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高齢者の運転をめぐるこの国の「狂気」

     このnoteでは、池袋での高齢者の運転によるプリウスの事故について、「プリウス」というクルマ、そして「高齢者」の運転という両方の問題について何度も書いて来たが、ついにこんな事態になったらしい。

  東京都は高齢者が買う「アクセルとブレーキの踏み間違い」防止措置に9割の補助を出し、政府は政府で高齢者には踏み間違い防止などの安全装置の付いたクルマ以外は運転させない免許をつくろう、という話なのだが、ちょっと待ってほしい。

  詳しくは上の記事でも紹介したデータを見てほしいのだが、『日本の交通死亡事故に占める75歳以上の高齢者の運転による割合は全体の12.9%』。そして、その『高齢者が起こす死亡事故の原因で「アクセルとブレーキの踏み間違い」が占める割合はたった6.2%』しかないのだ。

   このデータから計算すれば、防止機能のついた車を高齢運転者に義務付けて、高齢者の「アクセルとブレーキの踏み間違い」をもし0にしても12.9%の6.2%減、つまりは日本の交通死亡事故は0.79%しか減らないのだ。

    勿論、悲惨な交通事故死を減らすことは重要だが、マスコミが大騒ぎし、国や都がわざわざ対策として打ち出したものがたった1%も交通事故死を減らせないとしたら、それよりももっと有効な対策を考えるべきだし、その対策も税金を使うのも間違いと言うしかない。

   言うまでもなく、衝突防止や誤発進抑制などの安全装置がついたクルマが交通事故の防止に役立つのは明らかだし、それを政府が推進するのも間違いではない。ただ、それを死亡事故を起こす運転者の12.9%に過ぎない高齢者だけに義務付けるのは間違いだし、単純に自動車メーカーにこれから発売するクルマには全車安全装置の設置を義務付ければいいだけの話なのだ。

     そもそも交通死亡事故を起こす割合は残りの87.1%の年代の方が多いのだからこれは不公平としか言いようがないし、今も色々と問題になっている「年金」暮らしのせいで経済的余裕がなく、古いクルマに乗っていることが多い高齢者だけに安全装置の付いたクルマへの買い換えを迫るなど、“高齢者いじめ”と言うしかない。

   勘繰った見方をすれば、いつまでも古いクルマに乗っている高齢者に無理矢理にでもクルマを買い換えさせれば自動車メーカーは喜ぶし、それこそ安倍政権は交通事故死対策よりも景気対策ぐらいに考えているのかもだが、もしそうだとすれば余計に許されない話だろう。

    こういう誤った政策を決めようとしている政府や都だけではなく、勿論、マスコミも悪い。そもそもマスコミが連日、高齢者の交通事故ばかりを取り上げ、「高齢者の交通事故が増えています」と報道するからこんな事になったのだから。

    こちらも上で紹介したnoteの記事を参照してほしいのだが、実際は『交通事故を起こすことが多いのは20代、40代、30代、60代の運転手の順で、70代、80代の高齢者は年齢層でいえば逆に少ない。死亡事故の件数でも多いのは40代、20代、50代、60代の順で、70代や80代の高齢者の運転手は逆に死亡事故の件数が少ない年齢層(免許保有者10万人当たりで見ても、80代は、圧倒的に多い10代、20代に続いて3位。60代、70代の運転手も30代~50代とほぼ同じ。死亡事故の件数も、80代は増えるが10代とほぼ同じで、60代や70代の高齢者も他の年代とほぼ変わらない)。

    こういうデータを見ても、「高齢者の交通事故が多い」とか、「高齢者の交通事故が増えている」というマスコミの報道は間違いなのだ。

  勿論、この国では高齢化で高齢者の数自体が増えているせいで、高齢運転手による死亡事故の件数や死亡事故に占める割合も徐々に増えて来てはいたのだが、実はそれも上のグラフで判るように、ここ数年は減少に転じているぐらいなのだ。

 では、なぜこんな誤ったマスコミ報道がされるのだろうか。

    去年の数字で言えば、1日に日本中で起きる交通事故は約1179件、死亡事故でも1日あたり9.67人……これだけの交通事故が日本中で日々、起きているのに、私たちがTVや新聞の報道で目にするのは極々、一部。逆に言えば、この膨大な数の交通事故の中に高齢者の運転による交通事故が含まれているのは当たり前なのだ。  

   今のTVや新聞、マスコミはそれだけを取り出し、毎日、「今日も高齢者の交通事故が起きました」、「また高齢者の運転するクルマで悲惨な交通事故がありました」…云々、と伝えているだけ。

    嘘だと思うのならば、よく思い出してほしい。2年前、東名であおり運転によって子どもの両親が亡くなる悲惨な事故があった時は、毎日、あおり運転のニュースを伝え、13年前、福岡で飲酒運転によって子ども3人が亡くなった時には連日、「今日も日本各地で飲酒運転による事故が…」とTVや新聞は伝えていてなかっただろうか。

    その「あおり運転」や「飲酒運転」の報道がすっかり姿を消したと思ったら、今は話題性のある「高齢者の運転」が連日、槍玉に上がっているだけだし、これはTVや新聞、マスコミによるフェイクニュースであり、メディアスクラムやバッシングとしてとらえた方がいいぐらいだろう。

TVや新聞、マスコミは交通事故に限らず、日々、起きる膨大な事件や事故の中からほんの一握りを選んで伝えているだけ。

膨大な事件や事故の中から彼らがその取捨選択をするのは、とても大変だし、面倒な作業。ところが最近あった何かインパクトのあった事件や事故と同じモノを選べば確実に受け手の耳目を惹くし、間違いもない。

こうして「また高齢者による交通事故が」とか、「また悲惨な児童虐待が」とか、「またまた芸能人が薬物を」…といった、自作自演の“後追い報道”がそれこそマスコミや受け手の飽きるまで延々と続くのだ。

こんなTVや新聞、マスコミによる愚劣な報道にただただ踊らされ、現実やデータすらも見ようともせず、「高齢者の運転は危険だ」、「高齢者に運転させてはいけない」と多くの国民が言い出し、それどころか、国や自治体までもがその対策を真面目に考え始めるなど、正に今のこの国の状態は「狂気」と言うしかないのだが…。

 

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