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【読書レビュー⑨】尾八原ジュージ「巣」

こんばんは、PisMaです。
本日も前回の続きから始めていきますよ。
前作はこちらからどうぞどうぞ。

美苗の父があの部屋に人形を投げ込んでから数日。換気しに部屋を開けた綾子に笑われたものの、人形の効果はてきめんで、あの部屋は静かになっていました。
母も離婚をいったん考え直そうとしたり、桃花の体調も少しずつ良くなってきます。こんな日々が続けばいいのに、と思った美苗。静かになって半月ほど経ったある日。

音は前触れもなく再開されます。

一階を走り回る足音。前の廊下を走る足音。
その音は一晩中続き、美苗と桃花は熟睡などとで出来ないまま朝を迎えます。起床してきた両親はとても体調が悪そうで昨日の足音がかなり堪えているようでした。
朝テレビを見ていた祖母は桃花を見るなり

「ゆうべいっぱい走ったねえ、しいちゃん」

と声をかけます。妙に胸がざわつくような感覚に苛まれる美苗。
家に居たくなくて、美苗が桃花と公園で遊んでいると、美苗にとって絶対に聞きたくなかった言葉が飛び出します。

「おとうさん!おとうさんだ!おかあさん、おとうさんがいるよ!」

と大声をあげる桃花。
急いでその場から離れるため、桃花は前の旦那に懐いていたのでしきりに会いたがります。ついに美苗は桃花を強く、厳しく叱りつけてしまうのでした。

ゆっくり寝ることも出来ず、娘を害しかねない旦那との遭遇。美苗はかなり限界です。

家に帰ってからもなんとなく意地を張っているのか、気まずくて桃花は美苗に一日話しかけられないようでした。しかし夜は美苗と一緒に寝るようで、桃花は布団の中で

「おかあさん」
「どっかいかないで」

と美苗の手を握る感覚に、桃花が失った大きな存在を実感します。本来は側にいる父親という存在。それが居ないことがどれだけ寂しいか。

「どこにもいかない。お母さんは桃花とずーっと一緒にいるから」

こうして桃花と約束し、眠りにつきました。

約束したのに。


朝起きると、桃花の姿はありませんでした。

嫌な予感がした美苗がバタバタとあの部屋へ行くと、ぽっかりと口を開けたあの部屋の真ん中に見慣れた小さな背中が見えます。

騒ぎを聞きつけやってきた綾子に
美苗は震えた声で訴えます。

「どうしよう。桃花が起きない。全然起きないの。どうしよう、どうしよう!」


本日はここまで。

ついに桃花が倒れてしまいます。
もう一度読み直すと、親子が仲直りして「ずっと一緒」と約束をしたあとに桃花が倒れてしまっているんですね。なんて無常な。
怪異が桃花の寂しい気持ちにつけ込んだのかな、と疑ってしまうようなタイミングでぞわぞわします。

果たして桃花は無事なのか。
約束を果たすことは出来るのでしょうか。

お相手は黄緑の魔女PisMaでした。
いっしょにいこう。

おやすみなさい。

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