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休むために働くドイツ人と働くために休む日本人

ドイツが日本を抜いて、GDPで世界3位になったことについて、働き方が違うというニュースを読みました。

クイズノックの伊沢さんがコメンテーターで出てる!
というのは、おいておいて、いくつか補足したいと思います。


交通機関でストライキ! 会社の反応は?

ドイツの会社は「労働者(労働組合)」が強いのが特徴です。

TBS News DIG 23ジャーナリスト 片山薫 記者

そう、だからしょっちゅう公共交通機関がストライキをしている!!!!
ルフトハンザ航空も、ドイツ国鉄も、バスも市電も!!!
8、9年前だけど、幼稚園連合もストをして、幼稚園が3週間閉まったことがある。

ものすごい不便!
利用者視点で見れば、労働者が強いというのはいいことじゃない。
でも、利用者だって現労働者であり、元労働者であり、未来の労働者だ。

多分日本と違うのは、ストで通勤できなかったら、
「じゃあ、しょうがないね」
となるところだと思う。
日本だと、電車の遅延でも
「そういうことを想定して、早く出るべき」
という話になるだろう。
(私が働いていた20年前くらいまではそうだった)

子どもの病気のための休みもある

これはストライキだけじゃない。
体調が悪くて仕事に行けないのも、
「じゃあ、しょうがないね」(来られて、うつされてもやだしね)
で、自己管理が悪いなんて言われない。

子どもの具合が悪くて休まざるを得ない場合も、自分の有給休暇、疾病休業とは別に片親ずつ年間10日の休業がある。
多分、日本が変わらなきゃいけないとしたら、制度の充実もそうだけど、「情けは人のためならず」(自分のためだ!)
と思って、休む人を大目に見ることだと思う。

ただ、もちろんこれには弊害があって、ゆるくするということは、利用者に跳ね返ってくる。
電車は時間通り運行しないし、お店は閉店時間10分前には入店できなかったり、電気を消されたり、早くしてとせかされたりする。


労働時間は残業含め1日10時間まで!

働き方は基本的に1日8時間で、残業しないのが基本。より効率的に働いていると考えられます。

TBS News DIG23ャーナリスト 片山薫 記者

1日8時間だと週40時間になっちゃうけど、そんなに働いてない!

ドイツの2022年の週の労働時間は、34,7時間で欧州平均37時間を下回る。

出典:Destatis(ドイツ語)
https://www.destatis.de/DE/Themen/Arbeit/Arbeitsmarkt/Qualitaet-Arbeit/Dimension-3/woechentliche-arbeitszeitl.html

このサイトによると、欧州内はオランダが一番少なく31.3時間、続いてデンマーク34.1時間、ノルウェー34.2時間で、ドイツは4番目に労働時間が少ない。

欧州の平均を挙げているのは、東ヨーロッパの国々。
40時間を超えるのは、ルーマニア(40.1時間)、ポーランド、ブルガリア(40,2時間)、ギリシャ(41時間)、セルビア(43,2時間)だけ。

しかも、残業を含めて1日10時間と決まっている。
但し、管理職はこの範囲外。
つまり、日本みたいに上司が帰らないと部下が帰れないみたいなことは起きない。
平社員から帰っていく。
お給料の金額からしたら、当たり前のことなのにね。
金融街フランクフルトも夜10時でもポツポツ電気がついているビルはある。
でも、日本みたいにどのフロアも煌々とついてるなんてことはない。

残業については厳しくて、もう15年以上前になるけど、任天堂は毎年巨額の罰金を払わされていた!
日本の感覚で働かされていたのかしらん。
「テスター」(動作確認のテストする人)も当時時給5ユーロだったけど、改善されたのかなあ。



通勤時間が短い

これは大きい違いだと思う。
普通は30分程度。
1時間もかけて通う人はあまりない。
知り合いで、片道1時間かける人を知ってるけど、100キロ離れたところに住んでるw

日本では100キロを1時間で移動できない!
旅行の計画をするとき、日本の感覚を忘れていて、東京から熱海まで100キロだから1時間と思ってたけど、3時間くらいかかったw

ドイツでなぜ可能かというと、町が大きくないからだと思う。
首都ベルリンでさえ、340万人。
100万人を超えるのは、あとハンブルク180万人と、ミュンヘン130万人の2都市だけ。

日本みたいに東京だけで1200万、通勤可能な周辺地域を入れると4400万人!みたいなこともない。
町を出れば森や畑が広がって、1つ1つの町は独立している。
東京から大阪まで新幹線に乗ったシラク元仏大統領が
「東京は大きいんですね!」
と言ったそうだけど、町がつながってるって光景がないんだろうね、フランスにも。

なぜ分散化できているかといえば、日本のように山岳地帯がないからもあるだろうけど、「なんでもかんでも東京!」みたいな考えがないから。
首都はベルリン、港湾はハンブルク、商業のミュンヘン、メディアのケルン、金融と空港(ドイツの中央だから?)のフランクフルト、産業のシュトゥットガルトなど、専門範囲が違う。

ドイツでは最高裁判所だってカールスルーエにある。
首都にある必要ないよね?

ただ、これらはドイツが連邦国家であることに紐づいているんだと思う。
歴史を遡れば、ドイツは元々プロイセン、バイエルン、ザクセンなどの王国や小公国で、それぞれの町が大きかった。
1600年から中心の江戸=東京とは異なるんだろう。

でも、それならば、意図的に地方活性化に力を入れればいいと素人は思うけどね。

ともかく、フレックスタイム制のところもまああるし、コロナのおかげで、自宅勤務も増えた。
とにかく通勤時間は日本よりずーっと少ないから、生活に余裕が出る。

街中に夕食に行けば、誰一人として仕事着で同僚とごはんなんて食べてない。
一旦家に帰って着替えてから、友だちと会う。
平日スポーツをしたり、趣味の時間をとることも可能。
「日本人は通勤電車で居眠りするのは本当か」とよく尋ねられるけど、ドイツでそんな人はいないから、みんな「そうだ」というと、すごくびっくりするw


ドイツ人は休むために働く、日本人は働くために休む

ドイツ人の多くは「休むために働く」感覚なんです。
ドイツには「閉店法」というものがあって、日曜日はレストラン以外のお店は営業してはいけないんです。そのため、日曜日はショッピングなどができないため、逆にしっかり休みます。

TBS News Digドイツ公共放送東京支局 プロデューサー マライ・メントラインさん

日本語を教えることで、日本とドイツの文化の違いがすごく見えることがある。
例えば「休み」はドイツ語で、Ausruhen(休息、安静)、Pause(休憩)、Krankmeldung(病欠)、Abwesenheit(欠席)、Wochenende(週末)、Feiertag(祝日)、Ruhetag(商店の休業日)、Ferien(学校の休み)、Urlaub(有給休暇、バカンス)と、それぞれ分かれている。

もちろん日本語にそれぞれの訳語はあるけど、
「今日は休みです」
というと、病気なのか、旅行なのか、夏休みなのか日曜日なのか、全く分からない!!!
御恩と奉公の時代から、日本の働き方はオンとオフしかなかったんだろう。
理由は何であれ、働くか(勉強するか)、しないかの二択!

ドイツでは違う。
病気の休みと週末と、有休は違う!

ドイツの会社の多くは1年間の有給休暇の計画を1月にする。
「一年の計は元旦にあり」ならぬ「一年の旅行計画は正月にあり!」だ。
ルフトハンザ航空では、前年の秋に希望を出すという!

まあ30日も有休があると、週末を入れて6週間にもなるし、2,3週間連続で取るのが普通だから、部内で調整をしないとならないのも当たり前のこと。
もちろん、諸事情で計画がずれることもあるけど、1年に1回でもどかんと休みがとれるなら、がんばって働こう!って思えるよね。

働き方とリストラ、マイスター制度

人件費をコストカットの対象としており、非正規雇用が増えているというのもその証です。

23ジャーナリスト 片山薫 記者

これは日本についてのコメントだったけど、ドイツでも人件費カット、リストラはしょっちゅう行われている。
派遣の人も少なくない。
高学歴の人はお給料が高いから、仕事がなかなか見つからず、「大学は出ていません」と学歴詐称して入社した人がいるってのも聞いたことがある。

決してドイツも潤沢な就業先があるわけじゃない。
ドイツに嫌気がさして、医者や研究者がアメリカに行くというのもよく聞く。
(最近ドイツは東ヨーロッパ出身のお医者さんが多い!)

ドイツの「職業訓練制度(Ausbildung)」はいいと思う。
2~3年、セオリーを学びつつ、実習を行うことで、「美容師」とか「銀行員(テラー)」とか「保育士」「看護師」とかになれる。
医療系、IT系、職人系など、330種類もあるそうだ。
この間アルバイト程度のお給料も出る!

さらに実績をつんだあと研修して、試験を受ければ「マイスター」になれる。
もしリストラ対象になってしまったとしても、ちゃんとした訓練を受けて終了していれば、同じ業界での転職は何才でも可能だ。
無駄に3流大学に行って、何1つ学んでないより、よっぽど実になる制度だと思う。


効率的な働き方とは? 日本が捨てないとならない「無駄」??

日本の某一流ホテルで働いていた人で、ドイツの一流ホテルに企業交流で転勤になって、ドイツのやり方が気に入って、日本のホテルを辞めてドイツで就職した人を知ってるけど、その人が
「私が今してる仕事、日本では30人のチームだったんです。
でも、ここでは5人なんです。」
と言っていたのが印象的だった。

同じ規模の同じような仕事で、日本では6倍かかる。
だから、人件費だってたくさん払えないよね、そりゃそうだ。

メールの書き方1つ取っても、違う。
取引先に、請求書を添付しますというのを伝えたいなら、

Hallo Herr Mustermann,     こんにちは、ムスターマンさん

anbei sende ich die Rechnung.  請求書を送ります。
Danke!             どうも!

Mit freundlichen Grüßen     よろしくお願いします(敬具的な定型句)
Michael Schmidt        ミヒャエル シュミット

これで終わり!
日本なら前後にあと3行ずつくらい書かないといけない。

商品の包装だって、個包装なんてもんはない!
大きい袋にどかっと入っている。
そうやって1つを1つをなんかにくるまないとならないから、時間がかかるんだと思う。

「何をいうか」(中身は何か)が大切なドイツと、「どういうか」(中身はないかも?)が大切な日本の違い。
無駄な会議なんてない。

例えば、スーパーだってびっくりするほど少人数で回してる。
レジでお客さんが並んでても、別に。
この商品はどこですか、とお店で聞くと、
「私は担当じゃないので分かりません」
これについてはどうなっていますかと、取引先に聞くと、
「担当がバカンスに行っているので、分かりません」

ドイツに来た当初は、「引継ぎしないで、旅行とはけしからん!」と思ってたけど、ドイツ化していくと、
「ああ、バカンスじゃしょうがないですね~」ってw
ただ、日本の会社とドイツの会社の狭間で働くと、日本の会社にそのまま「バカンスだから分からないそうです!」
って言えないから、つらいとこだけどね。

上述したけど、ゆるい社会は利用者に跳ね返ってくる。みんなが、
「バカンスならしょうがないね」
「担当者じゃないならしょうがないね」
って思えるなら、ドイツの働き方はすごく楽でいい。
私は日本で機械みたいに働くより、ドイツで人間らしく生きる方が好きです。

でも、きっと日本を日本たらししめているのは「無駄」ともいえる部分なんだろうと思うので、切り捨てて別の国になることはできないだろう。
何事も表裏一体なのだから・・・


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