見出し画像

誤算

「誤算」

このご時世に御予約が必ず満員になるというのはとてもありがたい話で、雨ニモマケズ、風ニモマケズ、親戚の法事でもございませんのに、みなさま粛々と足を運んでくださる。

暑さの夏にはオロオロ歩き、寒さの冬にはズシズシと。誠にありがたいことです。

「先生、今日はひどい暑さだねぇ」なんて言われて、「いやぁ本当にそうですねぇ、もうちょっと涼しくなってくれないと」なんて共感の仕草をしておりますが、治療院が暑かったり寒かったりしたら大変なので私は常に快適気温の中におります。しかし、共感も治療の一部ですから、一生懸命話を合わせております。

 ただ中には「先生はそんなことないでしょ!1日涼しいとこにいるでしょ!」なんて私の心づくしの「共感のおもてなし」を跳ね除ける方もいらっしゃるんですから、ほんと人の心は難しいものです。しかし、これは心のじゃれあいというもので、私とイチャイチャしたいんだなとしばらくして気付きました。最近ではベテランな私はムツゴロウさんのようにじゃれあいます。
「暑くてシンドイなんて生きてる証拠だなバアさん!もとから干からびちゃってんだからタップリ水飲まないと干物になっちまうよ!」なんてたまには毒蝮節も利かせながら。

とまぁそれはさておき。

来週もご予約はいっぱいで、再来週もいっぱいでという状況です。この10年はほとんどそんな感じでやっておりますが、やはり寄る歳並みには勝てないので近年は少しずつ仕事を減らしてきたんですね。

5年前に「休憩時間」を設けました。

そうです。それまでは無かったんです休憩が。朝の9時から夜10時くらいまでフルで患者さんを入れていました。全然平気でした。
むしろ残業も歓迎で「もっと、もっと患者をくれぇぇ」と何かの中毒患者みたいにおねだりをしてました。
「ぎっくりで歩けねぇとか脊柱管狭窄症で手術だと言われたとか、もっと強めのキクやつ頼むぜ」みたいな。
そんなハードワークのさなかに飲みにいったりバンドのリハをしたりしてたわけですから、若き日のムツゴロウさんみたいに本当に「何か」やってたんじゃないかと思います(いえ、やってません)

しかし、40も半ばにして集中力が続かなくなってきました。どうやら私もやっと大人の階段を登ったようです。そこで1時間だけ休憩時間を設けました。
しかし、1時間なんてね、休憩前の患者さん15分押しとか休憩後の患者さん15分前来院とかザラにありますわな。そうなると30分程度の休憩になりますが、片付けとかしてたらあっという間に時間が過ぎるので意味がない。ということで2年前から2時間休憩にしました。
これで1時間程度は本読んだり昼寝したりの時間が確保できました。

この隙間時間を使って4ヶ月ほどで書いたのが一昨年上梓した本だったわけです。(「身体構造力〜日本人のからだと思考の関係論」幻冬舎3刷!)それって休んでんのかという話は置いといて。

さらには週に日曜日だけのお休みを日月の週休二日にしました。月曜日は午前にカルチャースクールの気功教室があるので、完全なおやすみではありませんが、とても身体が楽になりました。

それで、「ポポンSってなに?」でございますとか、「鱈という魚は何故内臓が美味いんだろう」とか、「吉野家以外の牛丼は何故甘いのか?」などといったどうでも良いことを考える余裕もできました。
無駄なことが考えられる時間というのは人生に必須です。

さらに木曜日は午前休診、金曜日も午後は一人ずつ患者さんをとるようにしてと改革は進んでいったわけです。

さて次はどうしようかと考えた結果、午前休診の木曜日を午前のみにして午後はお休みにしたらいいんじゃないかと思いついたわけです。
「午前休診を午後休診にした?反対にしてるだけじゃないか。朝三暮四のお猿かおまへは」などと言っちゃうあなたはなんというか青い!何が青いってケツが青い。青の洞窟くらい青い。なんなら藍より青いあおい輝彦ですよ。

若い時はありがたかった午前休みが年齢と共にあまり意味がなくなってきたんです。朝寝ができない身体になってきた。無理に寝ても怠いだけ。起きてもボーッとする時間が増えただけ。そうなると時間に追われる感じになってきたわけです。
「仕事の前に何かやる」ではなくて「仕事を終えてから何かをやる」方が気持ちが楽になってきた。

それでね今週からやってみたんですけどね。木曜日の午前にどんどん予約が入りました。これは当たり前ですね。あっという間に3時まで予約が埋まりました。これであがり!あとは自由時間!
しかし、間違えて夜6時に患者さんを入れてしまったんですね、家族が。
これはまぁ仕方ないですね、変更当初はそういうこともあるもんですよ。仕事3時に終えてね、休んでね、その後一人くらいパパっとやりますよ。自称天才ですから、ええ。

しかし、これがまさかの展開に。そりゃ7時にも入れちゃうよね。どうせ6時にもやるんだし。そして8時にも。。。。

だって「派遣社員でブラックで体がボロボロで。。。。」と泣きつかれたらやるでしょうよ。そういう人のために仕事やってんだもの。

「脳梗塞で辛いんだけど、どんどんよくなってる、体動く!逃してなるものかこのビッグウェーブを!」と希望を見出してる人を断れないでしょうよ。

「ワクチン接種センターで馬車馬のようにこき使われて身も心もガチガチでほんと岩みたいな肩してる薬剤師」とか看護師に「すいませんいっぱいなんで再来週で、ふん!」とか言えるわけない。

またうちの患者さんは治療家に似ずに一途で人柄が良いもんだから、せめて他で揉んで貰えと勧めても、そうしない人がほとんどであるからどうしようもない。

というわけで結局普通に存在していた午前の休みもふっとび朝から晩まで働くことになった。

バカなのかな俺。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?