラッと実体験を踏まえて紹介しますが、本を読んだ方がわかりやすいと思うので、ぜひ一読をオススメします!

Day1. 長期目標と、答えを出すべきクエスチョンを決定する

⏰ 10:00~
長期目標の決定と、スプリントクエスチョンの洗い出し
野心的な長期目標をチームで決めたあと、このスプリントでどんな答えを出したいか?長期目標を達成するために何が必要か?何を検証するかのクエスチョンを洗い出します。

ex. ブルーボトルの長期目標
新規顧客によいコーヒーをオンラインで届けること
スプリントクエスチョン
新規顧客を獲得するにはどんな前提が必要か

SPRINT 最速の仕事術

⏰ 11:30~
マップを作る
マップはいわゆるUXフローのようなもので、登場人物がいて、その人たちがゴールに辿り着くためのタスクを書いたものです。

登場人物が複数出てくるものも、もちろんあります

⏰ 13:00~
ランチ
ランチは腹一杯食べないのがコツだそう

⏰ 14:00~
社内の顧客に詳しい専門家にヒアリング(課題の重み付けを行う)
午前中に作った、長期目標・スプリントクエスチョン・マップを2分間で説明。マップの中でどこでつまづきそうか、問題がありそうな部分を指摘してもらいます。
下記の質問をベースに、マップを修正したり、問題が起こりそうな箇所の洗い出しを行います。ある種ペインポイントの洗い出しみたいなものに近いなぁと思ってやっていました。

「このプロジェクトを成功させるには何が必要か?」
「うちの独自の強みや機会は何か?」
「最大のリスクは?」
マップに不完全なところはないか?」
スプリントクエスチョンのリストに追加すべきことは?」

SPRINT 最速の仕事術

ヒアリングを聴きながら、チームは各自「どうすれば」から始まる言葉に変換し、メモをふせんに取ります。これはなかなかにクセ強なやり方だな〜と思いつつ、実際やってみるとすんなり書けた気がします。

ふせんの左上に「どうすれば」と書き、おもしろいことを聞いたらそれを頭の中で質問の形に変えてふせんに書く

そして作ったふせんを集め、グルーピング、タイトルをつけます、いわゆるKJ法ですね。

最後に、大きいドットシール(1人2票、決定者は4票)で、スプリントクエスチョンを読み返し、それに一番役に立ちそうな「どうすれば」に投票する(同じメモに投票してもOK)
多くの票を集めたマップの該当部分に貼っていく

SPRINT 最速の仕事術

ここで、さまざまに出てきた問題や課題の重み付けを行います。チームで投票を行うので、バラけるのかな?とも思いつつ、割と問題意識がそろっていたようで、表が集中したふせんがいくつか出てくる結果に。

⏰ 16:00~
「誰」の「どの瞬間」が一番重要か、ターゲットを決める

方法① 決定者が決定する
方法② 模擬投票を行ってから決定者が決定する(決定者がもう少し情報が欲しいときにおこなう)

SPRINT 最速の仕事術

重要な課題をマップに貼ったら、あとはこのスプリントでのターゲットと、解決するべき課題を決定します。
1日目はこれで終了です!
弊社では、すでに課題の共有などは出来ていたところからのスタートだったので、ここをリモートで終わらせました。それでも1~2時間かかったかな?

ここでの大きな反省は、ターゲットの選定がふわっと終わってしまったこと。のちのちターゲットの変更が必要になり、作るプロトタイプを大きく変更することに…。

Day2. ソリューションのアイディアを集める

⏰ 10:00~
2日目は、他社事例や似たようなサービスを調べ、その中から良いと思ったアイディアを厳選してチームに発表。色々なアイディアをボードに貼ります。

製造業向けの他社事例で、大島てるのアイディアが出たのは感心した

⏰ 12:30~
スケッチの分担を割り振り
スケッチの分担は前日に決めていたので、ここのパートを圧縮して、先にランチを食べることに。

⏰ 13:30~
スケッチをする
ランチを食べて、早速スケッチに入ることにしました。「デザインスプリント」と「Googleのスプリント」の大きな違いはこのスケッチかな〜と思います。抽象的なアイディアを具体的なソリューションに変える、ということですが、ポイントは個人に分かれてスケッチを行うということです。
これは、ブレスト型ではなく、個人個人が深く考えた方がやはりアイディアの精度が高まるそう。そんなアイディアがチームだといくつも出せるので、結果その後、アイディアを組み合わせたりするときも質の良いものになる…というのはその通りだろうな〜という実感がありました。
ただ、クレイジー8はかなりむずい。

スケッチの推奨フレームワーク
・前日のアウトプットなどから重要な情報を収集(20分)
・大まかなソリューションを走り書き(20分)
・素早くバリエーションを出す(8分)
・詳細を考える(30分~)

SPRINT 最速の仕事術

⏰ 15:00~
発表会
こうして、スケッチをそれぞれが行い、発表会を行いました。本来はここで決定者が最終決定を下すのですが、不在だったためチーム内投票のみを行う形に。

1. 前日のスケッチを貼りだす
2. 面白いと思ったスケッチのアイディアにシールを貼る(疑問があれば付箋を貼る)
3. それぞれの面白いと思った部分などを話し合う
4. 各メンバーが投票スケッチに投票(決済者は3票)

SPRINT 最速の仕事術

私のスケッチはこんな感じでした。シールをペタペタ貼っていくのは、楽しかったです。色々なアイディアがあって、どれもよかった。

青丸は、面白いと思ったところ、赤丸が最終的な投票

Day3. プロトタイプを作る対象を選ぶ

⏰ 10:00~
決定者が最終決定を下す
翌日、前日に行ったアイディアを決定者にシェアしたところ・・・。なんとわかった衝撃の事実。ターゲットユーザーが異なっていた…!(チーン)

どちらかというと、上位レイヤーのターゲットに的を絞って作られていた我々のアイディア。決定者は、それでは大きくなりすぎる、現場レベルの人をターゲットにしたいという。
土壇場でひっくり返って、結構焦りました。これはこれで、最初の事前準備の認識合わせに大きな齟齬があった証拠。反省です。

⏰ 10:30~
ストーリーボード(絵コンテ)を作成
とは言ったものの、迷っている時間はありません。現場の人のフローは、マップで確認していたので、そこを作っていくことに。弊社のIoTの制約上、ここで出来ることは限られていたので、チームで話しながらストーリーを考えます。
エンジニアの1人が、「どうしたら面白いと思ってもらえるか」という観点で話をしてくれたので、ここで非常にチームの視座が上がったなぁと感じました。

ホワイトボードにマスを作成し、顧客のテストをイメージして内容を埋めていく

ついつい癖で、前後の遷移の状態や、データのインポートなど細かいところを考えてしまう…。そのとき、「プロトタイプだから、テストの時のタッチポイントだけピンポイントに作れば良い」とバッサリ切ってもらえたのも、スピードを上げられた要因かも。

⏰ 13:00~
プロトタイプを作成する

デザイナーがFigmaを使ってプロトタイプを作成しつつ、残りのメンバーで、インタビュー設計や当日の素材準備など準備を進めました。

「5つの係」で分担して、ストーリーボードに沿って割り振る
メイカー(2人以上):画面などの作成
スティッチャー:メイカーが作った画面のつなぎこみ
ライター:画面内などの文言作成
素材集め:画像や写真などを収集
インタビュアー:テストで顧客へのインタビューの台本作成

SPRINT 最速の仕事術

⏰ 17:00~
プロトタイプの確認+練習

つなぎ合わせたプロトタイプを全員で確認。とくに文言を中心に違和感がないかをすり合わせました。また実際に本番と同じように、お客様役、ファシリ、IoTを動かす係に分かれて実演を行いました。
実際はただのハリボテなんですが、できるだけリアルに見えるように、通知の音楽を流してみたり、創意工夫…!

IoT重量計に製品を置くと、画面に通知。担当が開いて内容を確認。といったシンプルなもの

テストでは顧客からの”意見”ではなく”反応”が得たい
ラフ図やワイヤーフレームなどは顧客が力になろうと”意見”を出そうとする
本当に欲しいのは使ってもらった素の”反応”
プロトタイプは”反応”が得られるギリギリで作ることが望ましい

SPRINT 最速の仕事術

Day4. テストする

さぁ、いよいよ本番です。今回は、社内と外部のお客様含めて、3人の顧客に対しテストを実施しました。本当は5人はお願いしたいところでしたが、事前準備が及ばず・・。ここは最初にしっかり顧客を捕まえて、スケジュール組む必要あり。

1日かけて5人の顧客に対してテストを実施
インタビュー1時間+休憩30分を5セットが目安
インタビュアー以外のメンバーはインタビューのメモを取る
ホワイトボードに顧客ごとに列を作って付箋を貼っていく
付箋は「いいこと」「わるいこと」「どちらでもない」に分類分け
3人以上のパターンを見つける

SPRINT 最速の仕事術

とても良かったのは、ユーザービリティテストを兼ねているので、1人目のユーザーがわかりにくそうな部分はその場でブラッシュアップして次のユーザーに試せること。
文言は特に何度か変更を行いました。実際に当ててみると色々なことが発見できて楽しい。仕上がっている感を体感できます。

結果と振り返り

こうして終わった怒涛の約3日間。「Googleスプリント」は、「やり切った、駆け抜けた!」という心地よい疲労と、満足感がありました。

というのも、このプロトタイプを体験したお客様に、「こんなことができるなんて衝撃でした」とおっしゃっていただけたこと。
そして、スプリントクエスチョンで上がっていた、「実際、現場の運用に取り入れられるか」的な観点も、問題なくイメージができるという風に合意が得られたので、本当に使われるのか?ニーズがあるのか?の部分に関しては間違いなくある、という結果になりました。

今までIoTという特性上、実現可能性ベースの話から進めることが多かったのですが、まずは体験から考えてみるという試みは、チーム全員の方向性を揃えながら機能や画面に落とすことができると、改めて痛感しました。

また、ここで作ったデモは、内容もわかりやすいので、録画して営業に使ってもらうなど、横展開がたやすいこともメリットになると思います。

既存施策について、ここまでのボリューム感を持ってやるかについては賛否ありそうですが、UXフローとターゲットを決め、体験できるところをピンポイントで作っていくメソッドは、通常の施策フローにのせてうまくとり入れていきたいなと思いました。

「型としてチームで一回やってみる」は本当に実になるなぁと改めて。リアルでチームで集まって、モノゴトが一歩一歩進んでいる感覚を味わえることは、やっぱり楽しいですね。


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