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#37 声を出すのはどうして?

NPO法人にいまーるの理事・臼井です。
にいまーるは、障害福祉サービス事業を中心に手話普及活動も行なっている団体であり、ろう者と聴者が一緒に働く職場です。
障害福祉サービスの利用者は全員耳が聴こえません。
しかし、スタッフの比率は、ろう者2割:聴者8割と、聴者が多いので、双方の文化の違いが垣間見え、時には食い違うことも多々あります。
そんな職場から生まれ出る、聴者とろう者が共に仕事をする中での気づきを連載していきます。
今回は、「声」について書いていきます。

人恋しいとき、声を聞きたくなる。
この音楽を聴くと、かつて好きだったあの人の声を思い出す。

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私にとって「」は「音のひとつ」であり、未知の世界でもあります。

目の前の人が発している「声」はどんなものだろう。
あの人の「声」はどんな感じなんだろう。
という具合に、いまいち実感しづらいものであり、
音楽とはまた違った不思議な得体の知れない存在でもあります。

男っぽい声だね。
可愛い声だね。
思っていたより低い声だね。
・・・・・・

どれも、私が今まで言われたことがある台詞です。
その度に「一体どういう声なのだろう」と不思議で仕方ありませんでした。

ファッションのように、煌びやかとか地味でおとなしそうとか、見た目でなんとなく分かるものではない「声」。

ろう者の中でも、残存聴力がある方は声での会話が可能です。

一方で、私のように全く聴力がない人もいます。相手の声が聞こえないので、声での会話はできません。にもかかわらず、私のようなろう者に対して、「声」で話してくる人がいます

手話ができなかったり(知らなかったり)、どのように話したらいいか分からない人ならともかく、手話ができる人でも何故か、声で話してくる場合があります。

「今、発しているあなたの声、私は聞こえないの」と申し訳なく思う時もあるけれど、私の耳に届いていないと分かっていながらも「声」を出す理由は何だろう、と不思議でなりません。

それを周囲の人たちに聞いてみました。

「声を出すことによって自分の考えをまとめられる」
「私とあなた以外の他の人が会話に参加できないと困るから」
「自分の声に惚れているから」

と、いろいろな回答がありました。

「声」を出すことを強いられてきた立場と、
「声」を発することが当たり前な立場

それぞれが捉える「声」は、本当にさまざまなことを考えさせてくれます。

そして、私がこれまで生きてきた中でいまだに不可解なものが「声を聞いただけで、誰なのかすぐに分かる」。

一体、どうやって?


(つづく)

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文:臼井千恵
Twitter:@chie_fukurou
Facebook:@chie.usui.58

編集:横田大輔
Twitter:@chan____dai

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