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「ヒプノシスRADIO supported by Spotify」によせて - たまにのエッセイ テレビとラジオ no.8

 梅田で連れと合流して、晩ご飯に中華バイキングへ行った。その相手は僕と合流する前に大阪城ホールへヒプノシスマイクのライブへ行っていたと言う。「今日はライブに行って、中華もお腹いっぱい食べれて良いきもち〜」と、マジで幸せそうだった。僕も体内の9割が中華なんじゃないかと思うくらい食べたので、中華の幸福感は分かる。しかし、ヒプノシスマイクの魅力はボンヤリしていて、いまいちその幸福感が分からない。僕もあの日は十二分に幸せだったが「それは良かったねぇ。」といった具合で言葉を返していたと思う。

 あれから数ヶ月たった春。TOKYO FMで放送されている『ヒプノシスRADIO』をradikoとSpotifyで聴いた。過去の全26回の放送すべてを。ヒプノシスマイクは沼だと聞いていたが、気づた頃には足元が完全に沈んでいた。

 この番組はヒプノシスマイクの世界観が分かりやすく示されていて聴きやすい。4週のうち3週は各ディビジョンのキャラクターが週替わりにリスナーのお悩み相談に答えていくのがメインコンテンツだ。各キャラクターの「らしさ」が全開で、バックグラウンドから構築されたアイデンティティで、的確かつ芯のあるアドバイスをリスナーに語りかけるのが面白い。架空のキャラクターが現実を生きるリスナーの決して軽くない問題に向き合う時間もあり、そこには確かな温かみがある。

 また楽曲製作陣へのインタビュー回も4週に1度のペースで放送され聴きごたえがある。ヒプノシスマイクのプロジェクトが始まった当初は、声優とラップの掛け算自体が実験的な試みだったのかもしれない。だが番組のインタビューからは、声優業界とHIPHOPシーンがお互いの美味しさを理解し合い讃えあっている事が分かる。そのトークパート後に楽曲を聴くと、その関係性が楽曲の音からも感じる事ができる。各々の業界イメージなんて吹き飛ばすクリエイティブでボーダレスな考え方・展開・遊び心に感動するのだ。

 そして何より、そのヒプノシスマイクの魅力を伝えてくれた番組ナビゲーターの元MUSICA副編集長・音楽ライターの矢島大地さん。この方の言葉と声がたまらなく良い。コーナーへの受けコメントや解説も分かりやすく矢島さん自身の感性も共存している。毎回番組の最後には同じ内容の告知パートがあるが、読み上げる工程らしさは全く無い。言葉にまっすぐな感情がのっている。それが声色で分かる。もう告知というより、ただ純粋にヒプマイとSpotifyが好きなお兄さんの個人的レコメンドトークのようだ。おそらく矢島さんの事が好きなリスナーは少なくないはず。僕も勿論、すでに矢島さんのファンである。

 番組を聴きこんでいる今、YouTubeやSpotifyでヒプマイの音楽にふれる時間が増えた。そんな今なら少し分かる。あの時に連れがどれだけ幸せだったのか。ライブ後にどれくらいのバイブスで中華と向き合っていたのかが、今なら分かる。

2020.4.1




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