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王さまの本棚 30冊目

『パンやのくまさん』

フィービとセルビ・ウォージントン作・絵/まさきるりこ訳/福音館書店刊

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この本は、ドラマティックではなく、健康に、誠実に、そして無理なく一日を暮らすことの尊さを描いています。朝は早起きして仕事の準備をする、ごはんを食べ、掃除をし、商いごとをする。夜にはすっかりくたびれて、次の朝までぐっすり眠る。そこに思いがけない事件はありません。多くの絵本や本が特別な出来事を描いていることに対して、このシリーズはとてもシンプルです。なぜなら、生活ってそういうものだからです。

画についていえば、29冊目『サンタ・クロースからの手紙』で話した「トールキンの手書き文字が活字になってしまっていてもったいない」ことについて、この本ではそれが「半分」解決されています。要するに、「日本語の手書き文字に変換されている部分と英語そのままの部分がごっちゃ」ということです。表紙の『くまさんパンや』しかり、本文中の小麦や砂糖の缶(英語)しかり。
わたしは今までこれに関して特に持論を持たなかったのですが、今回考えてみて、別にいいんじゃないかな、と、ゆるーく感じました。わからないことがあれば、親に訊けばよいのです。大人は黙って調べればよいのです。
トールキンと児童文学に対して面倒くさいオタクなので、こういうことはちょっと珍しいように思われますが、安野はもとはといえばこういう性格です。
手書き文字部分、ほんとうに手書きなのでかわいいです。

テディベアが小麦をこねている……とかは、考えてはならないのです。なぜならくまさんはかわいいから。かわいいは強い。

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