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『ボーはおそれている』公開日に行ってみた。【映画感想】

個人的評価★★★☆☆


あらすじ

ボー(おじいさん)の住む街は危険であふれており、全身タトゥーの男が走って追いかけてきたり、隣人が斧をもって家に押しかけてきたりするアパートに暮らしながら、常に怯えながら生きている。
ある日セラピストに聞かれる。「ママが死ねばいいと思う?」
まさか。ママに対してそんな感情など持ったことはないし、明日だってわざわざ飛行機で会いに行くんだ。セラピストは「罪(Guilty)」とメモに書く。
ボーと母親に何があったのか。ボーにとってすべて都合が良いようですべて悪い。気が狂いそうになるほどの贖罪とその両面性を描くホラースリラー。 (A24 監督:アリアスター)



感想  (以下、ネタバレあり)

予告の張りぼてのシーンにミッドサマーのような「明るさと対比したホラー」を感じて、これは見ないといけないと思い視聴。
前半は完璧だった。ボーにとっての恐怖が町中に敷き詰められていて、ボーにとっての恐怖が迫ってくる状態というのは本当に見応えがあった。序盤で現実ではなくボーにとっての強迫的な症状によるものと想像がついたが、分かっていてもひとつひとつのカットに自分にとっての恐怖を重ねてしまった。
しかし、ボーと母の過去を明かす後半になってくると、全容が掴めない謎が多くなってきたことで、散らかってしまった印象。アリアスター監督はシンボル・モチーフを大事にする印象があるが、母子の白い像やペニスの怪物、エレイン(船での女の子)やトニ(医者の娘)など、特に出さなくても良かったけど登場させてみた、伏線にしてみた感が否めない。
前半のボーにとって都合が良いようですべて都合が悪い物語に、もしかして現実じゃなくてボーの想像なのでは?と勘ぐらせている時間が映画のピークだった。

ただ、演出はさすがだった。
ボーが罪悪感に苛まれながらあらゆるものから逃げている時の緊迫感も良かったし、人物の不可解すぎる行動なんかはアリアスター味(み)を強く感じた。
私がはじめに興味を引いた張りぼてのシーンなんかは、あえて演劇チックにすることで、より現実から遠のきたいボーの心理が表現されていたし、演劇の演者(息子役)と観客のボーが会話し始め、カタルシスを得るかどうかというシーンで、劇のセリフとボーの発言が重なったところは非常に良かった。あの場面でボーはカタルシスを得たかと思ったのだが…
んー、やはり罪の意識からその浄化という流れが必要だったのでは?演出がよかっただけに、救いのない上にとっちらかってしまったことが残念でならない。シャンデリアで顔のつぶれた母親が最後普通の顔で現れたのも興ざめ。父親も最後までなぜ屋根裏にいたのか分からなかった。

「物語は語り手によって変わる」
この一言はラストシーンで表現されていた。ボーにとって見えていた世界は、母親にとっては真逆に映っていたことが判明した時は何が真実かを見失ってしまった。

要考察

・ボーは幼少期に母に何をした?
→何が真実かを除き、物語を通してこれはボーの贖罪の物語。ボーの異常なほどの強迫観念と、壁の「イエスはあなたの忌まわしい行動をすべて見ている」の言葉、医者の妻からかけられた「自分を責めないで」という言葉から、ボーは母親に対して過去に過ちを犯している。ただ、作中で明かされるボーの犯した過ちというと、母親を時々欺き愛情を一心に受けなかったこと、エレインとキスをしたことぐらいしかないではないか。これではボーがあれほど罪悪感に苦しめられた理由にはなるまい。シャンデリアで顔をつぶされた母親、何かしらの方法でボーがやったのだろうか。

・母が屋根裏に隠していた真実とは?
→屋根裏にはペニスの怪物と物乞いをする父親らしき人物しかいなかった。初夜の日に父親は死んだのではなかったのか。生きてるかも?という描写はあったが、あれでは回答にならない。名前は忘れたが、ずっと追ってきていた人物が屋根裏の窓を突き破って入ってきて、その怪物の睾丸を刺しまくったあげく返り討ちにされて脳天を刺されて死ぬが、これこそ意味が分からない。自分を追っていた人物が睾丸を刺すという行為は、罪の対象がそれであったということを表すのなら、セックスをしたことが罪ということ?
もう一人いた兄弟についても意味がありそうだが、考えても答えが出ない。

・トニが登場した意味
→トニは重要人物のように描かれるが、どうも意図がつかめない。車に乗せられ虐げられていたり、ペンキを飲んで死んだ後にその母に殺されそうになるシーンを見ると、ボーが強姦でもしたのか?一体過去の罪と何が関係しているのか。

・エレインが母(モナ・ワッカートン)の会社の社員だったのを見てなぜ吐いた?
→これに関しては完全に自分の理解力不足か見逃しなのだろうが、これが発覚したシーンでボーが吐いた理由も、最後に母に問い詰めた理由も分からない…。


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