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農園の中に美術部つくりました。

当園は2017年開園。夫の就農は2014年、妻(私)は2017年の開園と同時に出産、そこから会社勤め・育休産休と並行しながらぼちぼちと農作業をはじめ、仕事をやめて専従者となったのが2020年。仕事内容・量は年によってばらつきがありますが(つまりまだ模索中)、最近はやるべきことをこなしつつ、仕事の中でも好きなことに近づけられるように自由にやっております。今日は農園の妻サイドの働き方のはなし。

完全な分業制でもなく。農作業どっぷりでもなく。今年は農作業率低めで、おそらく手伝いにきている義母の方が作業時間もも技術もあるのではないかなという気がしているのだけど、そこに引け目を感じることなく、私は私というスタイルを保っております。幸いなことに、このあたりのフレキシブルさ新規就農ならでは、そして万物に対して寛容な義母・夫をはじめとする農園に関わる人たちのキャラによるところも大きいと思います。

事務作業=経理?と思われることも多いのだけれど、経理関係は実は夫まかせ。伝票処理、発送準備の事務連絡などは私が(も)やってますが、販売サイトやホームページ、SNSを整えたり、メール告知などの文面を考えたり。そしてフライヤーなどの印刷物、ジュースのラベルなどなどは自由に作らせてもらってます。こうやって並べて記してみると薄っぺらいな〜と思わなくもないけれど、農園がどう見えるか?あたりを整えるのがメインの仕事だと思って最近はやっております。

農家っていうけど、それは単なる自営業だし。

農園・農業と付かず離れず。最近思っているのはそういうこと。自営業の中でも農業って特殊だな〜(主にJAとか地域とかの関わりとか諸々)と思うことは多々あるのだけど、最近は「農」といい感じで距離感をとって単に自営業として農園のあれこれを捉えたいなぁと思っております。おそらくこれは夫婦共通の見解。

技術の面とか地域との関わりでは「農」を大事にしないといけないのだけど、「農家だから」という固定観念が邪魔してることも多いのも事実。ちょっと前に夫が農家系のセミナーではなくて市の商工会のセミナーを受講して以来「農」を離れて考える新鮮さに魅了されています。農家以外の人からみたら、たまたま仕事内容が「りんごをつくって売っている」だけ。製造業やメーカーと変わらないのかもしれない。

そういうのもあって、あとは農業系の集いになんとなく触手が伸びなくなってきた自分もおり(このあたりは折を見て深掘りしようと思います。)、ならば好きなことをしてしまえ〜というのが今です。

仕事で公私混同してみる

これは諸説ありますが、自営業のいいところは公私混同できるところでもあると思います。特に当園は法人ではないので、完全に中の人=農園夫婦というわかりやすい形で、おそらく私たちとコミュニケーションを積み重ねる中で買ってくださるお客様も多い。キャラを出しても差し支え無さそうという判断です。妻の方、ハンドメイドなどの制作系、イラストやらデザイン系、素人でしかないけれど好きなのです。好きなことを迷惑のない範囲で仕事に取り入れるのは別に悪いことではないはず。それが仕事に直結するかどうかはさておき、とりあえず好きなことと仕事との接点を探すことは無駄ではないはず。例えば普段書いている絵日記で農園紹介をやってみることとか。


絵日記として描いたものをそのまま商品に同梱することもあります。

とりあえず「美術部」を名乗ってみる。

あとは、別に今までと大きく仕事内容が変わったわけでもないのだけど、定義づけって大事かも、ネーミングって大事かもと思いました。で、今までやってきた作る系の仕事を「美術部」の仕事ということにして、農園の美術部を名乗ることにしました。ちなみに、義母は手芸(主にソーイング)を嗜むので、手芸部もあるようなものです。

「美術部」と名乗ってみたことと、そもそも販売しやすいりんごジュースを商材として持っていたので(しかもデザインは美術部がやっている!)、なんだかやってみたいなぁと思っていたマルシェにも出てみることにしました。農産物のマルシェではなく、住んでいる地域のハンドメイド作家さんとかおいしいお菓子とかキッチンカーが出店するようなクラフトマルシェ。

これが今年の変化です。趣味のハンドメイドでいずれそういうのにチャレンジしてみたい……という願望と、でもハードル高そうだしな……という諦めも、とりあえず農園名義でジュースを持っていくのだからという大義名分が後押ししてくれました。(クラフト作品が売れなくてもジュース販売の機会が増える!と思えばなんとかなる!という開き直り!!)
別にジュースを売るだけなら今までも都会のマルシェ、農系のイベントには出たことあったし新しいことではない。けれど近場の、自分もお客さんとして足を運んだことのあるマルシェに出店するという決断はきっと「美術部」がなければできていなかった気がする。

農園としては統一感なさすぎ!と思うこともありつつ、マルシェ経験はとにかく新鮮。まだ2回しか出ていないし(もうすぐ3回目を控えている)、課題もたくさんなのだけど、まずは出店者同士の繋がりのありがたさ、情熱たるや……。単にイベントとしても楽しい(仕事を忘れて)。
そして、「食と農」「農産物」目当てで来ている人はほとんどいないため、一商品としてフラットに眺めてもらえるのも勉強になる。見せ方、伝え方、売り方……。そういう場での出会いが次に繋がること、農園きっかけではなくて「インスタでこういう投稿をしていたの、実は農家さんだったんですね」という声をかけてもらったり、マルシェはとにかくいろんな出会いと発見の宝庫でした。

今後のこと(農業専従者の働き方って)……

美術部をつくってみて面白い1歩が踏み出せたのは事実。やる気が出たし、もっとできることもあるはず!と勇気をもらったのも事実。けれど、いち自営業者として(農園として)経営のことを考えてきちんと利益を出さなければいけないのも事実。自己満足で終わっていてはいけないのだなぁ。そもそも広報ってそれ単体で利益への貢献度を見える化できるものではないのだけど、過剰なまでに時間と労力を割いて(つまりそれは農作業の時間を削ってしまうことにも繋がる)取り組むものでもないわけで。仕事の中での自己肯定感と、そういった諸現実との間でやっぱり揺れ続けているのも事実。

仕事のバランスを模索しつつ、ちょっとだけ農園から独立した私(農園の妻の方)の仕事も増やしていきたいものだなぁと思っております。りんごジュースきっかけで出店したマルシェ、ハンドメイド品もぼちぼち利益を出す形を目指して販売していきたいし、ジュースラベルでやっているようなデザイン系の仕事も受けられるようになりたいもの。やりたいことはやればいいし、無謀なことでも目指すのは自由。別に何足でも草鞋を履いていいのが最近の時代の流れというもの。農作業を含む農家の仕事も好きだけど、他の草鞋も編み始めてみようかと模索する今日この頃です。


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