ものづくりの原点が突然なくなってしまう。
物心ついた頃から、手芸というものづくりが好きだった。
ありとあらゆる手芸をこなす祖母の影響を存分に受けて育ち、幼稚園の頃には針を持ち、祖母から貰ったハギレでリカちゃんや双子のミキマキのお布団を手縫いで作り、小学校の頃には洋服を作っていた。
歩いていける場所に手芸店があり、祖母にくっついて買い物に行くと小さなハギレやフェルトと刺繍糸などを買ってもらい、大高輝美さんのフェルトマスコットやリカちゃんの身の回りのものを嬉々として作った。
お小遣いをもらうようになってからは、自転車を漕いで店に行っては買い物をした。
結婚し、出産してからも帰省のたびに足を運び、息子の服やかばん、母の日のプレゼントのパッチワークのための生地を買った。
手芸仲間との縁ができたのもこの店が縁だった。自分の作品を誰かに楽しんでもらえる喜びにも恵まれた。
思えば、40年以上の年月をこの店と一緒に過ごしてきた。
生地カットのおばちゃんの技術は東京の大きな手芸店よりも格段に上だと思っていた。
ここ数年で、そのおばちゃんはいなくなり、手芸品の売り場が小さくなってきたことに心がチクッとしていた。
先日、その店が手芸品から撤退することを知った。小さくても、品揃えが減っても、これからもずっとそこにあると思っていた私にとって、物凄い喪失感だった。
居てもたってもいられず、休暇を工面して帰省した。
近年、リンネルや天然生活要素がどんどん広がった店の一角の手芸コーナー。
そこには赤札がたくさん貼られ、なんだか子どもの頃の店の雰囲気で懐かしさもあった。
小銭を握りしめて買い物をしてからもう40年。
PayPayにガッツリとチャージして、あの頃からは想像つかないくらいの「大人買い」をして、思い出の時間と同じくらい長いレシートを手にして、私のものづくりの原点にサヨナラをした。
ありがとう。正直屋。
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