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#59 話し中の「〇〇さーん(声)」

こんにちは。にいまーるの谷上です。

皆さんは、ドラマ「silent」や「星降る夜に」をご覧になったでしょうか?私は、「silent」の中の、聴覚障害を持つ主人公がお皿の割れた音に気付かず、一緒にいた聴者もそれをわざわざ伝えなかったという場面が印象に残っています。聞こえる世界と聞こえない世界をリアルに描いているため、毎週見入ってしまいました。

ドラマを見ている中で、職場での体験と結びつく気づきがあったので、書いてみたいと思います。

皆さんはこんな場面に心当たりはないでしょうか?

ろう者とお話し中、ふいに「〇〇さーん」と離れたところから声で呼ばれ、「なになに?」と声の方向へ。用が終わって、話し途中だったろう者のところへ「ごめんごめん」と戻っていく。あるいは、用事が長引いて戻るのを忘れた…なんてことも。

ろう者と聴者が一緒にいる場ではよく見られる光景だと思います。実際に私自身も何度も経験した場面です。しかしこの場面で、ろう者に情報は届いているでしょうか?

話していた相手が急に視線を外し、どこかへ。「え、話の途中だったのに…あぁ、あの人に呼ばれたのかな?なんか急用?でもそれにしてはなんか楽しそう?」。呼ぶ声が聞こえなければ、ろう者はこうして想像して察していると思います。

聴者同士で話している時にも、遠くから呼ばれることは往々にしてあります。ですが、呼ぶ声は2人とも聞こえるので、「あ、呼ばれたから行ってくるね」とわざわざ伝えなくとも、暗黙の了解が成立するのです。

先の例に戻ると、聴者だけに呼ぶ声が聞こえているというのは、ろう者と聴者の間で、「〇〇さんに呼ばれた」という情報に差が生まれているということになります。

このように考えるようになってから、私は普段から相手との情報格差を生まないように意識しています。情報を共有できれば、お互いに状況を見て判断できますし、聴者自身も周りの音声を気にしながら会話を続ける必要もありません。

なので私は、ろう者と話し中に遠くから声で呼ばれれば、「今、〇〇さんに呼ばれました」と情報を伝えます。もちろん「お皿が割れた音」も。

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文:谷上 樹


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