見出し画像

#62 高齢のろう者を支援する

にいまーるは、障害福祉サービス事業を中心に手話普及活動も行なっている団体であり、ろう者と聴者が一緒に働く職場です。また、障害福祉サービスの利用者は全員耳が聴こえません。
しかし、スタッフの比率は、ろう者2割:聴者8割と、聴者が多いので、双方の文化の違いが垣間見え、時には食い違うことも多々あります。
そんな職場から生まれ出る、聴者とろう者が共に仕事をする中での気づきを連載していきます。
今回は、スタッフの気づきを紹介します。

5月31日に生活支援部の課外活動の一環として、利用者4名と職員で木下大サーカスを見に行ってきました。玉乗り、象やポニーのかわいらしいショー、はらはらどきどきの猛獣ショー、アクロバットバイク、空中ブランコなど様々な演目が休む間もなく繰り広げられ、あっという間の2時間でした。

実は今回のサーカス、始めに皆さんをお誘いしたときは、「いや~遠慮しとくよ」と口を揃えて仰っていました。
せっかくの機会だからと説得。そこまで言うなら「しかたない」と重い腰をあげて参加してくださいました。

しかし、実際ショーが始まるとどうでしょうか。「すごいね」「きゃー」「あぶない!」「どうなってるの?!」・・・最後まで歓声(手話なので静かですが)をあげながら楽しまれていました。
また、いつも手楽来家では補聴器をつけていない利用者の方。自宅でのみ補聴器を使っているそうです。自宅での音量は4、サーカスに来たときは音量レベル1でも大きすぎるくらい。言葉としては聞き取れないものの、とても大きな音が流れていると驚いていました

さらに、ある利用者の方は、動物のショーに興味津々。どうやって動物に指示をしているの?声は使っている?話しているのは日本語?外国語?など職員に都度質問されていました。
また、次々変わる演目の道具の片付け方や装置の設定など裏方にも目を向けるなど、皆さん様々な気づきがあったようです。

手楽来家では普段の施設内での活動に加え、余暇支援や社会学習を目的に年に数回課外活動を行っています。その際大切にしていることは、事前準備終えた後の感情感想の共有です。

どんなところへ行くのか、スケジュール、持ち物、注意事項など皆さんがわかるまで説明し、理解した上で参加して頂いています。使う手話も、これまでの経験や理解力も皆さん様々。分かる言葉で、ご自身の知識や経験と結びつけて理解できるように気を配っています。普段の生活では聞こえないことで情報量が不足しがちですが、必要な情報が納得のいく形で得られることでより主体的に参加できると思います。

また、活動後は感想やその時の気持ちについて自分の言葉で話し、体験や感情を共有することも大切にしています。体験や感情の共有により、安心感や自己肯定感が得られ、より良い関係作りにつながると考えています。

今回参加したのは皆さんご高齢の方。
どんなトレーニングをしているの?あの演目はすごかった、以前見たときとは全然違う、などと会話に花が咲きます。
そんな会話の端々に、寒くない?トイレは?熱中症にならないように水分をとって、と声を掛け合ったり、手をさすったりと互いを気遣う様子が見られました。

年齢を重ねると共に体に不調や衰えを感じると日々お話を聞きます。
そんな不安と隣り合わせの日常でも、手話で気兼ねなく笑い合ったり語り合ったりできる手楽来家を皆さんともて大切にされています。そして、幼少期からお互いを知る皆さんには、他の高齢者施設には無い、強い絆があります。

お互いを支えあうことが励みとなるような働きかけをしていきたい、手楽来家で年を重ねることを共に喜べるような関係作りのお手伝いをしたい、そう気持ちを新たにしました。



▼ お問合せはこちらから ▼


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?