中学生に歴史を好きになってもらいたい

中学生にとっての歴史は「謎」科目のようです。地理はそこそこ知識があるので「わかるのでまし」。しかし、歴史は「意味不明」とよく聞きます。「縄文時代はましだった。覚えることが少なかったから。その後はわからない」という言葉から、歴史は暗記科目で知識を繋げるものという感覚が弱いと感じています。また、イメージがつきにくいのかなと。確かにイメージがつかないとつまらなくなりますね。

では、知識がない生徒にどうやって歴史を教えればいいのか。答えは至って単純です。知識がない箇所を埋めながら進めれば良いだけです。

例えば、明治時代ですが、薩摩藩、長州藩、土佐藩、肥前藩など現在とは違う呼び名があります。鹿児島県、山口県、高知県、佐賀県と現在使われている名前に変換して、日本地図で場所を示します。その他の都道府県については無視します。その都度、出てきたら示せばいいのです。

樺太・千島交換条約で樺太、千島列島の場所を示します。朝鮮半島、遼東半島、山東半島、江華島、台湾、澎湖諸島など地図を書いて示してあげれば、場所の理解はできます。ノルマントン号事件は和歌山県沖なども同じです。

ただ指導者側が意識しなければならないことは毎回地図を描くことです。1回提示しただけでこれらの場所を覚えることは無理と初めから考えて何度も描きます。復習と言いながら何回もやります。その際に土佐藩は板垣退助、薩摩藩は西郷隆盛・大久保利通などもついでに確認をします。そして必ず板書した図や関連復習の図を描く宿題を出します。見ながら描くことを1回、何も見ないで描くことを1回出します。授業は単元を進めなければなりませんので大量の時間を復習にまわせませんが、地図の板書は時間がかかりませんので問題ありません。むしろ復習内容を固めなければ明治時代の理解は難しくなりますので、学習効果的にはただ単にささっと進めるのではなく、復習地図時間を入れる価値はあります。

毎回地図を授業中に差し込めば宿題で毎回地図を描くことになります。江華島や澎湖諸島はなかなか難しい部類に入ると思いますが、毎回地図を書いていれば中学生も意識的に何が難しいのかわからないレベルになります。ただの慣れです。

江華島や澎湖諸島は大学入試レベルですので、位置を理解しても中学生には役に立たないと思われますが、確かに試験では役に立ちませんが、気持ちの変化を促すという役の立ち方をします。

どういうことかと言いますと、まず江華島や澎湖諸島の位置を聞いてくることはないと示します。その後、大学入試で上智大学では江華島の位置を答えさせる、慶應大学では樺太・千島交換条約の領土の境界線、ポーツマス条約後の領土の境界線を判断する問題はあったよと情報提供をして、「現段階だと大学入試で点が取れるじゃん」と伝えます。

慶應大学などは中学生でもすごい大学と知っていますので、高揚感や自信を感じさせることができます。この技を使うと面白いことに歴史に興味を持ち始めます。上智大学、慶應大学など高校をすっ飛ばして、その上の大学入試の問題を解けたことがきっかけとなり自分でも出来るんだと感じる、つまり「出来るから面白い」という中学生の基盤であるスローガンに食い込むのです。また中学生にしてみたら高校受験ではなく、大学受験の知識を手に入れたという非日常的、他の生徒は持っていない知識を手に入れたという特別感が良い傾向に働いているのだと思います。

「1個だけ覚えても、全体が分からないと」と自分のことを卑下している生徒には「まずはバカの1つ覚えを200個覚えましょう」と伝えています。


用語のレベルを明確にすることも大事です。

例えば、日清戦争と甲午農民戦争を比べますと甲午農民戦争のほうがレベルが高い用語となります。この甲午農民戦争が解けたのならしっかりと暗記をしている証明になりますので「勉強をしているね」とこちらが頑張りを認めたとわかる言葉を使います。また先ほどの話に関連(大学入試レベル)しますが、岩倉使節団のメンバーはという問題で、岩倉具視、大久保利通、木戸孝允、伊藤博文、山口尚芳と答えることができた生徒がいましたら、明らかに山口尚芳はレベルの高い人物となりまので、「山口尚芳は暗記しなくてもいいよって言ったのに、やるじゃん」と指示以外の努力を褒めます。また山口尚芳を答えさせた問題は中央大学で出ていたから、「現段階で中央大学の問題が解けるよ」と伝えます。

個々で中江兆民、津田梅子は扱うのですが、岩倉使節団に同行したとしっかりと繋げて教えます。知識の繋がりでは、中江兆民、東洋のルソー、『社会契約論』とあります。試験では関係のない情報も大事です。例えば、ルソーは、「結んで、開いてぇー」を作曲した、脱ぎたがりで変態、子供を捨てたのに『エミール』という教育書を書いた、などです。『社会契約論』は岩波文庫で出てるから今も読めるよと勉強とは全く関係のない話はインパクトを与えるのに効果的ですので多用します。


塾では「古今伝授」が非常に重要になります。師匠が弟子に『古今和歌集』の解釈を伝えるものです。講師が生徒に歴史の解釈を伝える、そして生徒がその話を理解する。学校で友達に話を伝える。その友達が理解できたのなら私の「古今伝授」は成功です。生徒自身の得点アップが仕事ですが、生徒間同士で知識を高め合えるきっかけの「解釈」を伝えることも重要な仕事だと思っています。



バナナを購入したいと思います。メロンも食べてみたいです。