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【読書レビュー】間宮改衣「ここはすべての夜明けまえ」

こんばんは。PisMaです。

本日は間宮改衣さんの「ここはすべての夜明けまえ」を読了しました。だいたい120ページくらいの短めの作品だったので単発レビューです。

「ここはすべての夜明けまえ」はSF小説。近い将来の制度や法律を空想したもので、時代はちょうど今から100年とか200年後くらい。

まず、文面のほとんどがひらがなです。
若干の読みにくさがありますが、これには理由があるようです。
読者が追うことになるこの小説の文字列は主人公が手で書いた文章やしゃべった内容。
主人公は漢字を書くのが億劫で、すべてひらがなで書いてしまおうと最初に明言しています。
また主人公は話すのがすごく好きで、話す時はいつも思ったことを全部言葉にしてしまう質の様子。

文面の句読点が少ないので、頭の中で音読していくとまさしく主人公の行う「ばーっと話す」感じに聞こえるのが面白いです。こういう読ませ方をする小説には初めて出会いました。

主人公は身体が弱く、生きているのが億劫でずっと死にたいと考えている人物。
そこで自殺措置…言葉通り希望したひとが苦しまず死ぬ措置を受けようとしたものの、「人の体に縛られるのが嫌なら、融合手術を受けてみないか」と医師からの提案。
ざっくり言うと、脳だけ生身の人造人間になる感じ。気は進まなかったものの、父の後押しもあり主人公は融合手術を受けるのでした。

身体は一生25歳のまま、文字通り人間をやめた主人公は長い時間を生きることが出来るようになります。そして自身の兄や姉などのきょうだい、父、そして恋人であり甥。さまざまな人の死を看取っていきます。
ひとりは飛び降り。ひとりは突然死。もうひとりは自殺措置を利用。
こう書くとすごく悲惨に見えますが、主人公はどこまでも…なんというか死に興味が無さそうというか、ビックリはしているけどそれで悲しいとか嫌だとかそう言った感情は全く描かれません。
人造人間になると思考まで機械的になるみたいな陰謀論があると小説中で出てきたりはしますが、この主人公はもともとそういう性格なのかなと思います。

最も印象的だったのは主人公の人柄。
掴みどころがなく、可愛いらしく不思議。一度人として死に、死んだまま死ぬことが出来なくなった人。
周りの人がどんな人生を送っても興味が無さそうなのに、無意識ながらも甥の人生をめちゃくちゃにしたことを凄まじく悔いている。
甥とは自分の姉の子供で、子供の頃から世話を続けていた存在です。大きくなった甥から告白され、主人公と付き合うことに。なので、甥であり恋人なのです。母にあたる姉は度重なるストレスとこの恋人になる話をきいて飛び降り自殺をしています。

甥の事を好いていた女性…セフレにあたる女性が主人公の家に尋ねてくるのですが、その女性がとてもきれいで美しく見えていたり、逆にセフレがいたことが発覚し、大泣きして許しを乞う甥に対して嫌悪を示したり。

そんな感性の主人公は最後、旅に出ます。
大気汚染や人口減少の影響でダメになった地球で、最後どこへ向かうのか。主人公が納得のいく旅であれば良いと思います。

結構長くなってしまいました。Orangestar様の楽曲の話題が出てきたりと新しい香りがいっぱいして面白い作品です。気になる方はぜひ読んでみてくださいね。

お相手は黄緑の魔女PisMaでした。
今日の日をいつか思い出すでしょう。

おやすみなさい。

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