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#63 音のないラジオ体操

ろう高齢者、若者たちが集う就労継続支援B型 手楽来家では、毎朝、ラジオ体操を行なっています。
最近手楽来家で働き始めたばかりの聴者のスタッフが不思議そうな顔をしていたので理由を聞いてみると「音がなくて何か変な感じ」とのことでしたので、今回はこのテーマで書いてみました。

近年はあまり公園で見かけなくなったラジオ体操。
調べてみると1928年に始まり、国民の健康促進と共に社会的な団結をもたらす役割として導入されたそうです。
朝や昼休みなどに集団で体操を行う日本の伝統的な運動として、音楽に合わせて多くの人々が同じ動きをすることで、一体感や統一感を感じることができる運動になっています。

手楽来家では、一日の作業を始める前の習慣として利用者さんが前に出て体操をしています。以前は音楽を流していましたが、ろう者の多い施設なので「音楽を流す意味はあるのだろうか」と協議した結果、音楽をやめて利用者さんに進行を任せてみようということになりました。
その結果、音のないラジオ体操が毎日行われています。

多少動きにばらつきはありますが、ラジオ体操としてのプログラムは全体としてそれなりに進められています。次の動きはこれ、次はこれ、というような具体的な指示はしておらず、利用者さん自身が学校で身につけた体操をそのまま行なっています。

聴者にとっては音楽がないままだと不安になるそうで、「次の動きのイメージができない」と言われた時は、ろう者の私としては大変衝撃的でした。(1、2、3…8まで数えてリズムをとり、次の動きはそのまま身体が覚えているので音がなくても問題ないと思っていました。)

ラジオ体操のように、聴者にとって無意識に聞こえている「音」がなくなることで、ろう者が普段感じている世界観に触れることができるかもしれません。

みなさんの周りにある「音」で、無意識に聞こえているものは何でしょうか。



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