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【読書レビュー⑥終】「ずっとお城で暮らしてる」

こんばんは。PisMaです。
本日は、最後の「ずっとお城で暮らしてる」のレビューを書いていきます。お付き合いいただければ幸いです。



火事で、屋敷が半分焼けてしまったブラックウッド家。

燃える屋敷に集る町の人たちから離れ、メアリはコンスタンスを連れて自身の森の隠れ家へと隠れます。悪意を持つ人からも、心配する人からも隠れてしまいます。

メアリの隠れ家に来た時から、コンスタンスは「普通」の日常に戻ろうとした未来を捨ててしまったかのようでした。

そして今回の火事で、伯父のジュリアンが亡くなります。医者は「ずっと死を待つだけだった」と話しており、いつ死んでもおかしくない状態だったのだというのが分かります。

数日経つと、ブラックウッド姉妹は焼け焦げた屋敷に立ち戻ります。
そして、なんといつも通り「生活」を始めます。使えそうな食器を探し、地下の保存食を確認し朝ごはんを作りはじめる。
全焼とはいかなかったとしても、消火のせいで水浸しで廃墟のような屋敷に住み続けられるものでしょうか。

外部を全て拒絶するかのような態度を取り続けていた二人です。

「屋敷を修理する」
「屋敷を捨てて新しく綺麗な家を建てる」
「他の人の家に間借りする」

などの、家をもとに戻すような普通の考えは無かったのだと思います。どちらも実現するにはよその人の力が必要ですからね。

姉妹の服は全て焼けてしまったので、残ったジュリアン伯父さんの服や、使っていないテーブルクロスを服の代わりにして生活していきます。不自由もありますが、二人は楽しそうでした。


ある日、町からヘレン・クラーク、母親の友人が心配した様子で屋敷にやってきて、「一度顔が見たい」「無事なのかだけでも教えて欲しい」と尋ねます。

屋敷が燃えたときにヘレンも一緒に非難していたように見えたのか。一緒にお茶をする仲だったヘレンとも、コンスタンスは会うことを拒絶します。
町の人々からもおそらく二人を心配してさまざまな差し入れが届きますが、人の温かさや食材を分けてくれることに感謝する素振りを、二人は見せません。
もしかしたら暗喩での描写はあったのかもしれないのですが、少なくともあまり私には見えませんでした。

家を燃やしてしまったチャールズも、許してもらおうと家に訪れますがこちらも完全に拒絶。


何度も「もう二度とこないぞ、後悔しないのか」とコンスタンスに呼びかけます。ついぞコンスタンスは顔を見せることなく、チャールズが車で去っていくのを見届けるとコンスタンスはメアリと大笑いする始末。

去り際に笑い声が響いてくる廃墟の屋敷は、さぞや恐ろしかったでしょう。


姉妹はお城で暮らします。
近所の子供たちは「ここの階段に行くと二人に捕まってしまう」と怯えながら、二人は生活の中でこう言い合います。


「あたしたち、とっても幸せね」

こうして、この話は幕を閉じます。
最初から最後まで奔放で人間嫌いなメアリと、常識や罪悪感から逃げられずにいたメアリと過ごすことを選び、人を拒絶したコンスタンス。
人の施しや、隣人の事を理解しないブラックウッド姉妹。二人の世界は屋敷の中で完結していて、周りの人間が入り込む隙はいらないのだと思います。
最終的には全てメアリの思うままになっているようでなんとも面白く味わい深かったです。

どこまでも閉塞的で、歪で、幸せな話でした。

正直なところアメリカ文学の翻訳文を読み切れるか不安でしたが、なんとか最後のページまでたどり着くことができて良かったです。

ただ、まだ言い回しや異文化を文章化されただけでは分からない部分があり、ざざっとあらすじを追っただけの感覚があるのでまだ完全に理解するには難しいですね。
またタイミングがあれば、興味の湧いた海外の小説を読んでいこうと思います。

長くなりましたが、本日はここまで。
「ずっとお城で暮らしてる」のレビューにお付き合い頂き、ありがとうございました。

お相手は黄緑の魔女PisMaでした。
小さく変わらない日常に祝福を。

ご機嫌よう。



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