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米国短期留学で日本語が上達して帰ってきた中国人留学生の、可笑しいけど笑えない話

東京都のオンラインマスタークラス「日本語のタネ」の糸川優です。
複数の大学で、日本語教育、キャリア支援、日本人のアカデミックライティングなども担当しています。

東京のある大学で、通年の必修日本語クラスを履修している、中国人留学生のA君。
秋に会ったら、なんだか日本語が上達した模様。
2回ほど授業が終わったところで、「日本語、上手になったね」と言ったところ、「夏休みに、アメリカに短期留学に行った」というのです。
アメリカ…?

よくよく聞いてみると…。短期留学に行った先で、中国人学生がいなかったのだそうです。A君の落胆が目に見えるようです。それで、日本に留学しているA君としては、必然的に、日本人学生と行動をともにしていたようでした。一時期、日本語だけで過ごすことが、かなり苦痛だったようですが、そのつらさを乗り越えて、英語ならぬ、日本語が上達して帰ってきたというわけです。英語はさほど効果がなかったとか。笑っていいのかどうか、よくわからない話でしたが、日本語担当の私としては、喜ばしいことでした。

けれども、本当は、アメリカに行って日本語漬けにならずとも、それは、日本でもできることです。日本の大学にいて、周囲は日本人学生ばかり、どこに行っても、いるのは日本人なのですから。
ここなのです、留学生の問題は。
せっかく、留学しても、同じ国の人と、母語で喋っているのでは、団体旅行で海外に行くのと変わりがありません。もったいないことです。
留学生率が全学生の半分ほどになる大学で教えていたこともありますが、皆、やはり同じ国の人と群れていました。インド人はインド人と、モンゴル人はモンゴル人と、ウズベキスタン人はウズベキスタン人と、という具合です。

日本に留学したからには、日本人と親密な人間関係を構築し、日本人の考え方や感じ方を知るようになって欲しいものです。おじいさん・おばあさんになった時に、日本にいる日本人の友人とメールがやり取りできたら楽しいと思わない?とよく言うのですが、頷きはするものの、結局、易きに流れてしまうのですね。

大学の外へ出て、普通の日本人の中に留学生を突っ込むような企画を考えているところです。
最初のお膳立てはしなくちゃならないだろうな。

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