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【読書レビュー⑤終】米澤穂信「可燃物」

こんばんは。PisMaです。
本日は「可燃物」最後のレビューになります。
お付き合いいただけたら幸いです。

最後の章は「本物か」。
ファミリーレストランでの立てこもり事件の話で、題名通り本物を問う事件でした。

立てこもり犯だと思われていた人物が、実はファミリーレストランに居合わせた子連れの父親。一緒に連れてきていた子供を人質にとられていたり。
人質に取られていると思われていたファミレスの店長が実は主犯。既に店内で一人殺しており、子連れの父親に罪を被せるような動きをしていた。

葛警部、よくもまあ外部の情報だけでそんなひっくり返った状況を看破したなと脱帽。なんでイカスミパスタの調理時間から人質と被疑者が逆転してるとこまで割り出せるんでしょう。
本当に凄まじい切れ者で、見ていて気持ちがいいですね。
ファミレスの客に事情聴取をする時でさえ、憤慨している老人の愚痴にも顔色ひとつ変えず情報を取っていて老人の方が呆気に取られているというか、物足りなさそうだったのが印象的でした。
感情に全くと言っていいほど振り回されず、無愛想でありながら論理的で頭は柔らかい。
危機的状況に強いとはどういう風に育まれていくのか未だによく分かりませんが、こういう人材でないと警察にはなれないだろうなあと改めて思います。

今回の事件は子供のアレルギーがことの発端になっているのですが、前レビューにて「葛警部が食物アレルギーとかの話が出て来たらすごい」みたいなことを書いたのですが、つかず離れずの話題が選出されていて面白かったです。
ミステリーにありがちな、アレルギーが原因のアナフィラキシーショックが死因の殺人事件ではなく、アレルギーで食べられない食品が提供されトラブルになったという事件の発端として扱われていました。

子連れのお父さん。アレルギーで食べられないナッツのかかったパフェ。静かに泣く子供。怒鳴る訳ではないものの怒って責任者を探す父。

断片的な情報からでも、葛警部の違和感に引っかかる要素として描写されていたのがすごい。

葛警部の推理がもう見れないと思うとなんだか少し残念です。ご結婚されてるのかとか、家庭があるのかとかそんなプライベートすら気になる。

声と映像がついた状態でもう一度拝見したいような、鮮やかな推理が光る作品でした。

米澤穂信シリーズはもっと色んな話を読みたいのでまた別の作品を読めたら書こうと思います。

お相手は黄緑の魔女PisMaでした。
レビューにお付き合いありがとうございました。

ご機嫌よう。

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