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総道コラム5月

~野に咲く花に学ぶ~
いよいよ風薫る五月となりました。
日差しも柔らかくなり 、花々があちらこちらで彩りを増し 、その薫りに心が躍ります とはいえ 永い冬を越して尚 まだ何かしら トンネルの中を潜り抜けられていないよう な不安に駆られて、 お過ごしの方も多いことでしょう。
一年を経て尚 、恐ろしい感染症の猛威は収まるどころか 以前 その力は増している 様子に いつまでこの暮らしが続くのかと心迷う日々かとお察しいたします。
ですが 時は「春」
四季折々の美しさを楽しめるこの国においても、 より一層美しい季節を迎えました この非常事態においてこそ、 自然の美しさに心を添わせ 心の豊かさを取り戻して いただきたいのです
立場上 普段から花を活けたり、 花束をいただいたりする機会も多く 様々な美しい 花に囲まれてきた私ですが、 最近 目がいくのは 路傍にそっと咲く小さな花や 山間にひっそりと咲く野の花たちに心がトキメクのです。 街の花屋さんの店先で華麗に咲く豪華な花には勿論 目を奪われますが、
最近は なぜかしら 自然の中に溶け込んでいる小さな優しい花々たちを愛おしく 感じるのです。
そうした花たちは、 決して自己主張するのではなく 周りに調和するかのごとく 「さりげなく しかし確かな存在感」を放ちつつ 命を輝かせているのです 茶室の茶花も 静寂と共に さりげなく、「美」を添え 集う人たちに心の癒しを もたらすものです。
茶花(ちゃばな)とは 茶室の床(とこ)に生ける花のこと 「花は野にあるように」と千利休の教えにあるように 、生け花のような演出の美ではなく 花入れに自然の中に咲いている本来の姿のように生ける「投げ入れ」をします 茶花は四季折々の自然の風景や移ろいを表現しながらも、 茶会の趣向や茶席の雰囲 氣との調和も考えて選びます。
茶室において唯一の命あるものが茶花です。
ごく自然な姿こそを尊び 見る人に命や時の流れについて考えさせたり、 自然に宿る 風情や季節感と自然美を茶室に伝えてくれるものです。
外出もままならない今、 加えてとびきり心地よい季節の今・・・そうした「不自由の中」に 居ると 余計に、 「自然の美」に心が向かうのかもしれません。
先日 、あるお祝いの席でのセレモニーで お茶を点てさせていただきました。

御園棚によるお点前で お茶のたしなみがなくても 楽しんでいただけるものでしたが 、順番をお待ちいただく方々の誰一人として 畳にお座りにならず 立ったままお待ちに なっておられました。
ましてや 誰一人として 、その場の掛け軸や挿した花やお道具に目を向けることもなく 私としては なんとも寂しい想いをしたものでした。
自然のさりげない美や趣(おもむき)を感じ取るには「心の余裕」つまり「ゆとり」なくして 、感じることはできないものです。
作法(人と人とのおつきあいの原点)は 「人への想い遣り」だと 日本道では学びます。 ですが、 学びを深めていけば 加えて「自然への想い遣り」も大切だと氣づくはずです 。現代文明の在り方に一石を投じたといわれる世界に拡がるパンデミックの渦の中で 今 大切にしたいこと、今できること
そうした反省と共に、 心の底から学びとったことを 「行動」することが大切なのです 。今 自分の置かれた場所で 自分にできることを真摯に励むこと
それが 野に咲く花に学ぶ姿勢ではないでしょうか、 日本道で学ぶ者としての在り方 即ち
「周りと調和しつつ さりげなく咲く しかし確かな存在感を放つ姿」として・・・

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