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「公務員を増やせ!」は本当に間違いなのか

 既に今年4月の時点での休業者は652万人に上っていて、新型コロナの第2波が来れば、日本の「雇用」が深刻な危機を迎える、というロイターの記事に対して上のようなツイートをしたのだが、インプレッションも「いいね」もいつもに増して少なかったようで、あまり賛同は得られなかったらしい。

 勿論、私のツイートへの反応など些細な事でどうでもいいのだが、それだけではない。

 いま都知事選に出馬している山本太郎の公約なのだが、メディアやネットなどでも賛否を含めて取り上げられるのは、「15兆円の都債を発行して都民に10万円を給付」という話ばかり。「都の職員を3000人増員 ~ロスジェネ・コロナ失業者に職を」という公約はほとんど取り上げられる事がない。

 そもそもこの「公務員を増やす」というのは、今回の都知事選や新型コロナ対策として山本太郎が打ち出したものではなく、そのずっと前から「れいわ新選組」の政策、政権構想として打ち出されているもの。

【公務員を増やします
保育、介護、障害者介助、事故原発作業員など公務員化】

「公務員の数を減らせ」という政治家もいますが、
実際は世界から見て日本は公務員の数が少なく、現場は過酷です。
1万人あたりの公務員数をみると日本は、
英国の約3分の1、米国の約2分の1です。
公務員を増やす。安定雇用も経済政策です。

 で、この政策も「消費税廃止」のように賛否を含めて議論になる事すらもなく、ありていに言えば人気がなく、無視されている。勿論、日本の公務員が既に大勢いるというのならば話は別だが、実際は上の一文にもあるように日本の公務員の数は世界的に見れば圧倒的に少ないのだ。

日本の公務員はこんなにも少ない

5193公務員

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 この2番目の表の調査対象の世界58か国の中での平均値は32.6%で、就業者の3人に1人が公務員というのが国際的な標準。そんな中で下から2番目。公務員の比率が1割という日本の現状は、国際的に見ると特異で、先進国の中でも格段に低いのだ。

「公務員を減らせ」がこの国の民意

 では、なぜこんな事が起きるのだろうか?話は単純。「公務員を増やす」ことに多くの国民が反対だからだ。

 かなり古い調査になってしまうが、かって「公務員」について内閣府が調査した世論調査がある。

 この調査では「公務員の人や予算を増やすべきではない」という考えに38.7%が「 全くそのとおりだと思う」と、32.3%が「 ある程度そう思う」と答えていて、合せれば70%を超える人が賛成していて、「民間でも行える仕事については民営化すべき」という考えにも62%もが賛成している。

 「公務員を増やす」よりも「公務員をもっと減らせ」がこの国の民意である以上、そうなるのも必然。

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 上の表は公務員の中でも地方公務員の総数だが右肩下がりで減り続け、最新のデータでは63万人も減っているともいわれる。

公務員正規と非正規

 人数が減っているだけではない。公務員に占める正規職員の割合も減り続けていて、非正規職員の割合は2019年には22.1%にまでなっているというのだ。

 この異常とも言える状態も「公務員をもっと減らせ」という民意に沿ったものであるのは事実だし、そういう民意があるからこそ、「公務員削減・公務員叩き」を一丁目一番地とする政党、「維新」の人気が野党ナンバー1になるようになことも起こり得るのだろう。

「公務員になりたい」けれど「公務員は減らせ」?

 で、もっと異常なのは、実はその「公務員」こそが親が子供につかせたい職業の常にナンバー1であるということ。それも警察官や消防士という「公務員」も合算すれば今年のデータでは32%もの親が子供を「公務員」にしたいと思っているのだ。

親が子供につかせたい職業

 親が望むだけではない。高校生に将来なりたい職業を聞いたアンケートでも、去年、「公務員」は女子の1位、男子の6位(「教師」を合せれば2位)になるという人気職業。

 何よりもスポーツ選手などとは違って「公務員」には特別な才能が必要な訳ではなく、それこそ「公務員」の数を増やせば「公務員」になれる子供も当然、増えていく。それでも「公務員を増やせ」ではなく、「公務員を減らせ」がこの国の7割を超える民意なのだから、もはや倒錯しているというしかない。

 「公務員を増やせ」こそが正しい理由

 “毎日、ノルマに追われて必死に働いているのに公務員はろくに仕事もしていない、自分はいつクビになるかも判らないのに公務員はのうのうとしている、自分の給料はこんなにも安いのに公務員は高い給料を貰っている…”

…こんな公務員に対する妬み嫉み、怨嗟の声がこの国の巷に満ち満ちているのは確かだが、それが「民間も公務員並の待遇にしろ」とか、それこそ「私も公務員にしろ」ではなく、まるで自分が幸福になることよりも他人が不幸になることを望むように「公務員を減らせ」になるのが、他の国とは違うこの国の民意の不思議な点。

 どんな思いであれ「公務員を減らせ」となれば、それこそ我が子の公務員就職の機会を奪うだけではなく、公務員になれなかった人間が民間の労働市場に溢れ出てくることで日本全体の労働者の雇用や賃金のマイナス要因として働くのも自明。

 また、税金を使って公務員を増やしたり、公務員に給料を払うことは、結果的にその税金が消費に回ることによって景気を支える、一種の公共事業のような働きをしていることも忘れてはならない。

 特にダムやリニア建設などの所謂、公共事業は環境破壊といった負の要因があるだけではなく、投じた税金の多くがゼネコンなどを通じて中抜きされ、海外も含めた株主などへと流れてしまう弊害がある。だが、公務員に投じられた人件費としての税金はそのまま内需振興に繋がるのだから、その効果も大きいのだ。

 新型コロナで多くの人が職を失う瀬戸際にある現状を何とかするだげではなく、非正規雇用や労働分配率の低下などでこの30年も賃金が下がり続け、デフレから抜けられないこの国を救う為にも財政出動は必要不可欠だし、「公務員を増やす」ことはその財政出動の中でも直接、国民の暮らしに結びつく施策。

 勿論、「公務員を増やす」ことは私たちへの行政サービスが増えることにも繋がるし、新型コロナの対策や現金給付などでも公務員がもっと多ければもっと迅速な対応ができたのは間違いないのだ。

 「公務員」の数を今の3倍に増やしても、国民の3人に1人は公務員という、国際的な標準に戻すだけ。何一つおかしなことではないし、それこそがこの国を救う道だろう。

            

                                            ※Photo image by ITメディアbusiness




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