旭日旗

「旭日旗」はなぜ許されないのか

 韓国が求めている東京五輪での「旭日旗」の持ち込み禁止を日本側が拒否する方針が明らかになったことが波紋を呼んでいる。
勿論、この決定は最近の韓国と日本政府との対立と無関係ではないのだろうが、『旭日旗は日本国内で広く使用されており、旗の掲示そのものが政治的宣伝とはならないと考えており、持ち込み禁止品とすることは想定していない』という東京五輪組織委員会の認識は大きな間違いというしかない。

   韓国国会の文化体育観光委員会が「旭日旗」の持ち込みを反対している以上、「旭日旗」が政治的な意味合いを持っているのは明らか。それに耳を貸さずに逆に「旭日旗」を持ち込むという行為をすれば、それ自体が政治的な意味合いを持ってしまうのも当然。
つまり、それは政治的宣伝やデモンストレーションに該当するし、 『オリンピックの用地、競技会場、その他のエリアにおいては、いかなる種類のデモンストレーションも、政治的、宗教的もしくは人種的な宣伝活動も許可されない』という五輪憲章(規則50-2)違反になってしまうのだ。

 また、「旭日旗」の問題を政治的問題と見ているのは韓国だけではない。上のCNNの記事でも判るように米国メディアもこれを日韓の政治問題としてとらえているし、だからこそIOCのスポークスマンから『五輪会場で政治的なデモンストレーションを行わないようにする必要がある』という回答を引き出しているのだ。

 それを『日本国内で広く使用されている』という国内的理由だけで政治的ではないと強弁することは組織委員会や日本政府こそが間違っていると言わざるを得ない。

 それにそもそも『日本国内で広く使用されている』という認識からして間違いではないだろうか。誰でも知っている通り、「旭日旗」は国旗ではないし、自衛隊の軍旗に過ぎない。それこそ自衛隊以外で広く使用されているとしたら、右翼団体や靖国神社に参拝する旧軍人コスプレイヤーによってでだし、朝日新聞の社章など朝日をイメージした意匠と「旭日旗」、正確には光の筋が16本の「十六条旭日旗」とは全く別のものだろう。

 また、「旭日旗」は国旗である日の丸、「日章旗」をアレンジしたもののなのだから日の丸がOKならば「旭日旗」もOKの筈、といった理屈もあるようだが、これも両者の違い、歴史的経緯を無視した暴論に過ぎない。

 日の丸、「日章旗」にも前の戦争での日本による侵略や残虐行為の象徴として嫌悪感を抱く人々は今も沢山いるが、それでもまだ容認されている面があるのは日の丸が日本という国の旗ではあっても、前の戦争と侵略を起こした大日本帝国の旗ではなかったから。

 日の丸がいつから使われていたのかには諸説があるようだが、幕末、日米和親条約が締結された1854年(嘉永7年)には日本国共通の船舶旗(日本惣船印)、謂わば日本の国旗として正式に決定されている。
つまり、日の丸、「日章旗」には大日本帝国の前から使われていた日本の国旗という事実があるのだ。

 それに対して「旭日旗」は全く違う。
「旭日旗」は1870年(明治3年)の「明治3年太政官布告第355号」で「陸軍御国旗(陸軍御國旗)」として採用されたもので、兵部省(陸軍省の前身)が朝日の意匠と皇室の紋章である16葉の菊花紋章(十六葉八重表菊)と同じ16本の光の筋を組み合わせて新しく作ったもの。
それもそもそもは幕府軍が「日章旗」を軍旗として採用していたので、それに対抗する意味で作ったというのだから日の丸、「日章旗」とは相反する代物。日本という国ではなく、明治維新政府が作った「大日本帝国」の軍旗であり、天皇の威光を遍く広げる意匠の旗だと言っていいだろう。

  その「旭日旗(十六条旭日旗)」が1879年(明治12年)には陸軍が、1889年(明治22年)には海軍が軍旗として正式に採用。
大日本帝国が日清、日露、第一次世界対戦、そして日中戦争、太平洋戦争とアジアへの侵略と戦争を続けていく中で、「旭日旗」は正にその象徴として使われ続けていったのだ。

   そういう意味では、よく言われるが、ナチスが作り、1935年にドイツ第三帝国の国旗となったハーケンクロイツと意味合いは全く同じ ( 因みに、今のドイツもハーケンクロイツを禁止してナチスの前のワイマール共和国時代の国旗に戻している訳で、日本の日章旗も旭日旗とは違って、大日本帝国の前の国旗に戻したという言い訳も不可能ではないのかもだが)。

 いずれにしても、その大日本帝国が2発の原爆や、310万人もの国民の命を失うことで無条件降伏を受け入れ、1945年8月15日に崩壊。1946年11月3日には日本国憲法が公布され、日本国という新しい国家に生まれ変わった以上、その時点で「旭日旗」も滅んだ筈なのだ。

  それが、米国の要請とはいえ、再軍備の中で、1954年に発足した陸上自衛隊では少しだけ意匠を変えた「旭日旗(八条旭日旗)」を「自衛隊旗(連隊旗)」に、同じく発足した海上自衛隊では何と大日本帝国海軍の軍艦旗と全く同じ「旭日旗」を「自衛艦旗」として採用する。これこそ名実ともに大日本帝国の軍隊の復活に過ぎなかったのだ。

  それこそ今の「旭日旗」容認の流れもこれと同じで、安倍が推し進める大日本帝国憲法への改憲など、大日本帝国復活に向けた動きの中でとらえるべきだろうし、間違っても“韓国が反発するのならば、余計に使ってやろう”などという愚かな考えは持ってはならない。

  「旭日旗」は韓国や中国などアジアの人々を苦しめた“悪魔のシンボル”である以上に、明治維新以降、全体主義、国家主義、軍国主義の圧政の中で国民を苦しめ、310万人もの国民の命を奪った大日本帝国という“悪魔の国のシンボル”……私たち日本人自身が唾棄すべきものなのだから。

                                                      

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